- 2017年10月19日 11:23
北朝鮮は国際的に孤立していない!?北朝鮮と深い関係をもつ国々は何を求めているのか / 宮本悟×白戸圭一×荻上チキ
1/5日本ではその国際的な孤立が取り上げられる北朝鮮。度重なるミサイル発射や核実験を受けて、国連安保理では制裁強化に向けた採決が行われた。一方で、制裁の実態を調査する国連の専門家パネルは、数多くの制裁逃れを指摘してきしている。制裁の背後で北朝鮮と関係を続ける国々とその理由、今後の対策について、専門家の方々に伺った。2017年9月13日放送TBSラジオ荻上チキ・Session22「北朝鮮は国際的に孤立していない!?北朝鮮と深い関係をもつ国々は何を求めているのか」より抄録。(構成/増田穂)
■ 荻上チキ・Session22とは
TBSラジオほか各局で平日22時〜生放送の番組。様々な形でのリスナーの皆さんとコラボレーションしながら、ポジティブな提案につなげる「ポジ出し」の精神を大事に、テーマやニュースに合わせて「探究モード」、「バトルモード」、「わいわいモード」などなど柔軟に形式を変化させながら、番組を作って行きます。あなたもぜひこのセッションに参加してください。番組ホームページはこちら →https://www.tbsradio.jp/ss954/
制裁に真剣なのは10か国
荻上 ゲストをご紹介します。北朝鮮の政治、経済、外交に詳しい聖学院大学教授の宮本悟さんです。よろしくお願いいたします。
宮本 よろしくお願いいたします。
荻上 今回の制裁、中身は一体どういったものになっているのですか。
宮本 当初は石油の全面輸出禁止など、かなり強い内容が入っていましたが、実際にはそうならず、当初の構想とは少々異なるかたちになりました。具体的な内容としては、石油輸出に関しては現状維持。つまりこれ以上増やさない。天然ガスの輸出に関しては、全面禁止です。また、北朝鮮からの輸入については、繊維製品の輸入が全面禁止になりました。
去年から行っている制裁もあわせて考えると、理論的には北朝鮮の輸出、外貨収入の90%をおさえることになったと評価されています。とはいえ、実際に90%おさえているかどうかは別の話になります。
荻上 これまでと比較すると、制裁は強化できたのでしょうか。
宮本 比較としてはそうです。ただ、想定していたほど強くはないと思います。
荻上 制裁が強すぎると暴発を招くのではないかと懸念する声もありますが、こちらについてはいかがでしょうか。
宮本 中国やロシアが強すぎる制裁に懸念を示しているのは確かです。しかし、恐らく中国やロシアが示しているのは一般的に考えられている暴発、つまり軍事的な暴走ではなく、一般の北朝鮮人が経済的に困窮し、難民となって中国やロシアに逃れて来ることでしょう。事実、90年代に北朝鮮経済が崩壊したときには、数多くの難民が中国に押し寄せました。
当時、北朝鮮は市民の経済的な困窮を背景にミサイル開発を進めました。中国からすると、あれだけ経済が崩壊してもミサイル開発を続けた以上、今回も制裁で経済を崩壊させたところで北朝鮮がミサイル開発や核兵器開発をやめることはないだろうと思うわけです。だからこそ、強い制裁には反対しているのだと思います。

宮本氏
荻上 そうした懸念を抑えての今回の制裁強化でしたが、効果が増したとは言いがたいわけですか。
宮本 言いがたいですね。もう一つには、そもそも制裁自体がそこまで強化されなかったことがあります。さらに、国連の専門家パネルの中間報告書発表によると、制裁に参加することになっている国々のうち、半分以上は実質的には制裁を実施していないことがわかってきています。制裁逃れですね。その分、制裁の効果は薄くなることになります。
荻上 全会一致で制裁が決まっても、賛同した全ての国が実施しているわけではないと。
宮本 そうなります。皮肉なことに、国連安保理非常任理事国の中には制裁決議に賛成しているにも関わらず、自分で制裁を破っている国がありました。ウガンダですね。世界規模で考えると、北朝鮮に注目して、制裁の必要性を強く意識している国々は限定的です。むしろ北朝鮮に対して危機意識を持っている国は本当にごくわずかなのが実態と言えるでしょう。北朝鮮がICBMを発射した日、私はトルコにいたのですが、その日にニュースでより多く取り上げられていたのはロヒンギャの問題でした。
荻上 実際にどれくらいの国が制裁に参加していないのでしょか。
宮本 正確な数字はわかりません。ただ、国連安保理は国連加盟国に対し、制裁措置の実施について報告するよう求めています。去年末までにその報告書をあげているのが193カ国のうち102カ国です。半分くらいですね。102というのも、やっと去年半分を超えたのであって、それまでは半分以下でした。北朝鮮への制裁は10年ほどになりますが、これまでずっと、半分以下の国々しか報告してこなかったのです。
荻上 報告書ではどのようなことを報告するのですか。
宮本 その報告もひどいもので、国内法で制裁措置を決めましたとか、関係省庁に制裁決議があったと通達しましたとか、その程度の内容です。私も実際の報告書を見たことがありますが、大体A4用紙1枚にもならない簡単なものです。英語で10行くらいというのもありました。
荻上 実効的な中身が伴うものと考えると、この102か国の参加も怪しいわけですね。実質的な効果を意識して制裁を行っている国は、全体の何割くらいなのでしょうか。
宮本 一生懸命やっているのは、10カ国くらいだと思います。その10カ国の中に中国も入っているんです。
荻上 あ、一生懸命のうちに?
宮本 ええ。中国やロシアを入れてそれだと思います。



