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- 2011年11月22日 18:27
極力正確に死因を知りたいとは思わないだろうか
手術で体内にガーゼ残し女性死亡(11月18日 NHK)
ことし5月、福岡市城南区の福岡大学病院で、心臓の手術を受けて2日後に死亡した80代の女性について、病院側は、体の内にガーゼが残ったままだったことが死亡の原因になった可能性が高いとして、女性の家族に謝罪しました。
福岡大学病院によりますと、ことし5月下旬、80代の女性が心臓の大動脈の弁を人工の弁に置き換える手術を受けたあと、容体が急変して、2日後に死亡しました。病院は当初、女性は合併症で死亡したとみていましたが、この手術に関わっていない医師から、ことし8月、死亡の原因に疑問があるとの指摘を受けて、調査委員会を設け検証していました。その結果、女性が死亡する前に撮ったCTスキャナーの画像から、手術で使用した縦15センチ、横30センチのガーゼが腹部の大動脈に残ったままで、これが死亡の原因になった可能性が高いと判断しました。病院では手術の直後に使用したガーゼの枚数を確認し、1枚足りないことに気が付き、ガーゼが残っていないかレントゲンで確認しましたが、当時は見つけられなかったということです。このため病院は、女性の家族に謝罪するとともに、外部の調査委員会で経緯を調べることにしています。内藤正俊院長は「大学病院の信頼を失う結果となり、大変申し訳なく思います。病院として真摯(しんし)に反省し、再発防止に努めます」と話しています。
福大病院で医療ミス 心臓手術中ガーゼ残す 患者死亡 (2011/11/19 西日本新聞)
福岡大学病院(福岡市城南区)は18日、80代女性の心臓手術をした際、誤って左心室にガーゼを置き忘れ、2日後に女性が亡くなったと発表した。死亡の原因はガーゼが腹部の大動脈に移動し、血流を妨げた可能性が大きいとしている。
手術は、石灰化して全身に血液を十分送り出せなくなった大動脈弁を、人工弁に置き換えるもので5月下旬に実施。切り取った弁の破片が左心室の中に落ちるのを防ぐため、30センチ四方のガーゼを半分に切り、折りたたんで置いたという。
ガーゼ1 件はエックス線に写るように、金属糸が縫い込まれていた。胸を閉じる前に余ったガーゼ1 件1枚が足りないことが分かり、胸のエックス線撮影などを行ったが発見できなかった。女性は手術の翌日、両下肢の血流が低下し、再手術をしたが亡くなった。
8月になり、手術を担当した4人の外科医とは別の医師が「死亡1 件に疑問があるため調べたい」と申し出たことをきっかけに病院が調査。再手術前の腹部の画像から、ガーゼが残っていたと判断したという。
遺族に謝罪した心臓血管外科の田代忠部長は「ガーゼの移動は通常考えられないことだった」と話した。
半年前に発生した事故とのことであるが、解剖をしたような雰囲気を感じない内容の記事だ。手術直後の死亡は、早めの段階で、できるだけ正確に死因を調べておかないと、後でもめることが多い。死者が若ければ若いほど(この場合は若いとは言えないが)、また、対応が遅れれば遅れるほど、遺族の不信感は増してしまう面もあるので、注意が必要だ。
司法解剖がいやなら、行政解剖や病理解剖という方法もある。病理解剖が盛んであった昔の時代なら、病理解剖されていたかもしれない。しかし時代が変わってしまって、こういう遺体は宙ぶらりんになる傾向がある。他の国なら、このようなケースは警察などへ届け出られたのち、法医解剖で死因が究明される一方で、医師に対する刑事罰が追及されないことが多い。一方、日本では警察が犯罪を疑った場合にのみ司法解剖する独特な傾向があるため、医師には司法解剖を拒絶する傾向があるうえ、警察が介在することの多い行政解剖さえも避けられる傾向にある。
CTで腹部大動脈にガーゼが発見され、それが死因になった可能性が高いというが、腹腔動脈や上腸間膜動脈、腎動脈等の血行障害に由来する多臓器不全で、ある程度時間をかけて亡くなったのだろうか。あるいは、下肢の筋肉を含めた広範な壊死が発生し、電解質異常などから、心停止をきたしたのだろうか。あるいは、他にまったく別の死因があるのだろうか。カルテをレビューし、当時の検査結果をみればある程度わかる部分もあるだろうが、その裏付けとして、解剖や組織検査の所見があったほうが、死因の解明において、より手助けにはなるだろう。
民事裁判になってしまうと、原告被告双方、根拠のない推測を元に、重箱の隅をつつくようなあらさがしをしあい、永遠に双方の間の溝が埋まらないということが多々ある。そうした根拠のない推測を生まないためにも、可能であれば、極力正確な証拠保全が求められる。そうしたことなしでは、死者、遺族の権利だけでなく、医師の権利を守ることもできないような気がする。



