- 2017年10月17日 17:58
「今回の選挙で各党は日本の課題にどう向かい合っているのか」希望の党編(後編)
2/2年金納付者と未納者の公平性、既存制度と比べた必要財源の規模
ベーシックインカムの制度設計はまだこれから
湯元:ベーシックインカムについて聞きます。本格的に導入している国はなく、フィンランドなどは今年からやり始めたという段階だが、ベーシックインカム制度の導入の基本的狙いは、どうやって就労インセンティブを高めていくか。貧困状態にある人が、最低限の生活を保障されながら働くインセンティブを高めて、貧困から脱出していくというのが基本的な考え方としてあると思う。そうすると、制度設計が非常に重要になってくるのではないか。例えば、一人当たりいくら配るのかということもあるし、対象は全国民なのか、一定レベルの所得以下の方なのか、ということも重要になってくる。
それから、基礎年金、雇用保険、生活保護を、先ほど伺った感じでは全て廃止してベーシックインカムにしていくということだが、例えば雇用保険とは、失業のリスクに対して保険料を払い、将来失業した時に保険金が入ってくるという仕組みだから、それがなくなってしまって大丈夫なのかどうか。基礎年金の問題だと、かけている期間が人によって違うから、もらえる金額が違っているが、それは不平等なので平等にするという考えなのか。本来、自分のリスクに対して自分で保険料を払っている制度だから、保険をかけていない人はもらえないというのは、ある意味で当たり前の話。そこを全てもらえるようにすると、今度は保険料を払う必要性がないというインセンティブが出てくる。非常に大胆な改革を考えていると思うが、様々な問題点、課題が出てくる。
細野:既に、そこの矛盾は出ていると思う。例えば、基礎年金は、今、6万円とか7万円。まじめに払った人はそれだけもらえるが、逆に言うと、それだけしかもらえない。一方で、払わなかった人で生活保護になると、東京などではもう少しもらえ、その矛盾は既に現実のものとなっている。
もう一つ言えることは、それぞれの社会保障の給付をするのに行政コストがものすごくかかっている。生活保護は、申請の際に資産があるかないかチェックしなければならず、ケースワーカーも相当大変です。そこでいろいろな軋轢もあったりする。年金もものすごくコストがかかっている。失業保険も、職業紹介をしながらなので、コストがかかっている。そういう行政コストももう一度見直して単純化した方が、むしろ行政コストも少なくてすむし、失業保険や生活保護をもらう側も精神的につらい。
そういうこともなく一定の収入が入るという意味で、行政と受給者の両方にメリットがある。ただし、ベーシックインカムを出すことによって働かなくてもいいような社会になると、確かにバランスが悪いし、それだけを払うと財政がもたないので、そこは一定の制限を...
湯元:スイスでは国民投票をして、否決されている。もらう金額が30万円という大きな金額なので...
細野:日本の1億人を超えた人口では、そんな金額は財政的にとても無理だと思う。一方で、例えば子どもなどは、今は、義務教育はもちろんだが手当もかなりついているので、全部をベーシックインカムにするかという議論はあっていいと思う。ただ、ある一定の年齢以上になった場合は、行政コストも考えると、平等に出すということにしないとベーシックインカムのメリットがない。制度設計はまだまだこれからだが、トータルな状況からすると、そろそろ議論を始める。制度の切り替えに相当時間がかかる。例えば年金などは、払った人と払っていない人の問題があるので、どう平等な形に持って行くのか、時間もかかる。議論はもう始めておかないとAI時代、働き方が大きく変わる時代に対応出来ないのではないかというのが、我々の問題意識だ。
湯元:基本的考え方としては、かかる財政コストは全て既存の制度の見直しでカバーするので、その範囲の金額にするというイメージ。つまり追加的な財源が必要になるという考えはない、ということか。
細野:そこはいろいろな可能性があると思う。いくらくらいにするのかという制度設計も含めて、相当議論した上で国民合意がないと、ベーシックインカムは難しいと思う。
湯元:少し柔軟に考えれば、ある一定の働ける年齢くらいの人については、求職活動をちゃんとしているか、していないかに分けて配るというのもあると思う。負の所得税とか勤労税額控除など、ベーシックインカムのいろいろな仕組みは見かけ上似ているが条件が違うので、少し条件を変えることによってお金を節約するというのはあると思うが、そういうことは考えていないのか。
細野:やり方としては、今言われたようなかたちはあると思う。ただ、一方でベーシックインカムの議論は、例えば本当に自動化が進み、人力が相当必要なくなった社会では、「いわゆる生業として働くことの価値とはいったい何なのか」という時代がやがて来るかもしれない。ですから、そこは「社会がどうなるか」という哲学的な部分も踏まえて、どういうインセンティブなり、社会のモラルのようなものを維持しながら持続させるか、という議論になってくると思う。
工藤:最後に二つだけ。一つは、今回の結党後の動きですが、民進党からかなりの人たちが入りました。希望の党が入党条件を付けることで、枝野さんの立憲民主党が出来ました。それは、希望の党から見て、ある程度の基準をベースにして立党したので、当然だということなのでしょうか。それとも、もっと柔軟な形で一つの極を作るということを目的にすると、やりすぎだったと思うのか、どちらでしょうか。
細野:そこはなかなか難しい。個人的な人間関係から言えば、枝野さんは私が一番一緒に仕事をしてきた人。例えば原発事故のとき、枝野さんは官房長官で私が首相補佐官、その後私が閣僚になって枝野さんが経産大臣になった。本当に修羅場を一緒にくぐった、仕事がものすごく出来る人だ。長妻さんは同期で、心根のいい人、政権交代の立役者でもある。ですから、そういう人たちと一緒にやりたいという個人的な思いはある。
ただし、立憲民主党を見ていると、安全保障に対する考え方とか、共産党の関係とか...相当ぐっと近づいた。共産党とは一つの極になったことが、明確になった。政界全体を見たときに、自民党がある。もう一つの、政権を担える極を、今、我々は作ろうとしている、出来つつある。どちらになっても、一定のチェック機能を働かせる極がもう一つある。これはもしかしたら一つの形かもしれない。まだその途上にあると思うが、私は、ある程度のところに線を引かざるをえなかった。そうでないと、民進党と同じ党が出来るだけ。
自公政権の長期化による制度のゆがみを正すためにも、もう一つの極を作りたい
工藤:もう一つ、森友・加計問題、これは何が問題ですか。つまり、安倍さんの政治家としての姿勢が問題なのか、それとも、長期化した自・公政権を変えなければいけないという問題なのか、あるいは、首相官邸に権限をかなり集めて、内閣人事局を作って、といろいろな形で動かしていることが、忖度を招きやすいような状況を作ったのか。
細野:内閣人事局は廃止をした方がいいのではないか、という議論も一部あったが、私はそういう議論はしない方がいいだろうと思う。霞が関がそれぞれの役所ごとにタコツボに入ってやっているのはよくないから、人事を一元化するというのは、仕組みとしては悪くない。一番問題なのは、工藤さんがおっしゃった二つ目。長く政権にいることで、対抗する勢力も自民党の中にもないし、野党の中にもないものだから、そこにおごりや慢心が出てきて、制度がゆがんだかたちで運営されるという状況が生じてしまっているということだと思う。だからこそ、自民党・安倍政権に対抗しうる勢力を作らなければならないという思いが非常に強い。我々も与党を目指しているが、国会の議席数が変われば、安倍政権が強いという状況だったとしても、緊張感が全然違う。300議席あったら政府は楽なもの。こんな状況をいつまでも続けていてはいけないと思う。
工藤:今日は細野さんを呼んで議論しました。今回の選挙は政権を選ぶ選挙で、私たちは政治と有権者との緊張関係を取り戻したい。ただ、もう一つ、日本の将来ということです。国民が一番直面している困難、北朝鮮とか少子高齢化といった課題が、日本の将来像の前に横たわっています。希望の党は出来たばかりですが、希望の党がその問題にどのような考え方と見識を持っているかということを、今日は確認させてもらいました。皆さんはどのように受け止めたでしょうか。これをもとに投票していただきたいと思います。今日はどうもお疲れ様でした。
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