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「今回の選挙で各党は日本の課題にどう向かい合っているのか」希望の党編(後編)

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 第一部、第二部に続いて、言論NPOの評価にかかわっていただいている湯元健治氏(日本総研副理事長)、小黒一正氏(法政大学経済学部教授)にも加わっていただき、希望の党の公約を掘り下げてみたいと思います。

第三部:希望の党は経済、社会保障政策をどう考えているのか

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社会保障の主な財源は消費税か、他の税制か
内部留保課税で想定される経済への負の影響は

画像を見る湯元:消費増税凍結の話について、「凍結」というと一時的な措置だと理解出来るが、そうすると、そもそも消費税をどうするのか。これからの社会保障財源はどんどん不足していくわけで、消費税を社会保障財源の基幹税として位置付けていくという考えなのか。凍結の代替財源として、内部留保課税という新しい税を出しているが、社会保障の財源は必ずしも消費税ではなく、こういったものを財源にしていくということなのか、それを伺いたい。

 それから、内部留保課税については賛否両論ある。実際にやった経験のある国もあると思うが、例えば二重課税になるといった税理論上の問題もある。また、増税して企業に痛みを与えることにより賃金増加とか雇用増加、あるいは配当増加、設備投資増加のインセンティブを与えるという政策だと思う。ただ、マイナス金利の場合でも、金融機関に痛みを与えて積極的な貸出を増やすという意図があったと思うが、現実的にはなかなかそうならない。ですから、痛みを与えることによって投資や雇用や配当を出すことになるのかどうか、という政策効果の不透明性があるのではないか、と思う。もう一つは、現実として何に課税するのか。内部留保の残高に何%か課税するというやり方は、実際にキャッシュがあるのは現預金だけのところなので、課税することも難しい。つまり、どれだけの税収があがるかというのは枠組みによっても異なってくる。それから、企業にプラスのインセンティブを与えられるのかも枠組みによって違ってくる。韓国の例だと、直接内部留保に課税することはしておらず、いろいろな工夫をしてやっている。

 加えて、企業の国際競争力を強化していくという方向性は与党も野党も同じだと思うが、社会保障の財源を稼いでいくには、国の競争力を高めて海外から所得を稼いでくる、これがベースになると思う。内部留保課税というのは、これまで法人実効税率を下げてきてあまり効果が出ていなかったので、今度は痛みを伴う政策で逆に効果を出させようということだが、法人実効税率の引き下げと内部留保課税は方向が逆になるので、その整合性はどうするのか。法人税引き下げはここでやめ、企業部門に対しては増税の方向にいくと、増税の方向で所期のプラス効果が本当に出るのかどうか、お伺いしたい。

細野:二重課税という問題については、例えば個人で言うなら相続税というものがある。あれは、所得税などのフローに対する税金を払って、亡くなる時に貯まっているものについて相続税を課税している。ですから、完全な二重課税。ただ、社会的な公正の観点から、「人生のスタートは出来るだけ平等であった方がいいだろう」ということも含めて相続税が課されているので、二重課税そのものが絶対にダメだという議論ではないと思う。

 法人税の減税と内部留保課税も、私は十分両立しうると思う。法人税の減税は、国際競争力を強化するという意味ももちろんあるし、また、減税することで様々な企業の活力を生み出すということが目的だった。減税で当初期待されたのは、当然、配当に回るとか給料に回るとか設備投資をするということだったが、十分に回っていない。日本の企業の経営者にも考えてもらいたいと思うのは、これは麻生財務大臣もおっしゃっているが、300兆円、400兆円の内部留保があって、利益剰余金だけで140億円ある。それは、本当に考えてもらった方がいいと思う。そこに税金をかけることで、企業自体も、税そのものが上がってくる可能性はあるが、そのことによって経済が動き出すことは、税のかけ方としては極めて健全なものだと思う。

湯元:ただ、内部留保自体がいろいろな資産に投資されている。例えば企業の保有する株式、M&Aをやって株式を取得するといったものも内部留保の運用先になっている。M&Aを止め、その金を使って税金を払うということになりかねないので、経済的にマイナスの影響も出かねないところでは。

細野:対象をどのようにするかは非常に悩ましい。韓国とかアメリカの例をかなり見てきたが、相当いろいろな例外を設けた上で、社会的に許容しえない内部留保をかけている。そこは大いに工夫しなければいけないと思う。

湯元:現預金も全て課税出来ないというか、運転資金でかなり使われている。

細野:中小企業などの場合は最低限の内部留保が必要だし、そもそも内部留保課税で中小企業を対象とすることは考えていない。むしろ同族会社の場合はそういう制度がある。ですから不思議なことに、内部留保課税については中小企業にはやっているのに、大企業が見過ごされてきた。大企業の経営者が本当に社会的な責任を果たして、社長が1年、2年で代わる会社が多いからそういう面がどうしても日本の場合はあるが、そういう企業経営者の背中を押すくらいのことをやらないと、日本の経済は良くならないと思う。

 一問目の、消費税はもう社会保障の財源と考えないのかどうか、そうではなくて内部留保課税を主として考えるのかということに関しては、答えは両方。消費税が全てではない。財務省は消費税に相当偏ってやってきたが、それ以外の税の可能性についても探るべきだと思う。一つは、内部留保課税を検討対象に加えるべきだと。ただ、消費税は選択肢としてない、と考えているわけではない。ですから、凍結という言い方をしている。共産党の主張とはそこが違う。

工藤:どれくらい凍結するのか。

細野:2019年の引き上げに関しては凍結ということ。

湯元:2%分をいつ上げるのか、ということについては何も表明されていないと思うのだが。

細野:それは前提として、まずは国家の経営者たる政治家がきちんとリストラクチャリングをする。さらには行革をやる。これをやった上で、あとは様々な税の可能性も見ながら、という判断だ。

湯元:議員定数とか議員報酬の削減、あるいは一院制の展望も公約に書いてあるが、その目途がつくまで上げないという意味なのか。短期間でそういうことをやるのはけっこう難しいのでは。

細野:定数の削減は、やろうと思えば出来ると思う。一院制は憲法事項だから大変だが、全部が全部揃わないと何も動かせないということではもちろんない。

湯元:ただ、少子高齢化が急速に進んでいるので、5年も10年も放っておくということはとても出来ないような状況になっていると思う。その辺の目途は、例えば2020年代前半とか半ばとか、何かお持ちなのか。

細野:各地方の議員の削減は相当のスピードでやっている。報酬の問題もかなりのスピードでやっている。国会は遅すぎる。これこそまさに、議員が自己保身に走るというしがらみそのものなので、そこは我々が議席をしっかりと国民の皆さんから与えてもらえれば、相当ドライブをかけてやれるという自負はある。

湯元:基本的には、政治改革が大前提なので、それをやれないうちは上げないという認識か。

細野:いろいろなタイミングがある。決まったということが一つの大きなタイミングというのもあるだろうし、もちろん実現出来たというタイミングもあるだろうし。それは、日本の財政の状況や、他の税の可能性なども総合的に勘案して、政治努力として判断していくことになると思う。

労働市場の変化や人口減少を踏まえ。社会保障、国と地方の新しい姿とは

画像を見る小黒:消費税とか内部留保課税の話というのは手段としていろいろあると思うが、自民党など他党との比較で、希望の党が目指している社会保障の像、新しい仕組みが少し見える部分があって、その辺について少しお伺いしたい。例えば、消費税を凍結する他方で、ベーシックインカムのようなものを、基礎年金と、あるいは生活保護と雇用保険、こういったものをある意味で見直して、国民一人一人にベーシックインカムを配っていくというような話も公約にある。これは、ある意味で社会保障をスクラップして、必要なベースの部分だけに集中投下していくような仕組みを提示されていると思う。

 もう一つ、国と地方の関係でいうと、地方もすごい勢いで人口減少していく中で、国が画一的な行政で全部やろうとしても難しくなってきている。そうすると、国と地方の関係を見直すのも重要なテーマで、他党からは、あまりその点について議論が最近出てきていない部分がある。もし、国の機能をスリム化して、地方にもう少し頑張ってもらうという仕組みにすると、今、他の方が言っている国と地方の関係とだいぶ違うと思う。その意味では、国の議員定数、社会保障や国の統治機構もスリム化するというような、そういう新しい国家像のようなものを提示されているということなのか。

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細野:大まかな方向性としては、小黒先生がおっしゃった方向です。一つの考え方として、国の今の社会保障のシステムが永続的に機能して、国民がみんな平等で幸せな社会が出来るなら、それは一つありだと思う。しかし、どうもそれは無理ではないか。特に、AIの時代になって、アメリカのある研究によると、47%くらいの仕事が自動化される。そうなると大量の失業者が出て、もしくは職種を変えなければいけない状況になる。これは対岸の火事ではなく、日本でもそういうことが10年、20年のタームで起こる可能性がある。そうなった時に、今、生活保護は150万人が受給しているが、本当にそれで済むのか、という問題も出てくる。この制度を延長するというのだが、生活保護過程と例えば高齢者の基礎年金を比べると、基礎年金の金額の方が低いから、このアンバランスの問題などもある。

これから仕事が大きく変わってきて、社会保障の仕組みが対応出来なくなるというのは、かなり明確に見えている。ベーシックインカムの導入は相当難しいが、そういう将来を見越して議論を始めておかないと日本の社会の底が抜けるのではないか、という問題意識があるので、問題提起している。そういう意味では、社会保障の大幅な再構成だ。

 その時に、ベーシックインカムは国がやるしかないということになる。でも、例えば介護とか、医療とか、そのあたりは国と地方の役割分担でいうと、もっと地方が持っていいと思う。今の市町村のレベルでやるというのは難しいが、道州制とか特別自治市のようなものが出来た時には、地方がやれる仕組みになる。そのことで、地方が財政や様々な社会保障で大きな役割を果たすようになれば、国会、国の役割は小さくなるし、ベーシックインカムになると厚労省と財務省がやることは相当統合出来る。例えば、参議院も今のままではなく、参議院的な機能は、地方の首長さんが担って、チェックをしてもらうということがあるのではないか。その大きな絵姿を描きたい。描こうとして、そのパーツが公約に表れているということだ。

小黒:国と地方の関係だと、例えば道州制のようなもので、医療とか介護なども地方に任せていって、国そのもののガバナンスの構造を変えていく、と。人口問題については、外国人の受け入れなども積極的に考えていく。社会保障は、ベーシックインカムのようなものも入れながら、スリム化していく。そうすると、成長戦略の部分について、人工知能とかビッグデータとかいう話が出ているわけで、今、自公政権も実際いろいろやっている。そことの違いはどういうものがあるのか。例えばデジタル通貨とかそういうものもあると思うが、どういうところまで違った点を考えて、公約を出しているのか。

細野:成長戦略の部分は、小池代表の言葉を借りれば、スピードが遅いということ。世界はもっとスピードを上げてやっていて、東京も世界で競争している。国ももっとスピードを上げていかなければいけないというのが、我々の問題意識だ。東京金融特区構想のようなものがそうだ。

小黒:あるいは、東京23区内の大学定員の抑制を見直すなどと書いてあるが、そういうのも一つだということなのか。

細野:地方が元気にならなければならないので、東京とどうバランスをとるのかというのは大きな課題だ。ただ、東京の価値を低めることで地方を高めることをやっている限り、日本は沈む。東京がしっかり元気になって地方が元気になるという意味では、大学定員の抑制のような政策はとらない方がいい。先進金融都市を目指すというのは、東京はかなり言っているのだが、国はやや冷淡。そこは、国として必要な規制は緩和していくとか、それについて最大限のサポートをしていくという体制を作らないと、東京も沈むし、日本全体も沈むということになってしまうと思う。

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