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「今回の選挙で各党は日本の課題にどう向かい合っているのか」希望の党編(前編)

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希望の党:細野豪志

聞き手:
湯元健治(日本総研副理事長)
小黒一正(法政大学経済学部教授)
工藤泰志(言論NPO代表)

 これまで10月22日の投票日に向けて、有権者の皆さんに判断材料を提供してきました。言論NPOの最後の取り組みは、政党のマニフェストの内容に切り込むことです。

 一体、日本の政党は、日本が直面する課題を真剣に考えているのか、その解決に本気で向かい合おうとしているのか、さらに、選挙目当てで甘い話に逃げていないか。

 主要5党の政策責任者にマニフェストからは読み解けない疑問点を直接ぶつけ、議論した模様をお届けします。

 希望の党からは、細野豪志氏にご参加いただきました。まず、今回の公約についての説明と、工藤からの疑問をぶつけてみました。

第一部:希望の党は何を訴え、選挙に臨むのか

画像を見る工藤:言論NPOの工藤です。今回の選挙で、私たちはどの党に投票すればいいのか、きちんと吟味しなければいけないと思っています。そのため、各党の政策責任者ならびに政策に非常に詳しい人に言論NPOの事務所に来ていただき、我々の評価委員とともに意見交換、また質問をさせていただきます。

 今日は、希望の党の細野豪志さんに来ていただきました。今度の選挙で希望の党は何を目指そうとしているのか、語っていただき、それについて私たちの質問に答えていただこうと思います。細野さん、よろしくお願いします。

安保政策の骨格は――有事への後方支援が出来る限定的な集団的自衛権行使

画像を見る細野:希望の党の細野豪志です。希望の党はまだ誕生したての政党なので、党としての役職はまだ決まっていません。ただ、私は希望の党設立に関わり、その関係で政策作りにもかなり深く関係してきましたので、私の方から説明させていただきます。

 私が民主党・民進党に所属してきたことは皆さんもご存じだと思うので、率直にそこから話をしたい。私は民主党・民進党という政党で18年間やってきて、国会での採決はおそらく2000件くらいあったと思うが、一度も造反したことがない。その意味では、非常に忠誠心の高い議員でした。ですから、民進党に所属し、その政党で貢献することによって、国民のために役に立ちたいという思いは強くありました。その私がなぜ民進党を出たのか。これは、決して小池代表がいたから出たというのではなく、特に外交・安全保障の問題、ここは現実的にやらないと政権政党の資格はないし、逆に、それが出来ないようであれば、政権をとらない方がいいだろうとまで思っていた。それで、党を出て新しい党を作ることになった。

 従って、一つの大きな柱は、やはり安全保障、特に朝鮮半島有事における重要影響事態への後方支援はしっかりやっていく。さらに、現段階でのミサイル防衛は、アメリカのグアムに飛んでいくミサイルを迎撃するのは技術的には確立していないが、そのあたりが技術的に出来た場合にはしっかりやれるようにするという、限定的な集団的自衛権。そのあたりは、党派を超えて現実的にやっていくというのが、希望の党の安全保障政策の骨格ということになる。逆に、地球の裏側まで行って、アメリカがやるかもしれない戦争の後方支援をするということに関しては、慎重な立場で臨みたい。

政治・行政の無駄削減、消費税以外の見直しで財源を確保し
内部留保課税や規制緩和で経済の基盤を強化

 経済政策では、アベノミクスは是か非か、さらに、これから何が必要なのかということについて、多くの皆さんの関心がある。おそらく一番大きな争点になるのが消費税。まず、率直に疑問を感じているのは、安倍政権になってこれまで2回、消費税の8%から10%への引き上げは先延ばしされてきた。それは、経済の状況が良くないからというのが前提だった。ところが今回に関しては、8%から10%への引き上げを、景気弾力条項もなく、とにかくやるのだ、とおっしゃって、その使途を変えるから信を問う、と。ここは、これまでやってきたことと、現在言っていることにずいぶん矛盾があると思う。我々は、消費増税については、もう一度立ち止まった方がいいだろうと思う。具体的には、「凍結」ということを訴えている。

 数日前、塩辛屋さんを経営している方から声をかけられた。最近、イカの塩辛の原材料費が上がり、けっこう大変なのだとおっしゃっていた。ただ、簡単には価格転嫁が出来ないのだと。なぜなら、消費者はそんな値段の高いものは買わないし、あと、同業他社が当然同じ値段で売るから、そんなことでは競争に勝てないのだ、と話していた。まず何をやるのかというと、社長が給料を削るのだ、と。国家でいうと、社長はやはり政治家だと思う。今、衆議院の定数は465人、本当にこれだけ人数が要るのか。参議院は衆議院と同じような役割をしているが、今のままの衆議院と参議院で本当にいいのかということも含めて、まずは国家の経営者たる政治家の大胆な削減、経費も含めて相当取り組まないと、とても今の状況で増税とは言えないだろう。その上で、例えば霞が関に依然としてある様々な無駄な支出も、政治家が身を切る改革をやってこそ初めて切り込むことが出来る、というのが基本的な考え方だ。

 それを全て行った上でなおかつ税金が必要な場合も、果たしてそれが消費税なのかどうかということも、今回、議論として提示している。一つのアイデアとしては、例えば配偶者控除。これは長年議論されてきたが、結局、自民党はそれを廃止出来なかった。夫婦控除という考え方もあるが、専業主婦か、もしくは働く女性か、ということで税負担に差が出てきて、本当はもっと働きたいのだが時間の制約があるという、例えばパートの女性の方もたくさんいる。そういったところは相当大胆に改革していかないといけない。これでも一定の財源は出ると思う。

 そして、新しい発想として我々が提示しているのが、内部留保。企業の内部留保は、今、大企業だけでも300兆円とも400兆円ともいわれるほど積み重なっている。もちろん、それは全て現預金ではないので、全てに税金をかけることは出来ない。ただ、安倍政権は二回ほど法人税の減税をしているかと思うが、法人税の減税をしたにもかかわらず、設備投資は一部を除いてなかなか増えていない。さらには、実質所得は上がっておらず、従業員の給料も上がっていない。配当もそれほど大胆に増やしたという話は聞かない。結局、企業が内部留保をため込むことによって、言うならば凍り付いているお金が300兆円、400兆円ある。これは極めて不健全だと思う。アメリカや韓国でも、余分な内部留保をため込んだ場合については、内部留保に課税がされている。そのことによって企業は配当をし、それによって当然、株価も上がることが期待されるし、従業員の給料ということになれば、当然所得も増えるし、所得税収も上乗せが期待出来る。

さらには、設備投資ということになれば、それが経済を動かす一つの要因になる。そういった効果も含めて、チャレンジをする余地はあるのではないか。内部留保の課税のあり方については、いろいろな可能性があるので、今の時点で断定的に「これですぐにやる」ということではないが、自民党のように、経団連という大きな組織のしがらみにまみれていては、内部留保には指一本触れられない。麻生財務大臣も「内部留保がたまっているのはよくない」とおっしゃるが、そんなことで口先介入しても企業が動くわけがない。そういったしがらみにまみれて、具体的なアクションを起こせない自民党ではなく、私どもはそのあたりをしっかりとやっていくというのが、党としての一つの考え方だ。

 あと、経済政策としては、一つはサプライ(供給)サイドだと思う。第一の矢(金融政策)、第二の矢(財政政策)、それぞれ機動的にやるとことは別に悪いことではない。ただ、いずれもカンフル剤にすぎないので、具体的な経済の基盤自体が強くなったわけではない。そこは、サプライサイドのAI(人工知能)や自動運転、特区なども利用して、あらゆる規制にもう一度ゼロベースで取り組み、経済の基盤自体を強くしない限り、決して日本経済の基盤は強くならないだろう。これを東京だけでなく全国でやるというのが、一つの大きな柱になってこようかと思う。

タブーだった外国人受け入れで地方の人手不足解消を

 もう一つは、地方の経済をどうするのかというのも、大きなテーマ。例えば、地方の中小企業は、今、かなりの人手不足に苦しんでいる。正社員を増やして、出来るだけ事業を継続するということを考えている企業が、非常に多い。ただ、その時に大きな制約になるのが、中小企業における社会保険料の負担。具体的には、例えば医療保険の保険料、さらには年金の保険料、失業保険もある。介護保険料も、40歳以上にはかかってくる。その負担が大きいから、なかなか正社員で雇えないという企業が多い。私は昨年、ヨーロッパを視察してきたが、例えばイタリア、フランスなどでは、中小企業の社会保険料を軽減することで、若い人たちの正社員化を促している。EUは財政出動については非常に厳しいが、そういう部分に関しては優先的にすることによって雇用を増やしたという実績がある。そういったところも一つの大きな柱になる。

 ただ、そういったことをやったとしても、中小企業の人手不足は簡単には解消しないと思う。そもそも、本当に人口が減っていて、人が充足出来ないという状況がある。例えば介護現場は今、充足率が約3割。7割の人員が充足出来ていない中で、介護現場がもたないところが出てきている。どこの職場も、研修生、実習生を補うということをやりだしたが、これとて相当絞り込まれているので、介護現場は、まもなくもたなくなると思う。もう一つ深刻なのは建設現場。地方の経済において建設業の位置づけは極めて重要だ。そして、災害などが起こった場合には、そういう地元の企業が復旧に直接かかわるが、ほとんど人が確保出来ていない。これも充足率が35%くらい。そうなってくると、実際に来てくれる人は60代とか、場合によっては70代の方々が本当に頑張っている。年齢が高くても、元気で働いてもらえ、また女性にも働いてもらえるのは大事だが、やはり若い世代が、根本的に地方には本当に少なくなっているという現状は、いかんともしがたい。

 そこは、これまで自民党も民進党も言えなかった、外国人にも労働力として入ってもらうのを本気で検討しないと、地方経済が滅ぶと思う。単純労働の人たちを、そのまま世界中から引き受けるなどということは出来るわけがないので、国を限定する。例えばASEANで日本と友好的な国。そういった国々から、職種を限定して入ってもらう。もちろん、犯罪者、犯罪歴のある人については入ってもらうことは出来ない。これまでタブーで出来なかったことにチャレンジして、職種と国を限定して入ってもらい、その中で日本に引き続き留まりたいという人については、例えばグリーンカードのようなものも含めて、多様な外国人のあり方というものを提案していくことが必要なのではないかと思う。

地方自治拡大をはじめ、自民党より幅広い憲法論議を巻き起こしたい

 今回の選挙で非常に大きな課題として私どもが提示したいのは、一つは憲法。9条の議論だけが先行しているが、私は、日本の平和主義なり憲法9条を、基本的に守っていきたいという立場だ。自衛隊そのものを憲法上どう位置付けるかという議論をすること自体は、悪いことではない。ただ、万が一にもそういったことが、国民投票を発議された時に否決されたら、自衛隊の存在そのものが危うくなるから、そういう状況なら、私は、自衛隊を憲法に位置付けることもやらない方がいいだろうと思う。

 むしろ大事なのは、憲法8章。8章をもう一度しっかり見直すことで、国と地方の関係を変えていく。地方に条例制定権はあるが、法律の下でがんじがらめでは、自由な発想で条例を制定することは出来ない。地方自治体が課税を出来るかどうかについては、憲法上何ら規定はないから、非常に遠慮気味に、一応課税自主権を持っていることになっているが、これも十分ではない。さらに、地方が自由にやっていくためには、道州制とか特別自治市などもどんどんやればいいと思うが、これとて憲法上位置づけがない。そのあたりは、憲法8章を変えることによって、地方が様々なことにチャレンジ出来るような政策を合わせてやっていく必要があるだろうと思う。

 自民党の憲法の議論のこれまでの流れの中では、やや限られた議論がされてきたが、我々はもう少し幅を広げて自由な発想で議論するで、国民的な憲法議論をぜひ巻き起こしていきたい。

 最後にもう一つだけ触れれば、今回の解散の最大のきっかけになったのは、森友問題・加計問題だったと思う。解散のタイミング、臨時国会の冒頭解散というのは、国会での質疑をしたくなかったということ。この数日の間に「自民党圧勝だ」というような報道もされているようだが、仮に、三たび衆議院選挙で自民党が圧勝することになれば、まさに、森友問題・加計問題の情報隠ぺいを国民が認めたということになる。どう考えても、残されるべき公文書がなくて、「捨ててしまいました」、さらには国会で答弁することになると「記憶がありません」、そして、出てくる最終的な資料は(黒塗りされた)のり弁当、これでは話にならない。情報公開法を徹底して、さらに強化をしていく。公文書管理についてもしっかり位置付ける。希望の党の一丁目一番地は情報公開だから、そこもしっかりと訴えていかなければいけない。

 
第一部で、細野氏の公約の説明を踏まえつつ、希望の党の公約に代表の工藤泰志が切り込みます。

第二部:希望の党の公約について代表・工藤泰志が切り込む

工藤:では、私から質問します。言論NPOはどういう立ち位置かというと、有権者が主権者となり、主権者と政治がきちんと約束をして課題解決に取り組んでほしいということです。私たちが7月に行った世論調査では、日本の国民の6割が日本の将来に不安を持っていて、その解決を政党に期待することが出来ないという人が、また6割近くいた。それはなぜかというと、日本の国民が今、気にしているのは、日本の将来のことで人口減少と高齢化。そして最近出てきているのは北東アジアの平和、北朝鮮問題。それに対して政党が真っ向から解決策を競ってほしいというのが、基本的な認識です。従って、我々はそういう立ち位置から質問します。その前に、二つほどお聞きしたいことがあります。希望の党はよくメディアに出ているが、私たちにも分からないところがある。まず、これは政権を争う選挙だが、選挙の結果、誰が首相になり、どういう枠組みでやっていくのか。それを選挙の前に決めず、国民に説明しなくていいのか。

細野:希望の党は過半数である233人以上の候補者を出しているので、もちろん我々は政権の獲得を目指している。ただ、現実問題として、比例区単独の候補者を含めて233人を若干上回っている程度なので、単独過半数を取るのは相当難しい。そうなってくると、もちろん我々が中心で政権を担うことを目指すのだが、足りない分については何らかの他党との協力なり、そこから何人か希望の党に加わってもらうことがない限り、政権は取れない。そこはいろいろな可能性があるので、選挙が終わった後、柔軟に対応していくというのが我々の姿勢だ。

工藤:二つ目は、細野さん自身の話。細野さんが民進党をやめて新しい政党に加わる一つの大きな動機が、現実的な安全保障ということだった。それが今回の政策の中で、どう実現したのかをお聞きしたい。例えば、憲法問題に関しては、自衛隊も含めて「議論しましょう」という形です。それから、安保法制も含めて、今までと違って、何を新しい問題として提起されているのかよく分からない。

画像を見る
 また、2012年の三党合意で、税と社会保障の一体改革が決まった。それが、野田政権以降の日本政治の大きな変化のドラマの始まりだったわけです。その時、細野さんは民主党政権の閣僚だったわけですが、三党合意を経て消費税を上げ、そして財政再建を図る。何よりも少子高齢化が進む日本の将来に備える決断をした細野さんが、消費税増税を凍結する側に回っていることに違和感がある。それはどういう考え方なのか。確かに、自民党の政策の立て方がどうだ、ということはあるが、そもそも政治家として日本の将来を見据えた場合に、消費税の持つ意味をかなり大きく考えていたはずです。そのあたりはどう説明されますか。

政権が破棄した三党合意には責任を持てない

細野:まず安全保障に関しては、安保法制が成立した当時、私は民主党の政調会長だった。ですから、尖閣諸島の問題に対応する法律と、周辺事態法を強化する法案を、党として作っていた。私の率直な気持ちとしては、限定的な集団的自衛権についても議論して結論を出したかったのだが、そこは時間切れで最終的な収斂はしなかった。ただ、少なくとも、主要な3つの変更点のうち2つについては法案を作った。ところが、当時の民主党の判断としては、国会に法案を提出することなく、反対だけに終始した。

ですから、今回、希望の党としては、周辺事態、重要影響事態といっているが、朝鮮半島有事の後方支援についてはしっかりやっていく。ミサイル防衛に関わるような限定的な集団的自衛権についても、必要があれば認めていくということも、公約の中で書いている。一方で、国際平和支援法という法律があるが、地球の裏側に行ってアメリカがやるかもしれない戦争に参加するということ、ここについては相当慎重でいたほうがいいと思う。ですから、私が二年前に考えていたことと今との流れで言うならば、私は一貫していってきて、ようやくそれを比較的現実的に言える環境が整ったということだ。

 三党合意は確かに歴史的だったと思うが、とっくに破棄された。消費税増税を2回も延期して、1回も話し合われていない。使途についても、当時さんざん議論したことが全く守られていないので、2012年夏の三党合意を持ち出して「責任があるから」と言われても、さすがにそれは責任を持てない。むしろ、動くお金に税金をかけるか、もしくは動かないお金に税金をかけるかというと、そこは少し発想を変えたほうがいい。消費増税をすれば、リバウンドはあるにしても必ず経済が落ち込むことは間違いないわけだから、そこを含めて税の考え方をもう少し慎重に考え直した方がいいと思う。

情報のない野党が財政再建の根拠を示すのは無理

工藤:今度は、希望の党の政策の中身について。政策の基本的な考え方、視点に関しては確かに斬新なものはあるが、何を具体的に、どういう形でいつまでにやっていくのか、ということが全く見えない。例えば、消費増税の凍結をする。しかし、凍結したことによる、社会保障の必要経費や財政再建に対する影響をどのように説明するのか。特に、財政・経済政策を一体でやると言っているが、財政再建に対する具体的な公約はない。例えば、自民党の公約について我々が厳しく見ているのは、プライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化について全く説明していない。希望の党は、財政再建に対する考え方をどのように説明していくことになるのか。

細野:2020年のプライマリーバランス黒字化は、長年政府が約束してきて、国際公約でもあった。今回、それが完全に反故にされたというのは、そもそも自民党サイドの前提が崩れているということ。政府ですら試算できないような状況と、これだけ政府が情報を隠蔽している中で、財政再建の考え方を全て示せというのは無理。だから、少なくとも凍結をした上で、どこに無駄があるのかについては具体的にかなり指摘しているし、税金の方法についてもいくつか提示している。それらもしっかり情報開示をしてもらい、我々としてやりうるなら計算したいと思うが、今の時点で、計算出来るだけの情報の開示がないということだ。

工藤:しかし、凍結することによって想定される財政収支への影響額が出てこない。また、赤字国債で埋めるということは先送りせざるを得ないという状況だから、その検討期間そのものの時間コストがかなり高い段階に、今の日本はあるのではないか。

細野:消費増税を二回先延ばししているのだから、その批判は全て、政府がお受けになった方がいい。先延ばししてどうしているのかといえば、いろいろなことで帳尻を合わせてやっている。国民としても、それを政府に許しておいて、野党に財政再建の計画を出せと責任を問うのは、ちょっと筋が違うと思う。

工藤:であれば、財政状況に対する認識はどうなのか。

細野:極めて厳しいと思う。

工藤:極めて厳しいというのは、どういう形か。持続可能ではない、ある期間でかなり厳しい段階に来る、どのような認識か。

細野:非常に厳しいと思う。公約にも書いているが、金融緩和を継続してきているから、簡単にすぐ収束させるわけにはいかない。しかし、それが収束する時に、国債が市場できちんと消化され続けるのかということも含めて、相当厳しいと思う。

 公約の中では、金融の異次元緩和について、出口戦略をしっかり練らなければいけないという話をしている。日銀と政府との間で相当しっかりとやっていかないといけない、ということを書いている。逆に、急激に緩和をやめるということになるといろいろな混乱もあるから、そこは現実的な対応が必要だ。

金融緩和からの出口戦略は、急激な方針転換の危険性に配慮しつつ練る

工藤:公約では「ポスト・アベノミクス」を掲げています。アベノミクスの第一の矢と第二の矢に関しては、どのような立ち位置をとるのか。

細野:カンフル剤としての効果はあったと思う。我々は補正予算で、何でも財政出動でやるということに対しては慎重な立場だ。金融緩和については今やっているので、急激な方針転換は危険。そこは緩やかに、将来的な出口戦略については検討していく必要があると考える。「財政で景気回復」というのは、これまでも何度もやってきた方法だが、相当限界がある。やるとすれば相当戦略的に、例えば社会保障についても人生前半の部分にシフトしていくとか、限定したものでやっていくということだが、その持続性はあまりないと思う。だからこそサプライサイドの改革を徹底的にやり、そのことで経済自体の競争力を高めていかないと持続しないというのが、我々の考え方だ。

工藤:確かに、補正予算でどんどん財政出動するのはよくない、それは補正でやらないという話でしたよね。

細野:補正予算を全部やるなとは言わない。ただ結局、補正が織り込まれていて、補正の部分も政策の弾を用意して毎年やっている。そのチェックが甘いというのは繰り返されてきたことで、こういう既存のやり方は、我々はしないということだ。

工藤:今までの安倍政権では、税収増のかなりの額を財政支出に使っている。本来は財政赤字をもっと軽減出来たかもしれないが、財政政策にかなりウェイトを置いて支出していた。そのスタンスとは同じですか。それとも、財政政策はほとんど使わないということか。

細野:補正予算で帳尻を合わせて、本予算で確保できなかった予算を補正でやる、そのことによって財政のたがも緩んでいく、というやり方はよくないと思う。

工藤:日銀は昨年、軌道修正をし始めて、どんどん緩和するという形から方向を変えている。この軌道修正に対しては賛成ですか。それとも、緩和は今後も続けるという考えですか。出口戦略は慎重に練るとおっしゃいましたが、当面の異次元緩和は続けていくということなのでしょうか。

細野:スタートする時の判断と、既にやっていてこれからどうするかという判断は、当然違う。ですから、急激な方針転換はかなり危険を伴う。徐々に日銀が方針転換をしていくということであれば、それはやはり必要なのだと思う。

工藤:与党は「デフレ脱却」という目的を掲げているが、希望の党はデフレ脱却が政策目的にありますか。

細野:デフレ脱却はもちろん必要。しかも、現状は成功しているとは言えない。やはり実質所得が上がってこないと、デフレ脱却出来ない。コストプッシュ型のインフレは決して良いデフレ脱却ではないし、やはり実質所得が上がって購買所得が上がって、そのことによってものの値段が上がっていくというのが一番いい方法だから、そういう状況が達成出来ていないことは明確だと思う。

工藤:実質的な消費をベースにした経済の好循環を起こすということは分かったが、では、デフレ脱却の定義はそこなのですか。経済の好循環が起こるとデフレ脱却だ、という理解でいいでしょうか。

細野:デフレ脱却というのは、CPI(消費者物価指数)なりGDPデフレーターなり明確な指標があるので、それで測るのだと思う。なぜデフレ脱却が良いのか、デフレ脱却の目的は何かといえば、例えば為替が動くとか石油が高くなるとかということで、コストプッシュ型でデフレ脱却しても何の意味もない。そうではなくて、所得が増え、そのことによって消費が増え、そのことが設備投資にもつながっていくという好循環が出来ることに意味があるのではないかと思う。

工藤:消費増税凍結の理由は、経済回復の実感がないという話だが、経済指標を見ると、今、景気は非常に拡大する状況になっている。その要因は海外景気などいろいろあると思うが、ここまで完全雇用に近いような経済状況の中で消費増税を出来ないとすれば、どういうタイミングで出来ることになるのか。

細野:少なくとも今回、景気弾力条項がないこと自体が、おかしい話ではないか。もともとあったのだから。経済状況に応じて考えましょうということになって、増税出来ない状況を二回作ってしまった。これは、安倍政権の失敗だと言える。二年後の経済状況について完璧に予測出来る人はいないのだから、そういう中で本当に出来るのかについて慎重に考えるべきだというのは当然だと思う。

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