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時間がかかる欧州問題

 懸念されていたギリシャ問題は、やや唐突感があった国民投票が回避され、首相がパパンドレウ氏からパパデモス氏に交代したことで一旦落ち着きを見せている。

 国民投票は以前から話としてはあったものの、追加支援実施の少し前というタイミングでパパンドレウ首相(当時)から表明されたことが、各国を驚かせた。

 ギリシャはユーロ圏加入に際し、自国の財政状況を実態よりも健全に見せるなど、国家として通常は考えにくい行動をしたことを考えると、ギリシャにとっては国民投票の表明などは、さほど突飛なことではなかったのかも知れない。

次はイタリアだが・・・


 ギリシャ問題が落ち着いたと思ったら、今度はイタリアが問題になった。市場ではイタリアの財政問題や政治の不安定さが指摘されているが、財政問題や政情問題はイタリアだけの問題ではない。

財政は


 まず財政だが、2008年9月のリーマンショック後、政府が経済・金融を立て直すために民間のリスク(負債)を肩代わりする政策をとったことから、各国のフローの財政収支は大幅に悪化している。

 OECD(経済協力開発機構)が発表している各国の経済状況(エコノミック・アウトルック)を見ると、2010年(実績)、2011年(予想)の財政収支は、先進国でもGDP比▲10%程度の国が英米など複数あり、イタリアの同▲4%程度という数値は、どちらかというと健全な部類に属する。(日本はこの資料では同▲8%台)

 更に、プライマリー・バランス(国債費を除いた財政の基礎的収支)を見ると、イタリアは先進国では数少ない黒字国だ。ただ、イタリア政府の債務残高(ストック)は、GDP比120%台で先進国の中では日本(同200%程度)に次いで悪い。

 財政問題をどのような視点で見るかによって評価は異なるが、イタリアの財政状況は「これまでの累積である債務残高は多いものの、毎年の財政収支はさほど悪いわけではなく、先進国の中ではましなほうだ」ということになる。

政情は


 政情については、イタリアは悪い部類に属するものの各国とも不安定であり、イタリアを声高に批判できるような状況ではないだろう。

ユーロが不自由なのは


 そもそもユーロの仕組みは不自然だ。よく言われているように、ユーロ圏から離脱できない、決め事は加盟17カ国全ての承認が必要など、非常に不自由な仕組みになっている。それなのに、不自由さを軽減することになるはずの、一体化のための各国財政政策などの統合(いわゆる深化)は、ユーロ発足当初から課題になっているにもかかわらず、全くといっていいほど進展していない。

 どうやら、ユーロ圏設立の主たる目的は「経済発展のため」というよりも、「欧州の平和のため」という主要国の利害が一致した政治的なものだったのではないだろうか。とすると、制度の不自由さは特定の国の行動を抑制するための意図的なものである可能性が高く、ユーロ圏で「当初の目的よりも目前の財政・金融危機回避を優先させる」という決断が出来ない限り、制度はなかなか改善(=深化)しないと思われる。

時間がかかる欧州問題


 リーマンショックという未曾有の危機後、「国債の格下げは日米には効かないが、ユーロ圏には良く効く」ことや、「イタリアの財政状況と市場の評価が不整合である」ことに見られるように、ユーロ圏は市場から制度上の不備を突かれている。

 前述のとおり、問題解決のためには深化促進という大きな政治的決断が必要だが、各国の利害が交錯している現状を見ると、実現はかなり難しそうだ。


--- 長谷川公敏((株)第一生命経済研究所 代表取締役社長)

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