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Noise From The Edge Of The Universe Vol.6 「地域再生」は必要なのか?

実家の親・兄弟・親戚・地域社会のウザい発言・雰囲気・価値観にキレ気味の皆さんこんにちは。republic1963です。私の場合、これが毎日なわけでして、そりゃーまぁtwitter上で発狂するわな、という主張を2011年の始まりにおいても高らかに宣言したいところでございます、本年もよろしくお願いいたします。

さて、私は地獄こと岐阜に住んでいるわけだが、今回は地域再生を論じた久繁哲之介『地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか?』(ちくま新書)を取り上げ、地元居住者から見た地域再生について語ってみたいと思う。

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地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか? (ちくま新書)
著者:久繁 哲之介

『地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか?』(以下『地域再生の罠』と略す)における岐阜市は「コンパクトシティを目指すのに路面電車廃止しちゃった」世にも珍妙な「再生例」として登場する。つまり、街の機能を駅周辺に集約(=コンパクトシティ)したのに、その足(=路面電車)を廃止したという物凄くヘンな・・・もとい、未来を見通した施策を打った街、それが我らが岐阜市である。この施策が物語る事、それは「駅前に来る時には車を使え」ということである(岐阜市にはバスがあるものの、ご多分にもれず非常に使い勝手が悪い)。『地域再生の罠』における一番鋭い指摘が「移動手段を車メインにする街は必ず衰退する」というもので、それは住んでいる人間の実感としても全くもって正しい。街への移動手段を車にした途端に、何をするにも駐車場と帰りの手段の問題が浮上してくるのだ。わざわざ足を廃止してまでこうした施策を打つ岐阜市というのは大変素晴らしい自治体ですね、という思いを新たにするわけ(ちなみに、岐阜市における路面電車排除、車優先の施策は今に始まった事ではない。1967年にはすでに岐阜市議会は路面電車廃止決議を可決させている)だが、恐ろしいのは、私は『地域再生の罠』を読むまでこうした岐阜市の実情を知らなかった事だ。岐阜県には、オピニオンリーダーたる岐阜新聞という新聞があるのだが、そこではこうした事実は一切報じられない。岐阜駅周辺の再開発計画に関しても「とりあえずなんかよさそうな事やってる」風なのだ。

「地域再生」という問題設定自体は一種の既得権なのだ。そして「地域」においては自治体からマスコミまで総出でその既得権を守ろうとしている。
「地域再生」を語る時に関係者やマスコミが必ず行うのが商店街を救えという主張だ。だが、商店街は本当に必要なのだろうか。「商店街を救え」という人は商店街に行った事がないか、もしくは嘘つきだろう。商店街にある商店とは、

1:品揃えが悪い、2:店員(オヤジ)が不親切、3:入りづらいオーラに満ち満ちている、

と相場が決まっている。郊外に同じような店ができて、そして半年ほどで速やかに市場から淘汰されたとしても誰も文句を言わないだろう。なのに同じ店が駅の近くにあるというだけでそれは「再生されなければならないもの」とされる。おかしな話である。何故か「地域再生」というマジックワードがついた瞬間に商店街の店にも良い店と悪い店があるという当然な事すら省みられずとにかく全てが「救わなければならないもの」になるのはおかしな話ではないだろうか。岐阜市の場合、車で行き、有料駐車場を使わなければいけないのにも関わらずである。
地域社会における「地域再生」とは、予算を引っ張ってきたり、自らの施策の正当化、もしくは「とりあえずやってますよ」というアピールのために使われる。つまり、要するに地域なんて再生しなくてもいいのだ。むしろ本当に再生しちゃったら予算を引っ張ってこれなくなるので困るのだ。


さて、最後に岐阜市におけるコンパクトシティ化の結果と帰結について書いておこう。先に述べたように、岐阜市においてはコンパクトシティ(都市機能の駅周辺への集約化)と路面電車の廃止(車以外の足の廃止)が同時に行われた。その結果は岐阜市の2分化ではないだろうか。つまり、「名古屋市岐阜区」と「(狭義の)岐阜市」への分離である。そもそも、岐阜市には名古屋市のベットタウンという側面がある。ご存知の人もいるかもしれないが、JR岐阜駅から名古屋駅までは急行で20分弱、完全に通勤圏内なのだ。岐阜駅から徒歩(ないし自転車)で移動できる圏内はこの「名古屋市岐阜区」にあたる。一方で、それ以外の「(狭義の)岐阜市」においては移動手段が車になる。「名古屋市岐阜区」に住む人は「観光客として」岐阜市に訪れ、ほとんどの買い物は名古屋ですませる。一方で「(狭義の)岐阜市」に住む人は名古屋にすら全く行かず、生活の全てを車でいける範囲の郊外型の店ですませる。岐阜市の施策によって今後、両者は明確に分離してくるのではないか。そして、そうした現状とは全く関係なく未来永劫「地域再生」は岐阜市の最重要施策として推進され続けるに違いない。なんともはや素晴らしい街である。

(republic1963)

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