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「普天間飛行場無条件撤去」論を敬意を込めつつ反対する

 8日付け朝日新聞記事から。
「友好関係の第一歩」志位委員長、初訪米で高官らと会談
2010年5月8日11時2分

 【ワシントン=伊藤宏】共産党トップとして初めて訪米した志位和夫委員長は7日、米国務省のメア日本部長や米下院議員らとワシントン市内で相次いで会談した。志位氏は同日の記者会見で「オバマ政権とは、立場の違いが大きい問題はたくさんあるが、(米側は)聞く耳はもたない、という立場ではない。米国は大事な隣国だと思っており、本当の友好関係を築きたい。そのためには何でも話し合える関係が重要であり、今回の訪米で、その第一歩を踏み出せた」などと語った。

 メア氏との会談では志位氏が、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の無条件撤去を求めたが、メア氏は在沖縄海兵隊の重要性を主張するなど、議論は平行線に終わったという。ただ、今後も意見交換を続けていくことでは一致したという。

http://www.asahi.com/politics/update/0508/TKY201005080113.html

 日本共産党委員長として史上初めて訪米した志位氏ですが、「敵地」とも言えるワシントンにて、アメリカ政府要人(米国務省日本部長)などを相手に堂々と、「普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の無条件撤去」を主張したそうであります。 

 もちろん米政府としてそんな提案をのめるはずもなく「議論は平行線に終わった」そうですが、うむ、私は普天間問題に対する考え方は日本共産党の主張とは異にしますが、実にすがすがしい記事ではあります。

 リーダーたるもの、君子たるもの、かくあるべきとあらためて思うのであります。

 中国古来の戒めの書である『易経(革卦)』に「言行は君子の枢機なり」という言葉があります。指導者たるものの最も大切な要素はその発言と行動である、指導者の発言と行動はそれだけ重いのだということであります。

 普天間問題では鳩山首相の発言と行動が大きく問題視されているわけですが、ここまで来ると日本国民の一人として単に時の政権の無策を批判しても空しいだけで何も解決しないわけであり、この国の将来のためにも冷静に善後策を考えてみたいのであります。

 ところでこの日本共産党の主張する「普天間飛行場無条件撤去」でありますが、アメリカ人有識者の中でもそのような主張をしている人がいると特にネット上の一部で話題になっております。

 元CIAの顧問、チャルマーズ・ジョンソン元カリフォルニア大学政治学教授。東アジア研究の大家であります。

 ライブドアBLOGOSの記事から。
「普天間無条件閉鎖」を説く米アジア研究の大家

2010年05月07日11時56分 / 提供:永田町異聞

http://news.livedoor.com/article/detail/4756832/

 元インタビューはこちらで読むことができます。
●ダイヤモンド・オンライン

元CIA顧問の大物政治学者が緊急提言 「米軍に普天間基地の代替施設は必要ない! 日本は結束して無条件の閉鎖を求めよ」

独占インタビュー チャルマーズ・ジョンソン 日本政策研究所(JPRI)所長

http://diamond.jp/articles/-/8060

http://diamond.jp/articles/-/8060?page=2

http://diamond.jp/articles/-/8060?page=3

 うーん、すでにいくつかのリベラル派のブログで取り上げられているようですが、この老齢のアメリカ人は何も昨日・今日こんなことを突然言い出したわけではないことは留意すべきだとは思います。

 このインタビューで氏が主張している内容はほとんど10年前から変わっていないのであります、氏の著作は『アメリカ帝国への報復』(集英社)とか『帝国アメリカと日本 武力依存の構造』(集英社新書)とか、邦訳もけっこうされていますが、彼は昔から筋金入りの反軍リベラリストとしてアメリカでは有名な論客であります。

 今私の手元に『帝国アメリカと日本 武力依存の構造』(チャルマーズ・ジョンソン著:集英社新書)がありますが、初版2004年7月21日ですから6年前のものですが、この本でもチャルマーズ・ジョンソン氏は多くの部分を在沖縄米軍の問題にさき細かく取り上げています。

 04年当時、沖縄米軍には4つの問題があると本の中で指摘しています。

一、日本に駐留するアメリカ軍の法的立場を定めた、軍の地位に関する日米協定(SOFA)は、1960年以来見直しがなされておらず、NATOとドイツの間、アメリカと韓国の間に交わされている同種の協定と比べて圧倒的に偏っている。この問題がとりざたされたのは、2001年2月に、北谷でバー数件と屋台の飲食店に火をつけた海兵隊上等兵の日本への引渡しを米軍が拒否した事件によってだ。放火はSOFAに規定されている凶悪犯罪にはあたらないというのが米軍の言い分だった。アメリカ軍の基地を抱える14都道県の知事もそろって、SOFAの正式な改定を求めたものの、日米両国政府は拒否した。見直し作業が収集のつかないものになりかねないと懸念したためだ。レイチェル・コーンウェルとアンドルー・ウェルズが指摘するように、「ほとんどのSOFAは、米軍関係者が駐留国の人に対して行った犯罪に対して、駐留国が司法権を発動できないように記述されてりう。例外はアメリカ軍当局者が、司法権の委譲を認めたときだけだ」

二、名護市沖合いが移設先として候補にあがっている海兵隊の飛行場は、絶滅が危惧され天然記念物にも指定されている海生哺乳類ジュゴンの生態系を脅かす。日本政府も参加する世界自然保護会議は、2000年10月の4日からああにヨルダンのアンマンで開かれていた大会において、日米両政府に対し、ジュゴンの棲息する珊瑚礁と藻場を保護しジュゴンを救うよう求めた。米軍がこの問題で無関心であることには日本のナショナリストたちも怒りをあおられ、日本の一部で好んで食用にされているクジラについてはアメリカの国内法を縦に護ろうとするのに、日本のジュゴンは喜んで犠牲にする矛盾を指摘している。

三、1995円と96年、米海兵隊は琉球諸島の鳥島に1520発の劣化ウラン弾を撃ち込んだ。しかし劣化ウラン弾が健康に与える影響の危険性については一年以上も口をつぐんでいた。2000年3月、嘉手納基地第18航空団司令官のジェイムス・スミス准将が、嘉手納には劣化ウラン弾が備蓄されていると認めた。だが、これを使用する航空機は沖縄には配備されていないと発言した。西原の廃棄物処理場で使用済み劣化ウラン弾の弾薬筒が発見されたにもかかわらず、アメリカ政府はまったく関心を示そうとしなかった。しかしNATO加盟国が、コソボに従軍したヨーロッパ人兵士24名がガンで死亡し、その原因はコソボで使われた3万発にのぼる劣化ウラン弾だと思われると発表すると、日本のメディアも激しく反応した。<朝日新聞>は「こんな兵器はいらない」と社説に掲げた。

四、2000年の九月に沖縄を訪問した海兵隊司令官のジェイムス・ジョーンズ将軍は、<沖縄タイムス>のインタビューに答え、垂直離着陸機V−22「オスプレー」を普天間か、その代替飛行場に配備するつもりであると語った。これが大変な騒動の引き金となった。墜落事故が多発していること、海兵隊上層部が製造予算をまるまる議会から引き出すために整備記録を改ざんした疑惑がもたれ、調査が進められていることなど、沖縄のメディアはオスプレーのさまざまな悪評を大々的に報道した。普天間ではただでさえ墜落事故で市民が犠牲になる危険が常につきまとっているのに、それまでに23人の海兵隊員のいのちを奪っているオスプレーが配備されるとなると、との恐れがいっそう高まるものと見られたのだ。稲嶺知事の盟友でもある名護市の岸本建男市長は、「市民を危険にさらすことはできない。安全が確保できないものは受け入れない」と明言した。

『帝国アメリカと日本 武力依存の構造』(チャルマーズ・ジョンソン著:集英社新書)

P154〜P157 抜粋

 6年前のこの時点で氏は「二、名護市沖合いが移設先として候補にあがっている海兵隊の飛行場は、絶滅が危惧され天然記念物にも指定されている海生哺乳類ジュゴンの生態系を脅かす」と明確に普天間基地移転反対を既に主張しています。

 この本の結語で氏は「どうすればいいかは明らか」であり、「アメリカは、東アジアの国々との協定を変更し、アメリカ軍を無期限に駐留させることなく、国家対国家の対等な同盟関係に転換していく必要」を主張します。

 当該部分を抜粋。

 こうした問題は複雑に絡み合い、解決への展望を予測することすら不可能だ。しかしどうすればいいかは明らかである。アメリカは、東アジアの国々との協定を変更し、アメリカ軍を無期限に駐留させることなく、国家対国家の対等な同盟関係に転換していく必要がある。米軍を前進配備することは、それ自体紛争を誘発しかねず、東アジアの大きな不安定要因になっているからだ。

 また米軍施設が東アジアの国々の中にアメリカの飛び領地のように存在することは、道義上の問題を引き起こしており、のちのちの信頼関係と協力関係を築いていくための基盤にひびを入れている。これまでのところ、ブッシュ政権が行ってきた外交には−とくに、朝鮮半島の平和についてまったく意に介さないことや、中国を罠にはめようとしてきたことに−慎重さを欠くばかりで斬新さは見られず、ブッシュ政権がアメリカの経済的利益に無知であることと、他国の意見に危険なほど無関心であることを露呈してきている。この現状に東アジアの衛生諸国は早晩反旗をひるがえすだろう。10年ほど前に、東ヨーロッパのソ連衛星国が示してみせたように。

 そうなってはもう手遅れだ。西太平洋地域におけるアメリカ軍の存在によって得てきた何もかもが失われてしまっているだろう。

 6年前の著作で「この現状に東アジアの衛生諸国は早晩反旗をひるがえすだろう」と予言して見せたチャルマーズ・ジョンソン氏なのでありますが、今の普天間基地移設問題で揺れる日米関係を氏は「悲劇的」とインタビューで答えているのはある意味で納得するのであります。

 ・・・

 私はこれらの主張に対して実は生理的な拒否反応はありません、むしろ問題を俯瞰して捉える点でとても参考になりますし、敬意を示しつつ将来いつの日か沖縄から米軍基地がなくなるならばすばらしいことと、夢想するのにその筋道を考えるときに活用させていただいています。

 しかしながら今この瞬間即座に「普天間飛行場無条件撤去」との主張には反対の立場です、最終的将来像としてしっかりと日米で協議してプランを立てるならばまだしも、今回の鳩山政権のドタバタ劇の延長線上で「無条件撤去」なる劇薬を持ち出すのは、外交的手順を一切無視しており、国際的にも外交手法としては乱暴で稚拙な印象は否めず、不必要な摩擦が大きすぎて、とてもリスクがあると考えています。

 外交は現実です、観念では動きません、野党共産党が主張するのはよいでしょうが日本政府・民主党政権がこのような理想的夢想論を急に持ち出すことは許されませんでしょう、それまでの経緯にも責任を持つべきだからです。

 そもそも普天間基地移転問題は、自民党政権時代にまがりなりにも日本国家としてアメリカ国家に約束した合意事案です。

 それを政権交代で政策が変わったのだとする理由付けで、過去の国家間の約束を覆すならば、真摯に十分な協議の場を持ち、双方が納得する案を見出すべき道筋を確立すべきですし、その責任は約束を反故にする側・日本政府により大きくあると考えます。

 「言行は君子の枢機なり」は国家同士にもあてはまると思うのです。

 民主党政権がこれを持ち出すことはよもやないとは考えますが、今すぐの「普天間飛行場無条件撤去」論は、共産党やチャルマーズ・ジョンソン氏に敬意を込めつつ反対しておきます。

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