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米ロにはねつけられた安倍首相の対北外交(佐藤甲一)

2月、トランプ米大統領との首脳会談を終え帰国した安倍晋三首相は首相公邸に親しい記者を集め、祝宴を開いた。大統領との親密な関係が構築できたことを誇示する首相に対し、記者たちからはプーチン露大統領との度重なる首脳会談も念頭に、今や「世界のアベ」と呼ぶに相応しいという「お追従」の声も上がったという。

だが、その「世界のアベ」も今や見る影もない。そこにあるのは、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の相次ぐミサイル発射や核実験に翻弄され、その場しのぎの外交に終始する滑稽な姿である。

北朝鮮の核・ミサイル開発に対する安倍政権の姿勢は「対話のための対話はしない」という「圧力外交」であった。とはいえ、日本が北朝鮮に対して独自かつ有効な「圧力」を加える手段があるわけではない。あるのは米国の対北朝鮮政策に沿って、それを忠実にサポートすることだけだ。その方針に変化があったのは、前回8月25日号本欄で明らかにした田原総一朗氏からの「冒険」の誘いであり、北朝鮮への安倍首相の訪問も含めた「直接外交」だった。その結果はどうだったのか。

8月29日、日本上空を飛び越えて太平洋に落下した北朝鮮のミサイル発射を受け安倍首相はトランプ大統領と電話会談を行なった。この中で安倍首相は「北朝鮮に対話の用意がないことは明らかであり、今は圧力をさらに高めるとき」との認識を伝えた、と外務省の公式発表ではされている。「実はその言葉が、アメリカに言われたことそのものだ」と政府関係者は明かす。

8月15日のトランプ大統領との電話首脳会談、その後の日米安全保障協議委員会(通称・2プラス2)などを通じ、北朝鮮との対話の試みを提案する日本側を、米国側ははねつけたというわけだ。8月末の北朝鮮のミサイル発射、それに続く6回目の核実験という北朝鮮の行動を見れば、「安倍訪朝」の試みなど、緊迫が続く国際外交の流れからすればまったくの的外れな提案だったのだ。

なぜこのような“失態”となったのか。身内びいきに過ぎることが指摘されてきた安倍首相特有の「人間関係観」にあるのではないか。大統領選挙当選後から続くトランプ大統領の厚遇に、国益を背負って相対する北朝鮮をめぐる外交の厳しさを見落とした。「親しい関係」レベルの発想に基づいた提案や交渉では、緊迫する外交には立ちゆかないのである。

思えば、度重なる失言にもかかわらず稲田朋美元防衛大臣をかばい、結局稲田氏が南スーダンPKOの日報隠蔽問題で引責辞任に追い込まれたことを思い出す。とどのつまりは同じ類いの政治的失態である。

安倍首相は9月7日、ウラジオストクでプーチン露大統領と19回目の首脳会談に臨んだ。過去18回にも上る首脳会談で築いた信頼関係を基に、プーチン大統領に北朝鮮への「最大限の圧力をかけることが重要だ」と働きかけ、国連の制裁決議に懐疑的な同大統領を説得することを試みた。

だが結果は「核問題の解決は政治・外交的手段によってのみ可能だ」という真逆な言葉を引き出してしまった。個人的な信頼関係など、こと首脳会談においてはまったく意味をなさないことをここでも突きつけられた。安倍首相の安直な首脳外交によって、日本は米ロ両国からの嘲笑を買ったのではあるまいか。

(さとう こういち・ジャーナリスト。9月22日号)

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