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「世界に躍進する韓国企業に学ぼう」(日経社説)に反論する〜韓国経済の抱えている大きな問題点に触れていない

 韓国経済が元気いいです。


 9日付けの韓国・朝鮮日報記事から。


韓国債、米国債より人気先行



 今年に入り、韓国の国債が国際金融市場で米国国債を上回る応札率で取引されている。韓国の国債を購入する投資家が多いことは、世界的金融危機を耐え抜いた韓国経済の将来を楽観視するムードが広がっていることを示している。


 企画財政部が8日に実施した5年物国債発行入札には、発行予定額2兆2740億ウォン(約1810億円)の3倍を超える6兆9000億ウォン(約5500億円)の入札があり、応札率は305%を記録した。今月2日に行われた3年物国債入札でも5兆5000億ウォン(約4390億円)の募集枠に対し、応札率は392%に達した。


 これまで世界で最も安全な資産として評価されてきた7年物、10年物の米国国債に対する応札率は最近250−300%で推移しており、韓国国債を下回っている。


 韓国国債が国債金融市場で脚光を浴びていることを受け、年初来先月末までの国債発行高は、当初計画の13兆ウォン(約1兆400億円)より4兆5000億ウォン(約3600億円)多い17兆5000億ウォン(約1兆4000億円)に拡大した。これは、今年の国債発行計画77兆7000億ウォン(約6兆2000億円)の20%に相当する。


 韓国国債に対する応札率が米国国債を上回ったことについて、専門家は「韓国経済の急速な回復を反映したものだ」と分析している。


 韓国は昨年0.2%の成長率を記録し、経済協力開発機構OECD)加盟30カ国で3位だった。今年も4−6%という高い成長率が見込まれている。



チョン・ウォンソク記者


朝鮮日報/朝鮮日報日本語版


http://www.chosunonline.com/news/20100309000009



 「今年に入り、韓国の国債が国際金融市場で米国国債を上回る応札率で取引されている」とのことです。


 



 韓国の専門家は「韓国経済の急速な回復を反映したものだ」と分析しているそうですが、サムソン電子やLG電子など世界的に躍進する韓国企業の好業績が背景にあります。


 そういえば4日付け日経新聞社説は普段2本掲げる社説を一本に絞って長文の「世界に躍進する韓国企業に学ぼう」という論説を掲げていました。


社説 世界に躍進する韓国企業に学ぼう(3/4)


http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20100303ASDK0300403032010.html



 社説冒頭で韓国企業の世界市場での躍進ぶりを「韓国企業の台頭ぶりに驚かされる」という描写で取り上げます。




 韓国企業の世界市場での躍進が目立っている。電機、電子産業を中心に、日本企業の低迷を尻目に競争力格差が開く。韓国勢の強さを謙虚に受け止め、学ぶべきものは学ぶ必要があるのではないか。


 日本国内では目立たないが、世界に目を向けると、韓国企業の台頭ぶりに驚かされる。薄型テレビの2009年の世界シェアは、1位がサムスン電子、LG電子も2位に浮上した。半導体でもパソコンなどに使うDRAMでサムスンが1位だ。


世界シェア上位相次ぐ


 フィンランドのノキアがトップの携帯電話も、2位のサムスン、3位のLGが世界販売を伸ばしている。乗用車は現代自動車が成長市場の中国で2位、インドでも快走する。



 業績も好調だ。サムスン電子の09年の連結営業利益は前の期に比べ9割増の10兆9200億ウォン(約8700億円)。10年3月期の営業利益予想が日本の電機業界で最も大きいパナソニックでさえ1500億円だ。


 サムスンとの収益力の違いは明らかで、09年に円換算で約3300億円の営業利益をあげたLG電子にも及ばない。日本の電機の営業利益見通しは大手9社を束ねても6400億円どまりだ。



 そして、通貨ウォン安の追い風が、日本と競合製品が多い韓国企業にとって輸出市場での価格競争力を強めることになったことに触れた上で韓国企業は「3つの自助努力」をしていると指摘します。



 もっとも、為替効果という外部要因だけで韓国企業が競争力を増したとみるのは間違いだ。3つの自助努力がある。まず不況下での積極投資を含めた大胆かつ迅速な経営判断、次に高付加価値の商品を集中的に投入する販売戦略、そして先進国のみならず、アジアやアフリカも含めた新興・途上国市場をくまなく取り込む地道な海外戦略だ。




 そして人口が日本の半分に満たず、経済規模も日本のおよそ5分の1の韓国は海外市場に活路を求めるしかないと続きます。



 人口が日本の半分に満たず、経済規模も日本のおよそ5分の1の韓国では、企業は海外市場に持続的成長の活路を求めるしかない。現にLG電子の海外従業員は全体の7割近くを占め、LGやサムスン電子の海外売上高比率は8割を超える。


 韓国は国内市場の競争で競合企業が少ないのも特徴だ。1997年のアジア通貨危機を契機に、政府主導で大胆な事業集約を進めた結果である。現在、現代自動車グループの国内シェアは7割を超える。国内の同一業種で多くの企業がしのぎを削る日本と違い、韓国企業は国内で稼いだ利益を研究開発や設備投資、さらには海外市場開拓に回せる。



 韓国の強みは競合企業が少ないことだと結論付け、日本も競合企業集約を計るべきだと社説は結ばれています。




日本も競合企業集約を


 経済産業省によれば、韓国は日本より国全体の市場規模が小さいにもかかわらず、主要企業1社当たりの国内市場規模は、乗用車が日本企業の1.5倍、携帯電話は2.2倍だ。日本では携帯電話でシャープなど主要6社が競うが、韓国はサムスン、LGの2社が圧倒する。


 日本は人口が減り内需縮小が避けられない。競合企業が国内で消耗戦を続け、わずかな余力しか海外に振り向けられないようでは、韓国企業に追いつけない。業種別の再編集約を通じ、規模の利益を通じた集中投資や海外への資源配分を強める経営戦略も、真剣に検討すべきだ。



 目覚ましい躍進を遂げる韓国企業に対して「世界に躍進する韓国企業に学ぼう」と主張するこの日経社説なのでありますが、日経社説が指摘する韓国企業の「3つの自助努力」は以下の3点です。




・不況下での積極投資を含めた大胆かつ迅速な経営判断


・高付加価値の商品を集中的に投入する販売戦略


・先進国のみならず、アジアやアフリカも含めた新興・途上国市場をくまなく取り込む地道な海外戦略



 これらを見習うべき点とした上で、社説はLGやサムスン電子、現代自動車を想定して、日本も競合企業集約を計るべきだとしているわけです。


 ・・・



 この日経社説は経団連的つまりあくまで大企業視点にたった論説であり、大企業の経営戦略としては個々の指摘は正しいながら、韓国経済の抱えている大きな問題点に触れていないところで問題があると思います。


 ・・・


 日本は国家戦略としては「世界に躍進する韓国企業に学」んではなりません。


 確かに日経社説が指摘しているように韓国では産業別にモンスター企業(サムスン電子、現代自動車、LG電子など)が躍進し世界シェア1位、2位を争うほどの勢いで業績を上げています。


 しかしそれらの企業の利益は海外投資や内部留保され、韓国国内の一般家庭にはうまく配分できていません。


 躍進の配当が一部企業で堰き止めされているのです。



 そのことを統計数字で裏付けている3日付け韓国・東亜日報記事から。



投資しない企業、貯金できない家計 経済主体の役割逆転


MARCH 03, 2010 09:35


家計は余裕資金を貯蓄し、企業はこの金を借りて投資を行う経済の「好循環構造」が揺らいでいる。住宅ローンをはじめ負債が足かせとなって貯蓄は減る一方だが、企業は稼いだ資金を銀行に貯めている。「家計は貯蓄、企業は投資」という経済主体の伝統的な役割が逆転している。



2日、韓国銀行によると、昨年末、企業各社による預金銀行の総貯蓄は215兆797億ウォンと、08年末(177兆3364億ウォン)より、37兆7433億ウォン(21.3%)が増加し、史上最大の上げ幅を記録した。特に昨年、企業貯蓄のうち1年以上の長期預金が占める割合は85%に達し、クレジットカードによる不良事態に見舞われた03年(86%)以降最も高かった。稼いだ金を投資せず、長期間銀行に貯めておく企業がそれだけ多くなったことを意味する。


一方、投資の源である家計貯蓄は、依然低迷している。家計が銀行に預金した金は、昨年末現在、360兆5338億ウォンと、08年(326兆6151億ウォン)に比べ、10.4%増に止まった。08年の伸び率(1.5%)に比べ、小幅に減少したものであり、企業貯蓄の伸び率の半分にも達していない。それさえ、家計貯蓄のうち、相当部分は株やファンドに投資した金を、銀行預金にそのまま移したものであり、昨年の家計貯蓄率(税金や利息を除いた仮処分所得のうち、消費後に残った金の比率)は、史上最低水準だった08年(2.5%)と同様だったり、むしろ下落したものと見られる。


家計が貯蓄を増やせないのは、昨年の景気低迷を受け、所得は横ばいなのに、負債は大幅に増えたためだ。昨年の1世帯あたりの平均所得は4131万ウォンと、1年前より60万ウォン(1.5%)伸びたものの、1世帯あたりの負債は4337万ウォンと、209万ウォン(5.1%)も増加した。


専門家らは今年、出口戦略が実施されれば、金利引き上げによる家計の利息負担が増え、家計貯蓄はさらに減るだろうと指摘した。現代(ヒョンデ)経済研究院の兪炳圭(ユ・ビョンギュ)経済研究本部長は、「雇用が増え、家計所得が改善されない状況下で、金利が引き上げられれば、家計貯蓄の減少や企業投資の減少、消費萎縮に繋がる悪循環が現れかねない」と話した。


http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=020000&biid=2010030323978




 企業各社による預金銀行の総貯蓄は215兆797億ウォンと「史上最大の上げ幅を記録」しているにも関わらず、昨年の家計貯蓄率は下落しているわけです。


 記事は「家計が貯蓄を増やせないのは、昨年の景気低迷を受け、所得は横ばいなのに、負債は大幅に増えたため」とありますが、一部大企業が世界的に躍進する中で、一般家計が苦しんでいる深刻な問題が表出しているのです。


 この事実を韓国政府も別のインデックスで裏付けています。


 9日付け日経新聞記事から。 



韓国、貧困層が300万世帯突破 09年、政府対策見直しへ



 韓国で所得が平均の半分未満の貧困層が急増している。2009年は初めて300万世帯の大台を突破し、全世帯の18%に達したことが8日わかった。米金融危機に伴う景気低迷を経て、中流層から脱落した世帯が増えたのが主因とみられる。韓国政府は危機感を強め、貧困層拡大に歯止めをかける対策を抜本的に見直す方針だ。


 韓国統計庁の8日までのまとめによると、経済協力開発機構(OECD)の基準に基づいた昨年の貧困層世帯は前年比13万5000世帯増の305万8000世帯となった。増加幅は07年から08年の2倍近くに広がった。貧困世帯の扶養家族を含めた人口は推定で約700万人にのぼるとみられる。韓国の総人口は約4800万人。


 貧困層が拡大しているのは、08年秋以降の景気後退に伴う雇用情勢の悪化がなお続いているのが最大の要因だ。大企業は外需をテコに好業績を計上しているが、中小・零細企業の景況回復が遅れている。政府は雇用機会の提供や少額融資制度の拡大などを通じ、低所得者層の経済支援に力を入れ始めている。(ソウル=島谷英明)(01:42)


http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20100309ATGM0803208032010.html




 韓国で貧困層が急拡大していることが韓国統計庁の発表で判明しています。


 ・・・


 4日付けの日経社説は「世界に躍進する韓国企業に学ぼう」と主張します。


 この社説は大企業基準の経営戦略にだけとらわれている点で私は同意できません。


 単純に韓国のように企業集約して一部大企業だけが業績を伸ばすとすれば、副作用も大きいと考えるからです。


 このような施策は当然ながら富の偏在が起こります、総体としての健全な国家経済が育ちにくい、それどころか貧富の格差は確実に拡大し、国家としての経済バランスを欠いてしまいます。



 日本は国家戦略としては安易に「世界に躍進する韓国企業に学」んではいけないと思います。



(木走まさみず)



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