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「累進消費税」のススメ

 7日付けの朝日新聞社説。
2010年度予算編成―「公約」より大局を見よ
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
 この論説ですが、タイトルは「2010年度予算編成―「公約」より大局を見よ」と教科書的正論なわけですが、内容はというとご一読いただければ明らかですが、バッサリ前置きを省いてしまえば朝日社説の言いたいことは「消費税増税せよ」という一言であります。

 当該部分を抜粋引用。

■消費税論議を逃げるな
 事業仕分けにはもう一つ「成果」があった。この画期的な手法で予算を削っても、財源の捻出(ねんしゅつ)は民主党が期待したほどではなく、歳出改革に頼るだけでは限界があることがわかった。

 これは、消費税増税などによる税制抜本改革を抜きに財政の構造改革と再建はできないことを物語る。その事実を国民にはっきり示すことができたのも大きな意義だった。

 鳩山首相は「政権の4年間は消費税を上げない」と封印した。だが国債発行が膨れあがった理由は、経済危機への対応やその影響によるものだけでない。超高齢化のなかで雇用と福祉にまたがる生活保障のほころびを直し、子どもを育てやすい社会に変える改革に踏み出すには、恒常的に新たな税源が必要なことは明らかだ。

 日本の財政は、このままでは機能を失う。民主党が掲げてきた「生活第一」の政策は、看板倒れとなる。

 世界経済危機の傷はなお深く、日本の需要不足は35兆円にのぼる。だが、ここでたじろぎ、額を積み上げるだけの財政出動に頼るのでは、自民党政権の失敗を繰り返すだけだ。需要を継ぎ足したり、先食いしたりする対策は、いずれ息切れする。

 大事なのは、民間の消費と投資を引き出し、経済が自律的回復の道を歩めるよう支援することである。
 一生懸命事業仕訳しても財源の捻出は期待したほどの金額にはほど遠かったわけで、「消費税増税などによる税制抜本改革を抜きに財政の構造改革と再建はできないことを物語る」とし、「超高齢化のなかで雇用と福祉にまたがる生活保障のほころびを直し、子どもを育てやすい社会に変える改革に踏み出すには、恒常的に新たな税源が必要なことは明らか」だと結論付けています。

 まあ、最近の朝日論説室の持論とも言って過言ではないでしょう、早く消費税増税を議論せよという論説なわけですが、あいかわらずこの不況時に増税議論をすること自体の消費者マインドに与えるリスクや、低所得者ほど所得比負担が高まる消費税の有する逆進性を、たとえばひとり親世帯の貧困率がOECD諸国の中でも最悪であると政府も認めている現状の日本社会の状況を無視した、朝日新聞の「消費税増税などによる税制抜本改革」論であります。

 11月14日付けの日経新聞記事から。
ひとり親世帯、貧困率5割超 日本、OECD内で最悪

 厚生労働省は13日、国民の経済格差を表す指標の一つの「貧困率」のうち、ひとり親世帯の貧困率が2006年に54.3%だったと発表した。経済協力開発機構(OECD)が算出した00年代半ば時点ではOECD加盟国中最悪。山井和則厚労政務官は「各国の貧困率の推移に大きな変化はなく、現在も日本が最悪」とみている。

 同省は10月、06年の全世帯の貧困率(15.7%)を初公表、今回はより対象を絞って公表した。

 今回の調査は3年に1度実施する国民生活基礎調査から算出。子供がいる現役世帯(世帯主が18歳以上65歳未満)の貧困率は12.2%だった。(01:40)

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20091114AT1G1302713112009.html
 この「貧困率」とは相対的貧困率のことでOECDの定義によれば、「等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯員数の平方根で割った値)が、全国民の等価可処分所得の中央値の半分に満たない国民の割合」、早い話が国民平均所得の半分以下の貧困層の割合なわけです。

 で、ひとり親世帯の貧困率が54.3%、ひとり親世帯の半数以上が平均所得の半分以下の所得しかないという、国際比較すると「日本が最悪」(山井和則厚労政務官)な数字であるわけですが、かつて先進国の中で最も格差が少なく「一億総中流」「最も成功した社会主義国」とまで称されていたこの国の社会の変貌ぶりにはまったく驚かされるわけです。

 ・・・

 政府の景気対策の息切れによる「二番底」の懸念が払拭できないデフレスパイラル直前の現下の日本経済において、朝日新聞の主張する消費税増税による税制抜本改革論議は、タイミング的にもその逆進性からもそのままの議論を持ち出すことは現在は不適当であると私は考えますが、消費税をからめた税制抜本改革に関しては実は私案を持っております。

 納税者番号制度の導入などいくつかの前提を必要としますが、世界初でありましょうが所得別に税率を他段階にする「累進消費税」を導入すれば、逆進性の問題は解消できます。

 7日付け読売新聞朝刊一面記事によれば、政府も「納税者番号制度」の導入検討に前向きです。

所得把握で「納税者番号」…税調が検討部会

 政府税制調査会は6日、社会保障制度などを運営しやすくするため、納税者に番号を付けて所得を把握する「納税者番号制度」の導入を検討する作業部会を、年明けにも設置する方針を固めた。

 作業部会には、国家戦略室のほか、財務、総務、厚生労働省などが参加する。2013年度に新番号制度を導入し、14年1月の利用開始を目指す。

 番号制度は、納税者全員に10ケタ前後の番号を振り、納税者の識別や本人確認を効率的にすることを目指すものだ。

 作業部会は、10年中に番号制度の骨格を決める方向だ。住民基本台帳や基礎年金番号のネットワークを活用する案などが検討対象となる見通しだ。

 番号制度があれば、所得格差を是正するため、所得が低い人に手厚い手当を支給する制度が導入しやすくなる。鳩山内閣は、所得税の減税と給付金の支給を組み合わせた「給付付き税額控除制度」の導入を目指しており、所得の把握に必要となる番号制度の整備を急ぐ。

 また、給与所得と金融所得を合算して課税する仕組みも導入しやすくなる。民主党は衆院選の政権公約(マニフェスト)で、税と社会保険料を一体的に徴収する「歳入庁」構想を掲げており、未納者防止策としても番号制度を活用する考えだ。

 米国やカナダでは、社会保障番号を個人の税務情報の把握に使う「納税者番号」としても活用しており、こうした例も参考にする。

(2009年12月7日03時00分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20091206-OYT1T01087.htm


 「番号制度があれば、所得格差を是正するため、所得が低い人に手厚い手当を支給する制度が導入しやすくなる」のは当然として、この考えを一歩進めて実現しているIT技術と絡めて電子マネーと同様の納税者番号ICカードシステムを国を挙げて導入すればどうでしょうか。

 運用上法的整備等は当然必要になりますが、これは技術的にはまったくハードルはありません。

 国民全員に「納税者番号ICカード」を発行し、電子マネーのように物品購入の際カードで決済してもらいます。

 そのとき所得によって消費税率を変動させます。

 たとえば最低所得者0%から高額所得者20%まで5段階ぐらい累進税率とすればどうでしょう。

 「納税者番号ICカード」を使用しない場合や納税者番号不特定の決済では最高税率を適用すればカード利用は広く普及することでしょう。 

 また「納税者番号ICカード」を導入すれば、所得から消費まで完全にトレーサビリティ・履歴管理が可能となりますので、たとえば高額所得者が低額所得者のカードを利用して「脱税」行為を行うなどのカードの不正利用は厳しく抑制可能でしょう。

 納税者番号ICカードによって納税者の収入と支出のバランスを完全トレースすることにより、「累進消費税」を導入することは技術的には可能です。

 さらに「所得格差を是正するため、所得が低い人に手厚い手当を支給する制度」や「給与所得と金融所得を合算して課税する仕組み」も導入しやすくなるし、「未納者防止策」としても活用可能でしょう。

 このアイディア、「累進消費税」ですが、絵空事(えぞらごと)と一笑に付しても構いませんが、技術的には導入可能ですから、デノミ議論よりも現実性は高いと考えます。

 近い将来、IT技術の進歩により「消費税=逆進性」は古い論説となるかも知れません。

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