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こんなに働いてもどうして幸せになれないのか、どうしたら幸せになれるのか――ベーシックインカムという社会実験

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◆お金を儲けるたびに犯す罪と罪の意識

資本主義の世の中で、お金を儲けようと思えば、100円の物を何とか110円、出来れば120円、あわよくば200円で売りたいと思わない商人はいないだろう。そこには常に多かれ少なかれ人を騙すという気持ちと行動が厳然と存在している。

勤め人でも同じである。少しでも自分をよく見せてよい給料の会社に入りたい。会社員とて自分という商品を高く売りつけたいに違いない。真面目に自分と向き合ったとき、やましさを微塵も感じずに日々労働している人がどれほどいるのだろう。

◆資本主義という下部構造に意識は縛られる――マルクスを知らないことは罪である

下部構造・上部構造は、マルクス主義の基本的なドグマのひとつである。

以下にマルクスの著作から引用するが、簡単に言えば、経済という土台の上に、政治・法律から文化・芸術までの人々の営みが乗っかっており、経済制度の在り方が社会的な意識を決定づけるということであろう。
「わたくしの研究にとって導きの糸として役立った一般的結論は、簡単につぎのように公式化することができる。人間は、その生活の社会的生産において、一定の、必然的な、かれらの意志から独立した諸関係を、つまりかれらの物質的生産諸力の一定の発展段階に対応する生産諸関係を、とりむすぶ。

この生産諸関係の総体は社会の経済的機構を形づくっており、これが現実の土台となって、そのうえに、法律的、政治的上部構造がそびえたち、また、一定の社会的意識諸形態は、この現実の土台に対応している。物質的生活の生産様式は、社会的、政治的、精神的生活諸過程一般を制約する。人間の意識がその存在を規定するのではなくて、逆に、人間の社会的存在がその意識を規定するのである。」*  

マルクス、武田隆夫ら訳『経済学批判』岩波文庫(1956年)13頁
廣松渉(ひろまつ わたる1933-1994)は、「今日ではマルクス的な視角が“学会の共有財産”に繰り込まれるようになっている」と述べている。*

 *廣松渉『今こそマルクスを読み返す』講談社現代新書(1990年)36頁 ジャック・デリダ(1930-2004)の有名なくだりをご紹介しよう。

「マルクスを読まないこと、読みなおさないこと、議論しないことは、つねに過失であることになるだろう。

(中略)

それは今後ますます過失だということになり、ますます理論的、哲学的、政治的責任に対する違反だということになることだろう。『マルクス主義的』な(国家、党、支部、組合、そしてその他の教条生産的な場といった)教条機械やイデオロギー装置が消滅過程にある現在、この責任から眼をそむけるときのわれわれに残されているのは、もはや弁明ではなく逃げ口上(アリバイ)のみとなる。この責任なくして、未来はない。マルクスなくしてはない。マルクスなくして未来はないのである。マルクスの記憶と遺産なくしては。」*

ジャック・デリダ、増田一夫訳『マルクスの亡霊たち――負債状況=国家、喪の作業、新しいインターナショナル――』藤原書店(2007年)43頁

◆社会主義は隷従への道である――ハイエク

さりとて、資本主義を捨てて社会主義に移行することもできない。

あのヴィトゲンシュタインをいとこに持つフリードリヒ・ハイエク(1899-1992)は、今や新自由主義のバイブルとなった『隷従への道』で、計画経済や集産主義(collectivism)は独裁とならざるを得ず、共産主義・社会主義はナチズムやファシズムと同じ全体主義にほかならないと看破している。
「長期にわたる政府の規制・管理がもたらす最も重大な変化は心理的な変化であり、人々の性格が変わっていくことだ。」*  
フリードリヒ・ハイエク、村井章子訳『隷従への道』日経BPクラシックス(2016年)97頁
 人が自由であることの大切さを説いた名著であり、感銘深い本である。  いくつもの翻訳書が出ているが、この日経BPクラシックス版は、訳も新しく、判型・装丁とも知的刺激と古典に親しむ優越感を満たしてくれる。 原題は、The Road to Serfdom で、Serfdomは農奴制。

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