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行政 vs 議会:仁義なきカジノ導入を巡る戦い

ご報告になりますが、10月2日発売の金融系ジャーナル誌「金融財政事情」に「IR推進会議『取りまとめ』に対する疑問点」と題された寄稿論文が掲載されております。以下は掲載文から一部抜粋。

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他にも例えばIR推進会議の「取りまとめ」では次のような法の読み替えも登場する。そもそもIR推進法の起案を行ったIR議連は、我が国に誕生する未来のカジノ産業の統制を既存の行政機関に帰属させず、独立性の高い行政機関によって行わせることを前提として本法を起案した。

このことは、昨年12月8日に衆院内閣委員会で行われた法案審議でもIR議連幹事長の岩屋毅議員の答弁内で確認された事項である。
参議院内閣委員会 平成28年12月08日○衆議院議員(岩屋毅君)我が国において初めてのカジノというゲーミングをたとえ施設の一部であっても認めていく上においては、やはり政府においてもしっかりとした監視、管理の体制をつくってもらう必要があると。今までの公営競技のように、競馬だったら農林省だと、競輪だったら経産省だと、そこが監督していればいいんだというような体制であってはならないと私どもは考えてまいりました。

したがって、法案の中にありますように、いわゆる三条委員会、独立性を持った、強い権能を持ったカジノ監視のための組織をつくるべきだということも中に入れているわけでございます[…]
この点に関しては同様に、昨年12月02日に行われた衆議院内閣委員会での西村康稔議員の委員会答弁においてもその内容が更に確認されているところである。
衆議院内閣委員会 平成28年12月02日○西村(康)議員 まず私から、三条委員会にすべきではないかという点についてお答えを申し上げたいと思います。全く御指摘のとおり、カジノに関する規制を行う機関としては、監督、規制を適切に実施するため、既存の行政機関から独立した新たな行政機関で実施することが適切であり、御指摘のとおりだというふうに考えております。
ところが、IR推進会議はこのように法案審議の過程で示された議会の意思に関しても、独自の解釈論を繰り広げ、そもそも想定されてきたものとは異なる制度案を提案している。IR推進会議は「取りまとめ」において、このカジノに関する規制を行う機関の「独立性」について以下のような主張を行っている。
<制度設計の方向性>カジノ管理委員会は、IR 推進・振興に関係する他の行政機関とは一線を画し、カジノに関する規制を厳格に執行する独立した行政委員会として位置付けるべきである。
上記の記述は一見すると、先に示した西村康稔議員の衆院内閣委員会答弁に即した表現に見える。しかし、昨年の議会において示されていたのは「既存の行政機関から独立した新たな行政機関」による産業の統制である。

一方、IR推進会議はこの答弁内では一切登場していなかった「IR 推進・振興に関係する他の行政機関とは一線を画し」という文言をそこに付加し、オリジナルの答弁が意味するところとは全く異なるものとして読み替えを行っている。そして、そこから更にIR推進会議は、我が国のIR導入政策の主務となる大臣と、その権能に対して次のような論を展開するのである。
・区域の認定主体である「国」については、IR 事業の主目的である「国際競争力の高い魅力ある滞在型観光の実現」と関係の深い単一の主務大臣が認定することとし、具体的には国土交通大臣とすべき・主務大臣は、基本方針等のIR 制度の運営に向けた方針を示し、区域整備計画(IR 事業者が作成する事業基本計画を含む。)の認定、実施協定の認可を行うとともに、①区域整備計画、実施協定が適切に実施されていない場合、②国際的・全国的見地等から必要があると認める場合や複数のIR 区域での調整が必要となる場合には、IR 事業者に対し報告徴収、立入検査、指示等を行うこととすべきである。

また、上記も含め、主務大臣の監督権限として、事業計画の内容の確認、報告徴収、立入検査、指示、区域整備計画の変更指示や区域整備計画認定の取消しを定めるべきである。加えて、区域整備計画の認定及び実施協定の認可は、更新制とすべきである。
繰り返しになるが、そもそも昨年の法案審議時における委員会答弁では、日本のカジノ統制のあり方は「今までの公営競技のように、競馬だったら農林省だと、競輪だったら経産省だと、そこが監督していればいいんだというような体制であってはならない」(岩屋毅議員、平成28年12月08日)とされ、「既存の行政機関から独立した新たな行政機関で実施することが適切」(西村康稔議員、平成28年12月02日)であるとの認識が示されていた。

しかし、今回の「取りまとめ」においてIR推進会議から主張されたのは、既存の行政機関である国土交通省を主務として定め、そこに強力な統制権限を付与した従来型の産業統制の形式であり、これが果たして法案審議時に示された議会の意思を反映したものとなっているのか甚だ疑問である。(続く)

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