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立憲民主党はリベラル政党としての立場を明確にすべき

「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(通称:市民連合)が7日に、立憲民主党、日本共産党、社会民主党の3野党の代表者を都内の会合に招き、衆院選に関する政策要望書を提出、3党の選挙協力も求めた。要望書は、①憲法違反の安保法制を上書きする形での憲法改正とりわけ第9条改正への反対、②特定秘密保護法、安保法制、共謀罪法など安倍政権が行った立憲主義に反する諸法律の白紙撤回、③原発ゼロ実現を目指すことを柱としたものであり、3党もこれを受け入れた。

要望書の内容は、これまでの民進・共産・自由・社民の4野党に対して提出されてきたものと同じであり、極めて妥当なものである。要望書は実質的に3党の共通公約であり、今後は市民連合と3野党間で正式な政策協定書が締結され、市民連合の山口代表と3野党党首が共同で記者会見を行い、3野党間での選挙協力の確認と共に公表されることが望ましい。マスコミの選挙報道がいまだに自民VS希望が中心となっている状況を変え、今回の選挙が3極間の戦い、いや、自民党とその補完勢力VS立憲主義者・リベラル派の戦いであることをもっとアピールしなければならない。そのために市民連合と3野党は結束を深め、知恵を絞るべきである。

気にかかる枝野代表の「リベラル」に対する認識

さて、私が以前から訴えていた形で立憲主義者・リベラル派の共同戦線ができつつある状況はうれしいが、一点気になることがある。ほとんどの立憲民主党の創設メンバーが自らをリベラルと定義しているのだが、私は枝野代表自身の「リベラル」についての認識に疑問を感じざるを得ないのである。枝野氏は認識を改め、立憲民主党を保守政党でないリベラル政党だと明言すべきだ。

枝野氏は「右か左かなんていうイデオロギーの時代じゃないんです。上からか、草の根からか。これが21世紀の本当の対立軸なんです。リベラル新党よくできたと期待を頂いているんです。保守とリベラルがなんで対立するんですか。保守とリベラルは対立概念ではありません(https://twitter.com/CDP2017/status/915592634437181440)。 」と述べている。

そもそも「リベラル」とは何かということになるのだが、結論から先に言えば「社民・リベラル」という言葉があるように、現在の日本においては、経済政策的には社会民主主義、政治的・社会政策的には政治的な自由・個人の権限を尊重する進歩主義として使われていると考えてよいだろう。こうした政策傾向はアメリカの民主党・イギリスの労働党・ドイツの社会民主党・イタリアの民主党、韓国の共に民主党など民主主義国家の二大政党の一翼を担う中道左派政党が共通して持つものである。

中道左派と対峙する中道右派政党は、アメリカの共和党やイギリスの保守党のように、経済政策的には企業活動重視の小さな政府志向(新自由主義的傾向)が強く、政治・社会的な政策では保守的な伝統的価値観を重視する傾向が強い。

「保守‐リベラル」は対立概念。上からか下からかは政策を決定しない

立憲民主党は再分配機能の強化、LGBT差別解消、選択的夫婦別姓の実現を訴えており、経済的には社会民主主義傾向が強く政治・社会的には進歩主義的である。一方で、自民党は自らを保守政党と述べている。安倍政権は経済政策的には極端に新自由主義的だとは言えないが、ホワイトカラー・エグゼンプション(高度プロフェッショナル制度)や裁量労働制の拡大を進めようとしていることは事実であり、社会政策の志向については、政権の中心メンバーの有力な支持団体である日本会議との関係を見ても政権が日本の伝統的価値観を重視しているのは明らかである。

かなり中道色を強くした自民党政策集2017を見ても、LGBT差別解消、選択的夫婦別姓の実現に関しては、それらを目指すとは書かれていない。特に選択的夫婦別姓の実現に関しては否定的な自民党議員が多い(https://mainichi.jp/articles/20151217/k00/00m/010/132000c)のは事実である。以上から、いわゆる「保守」または「右」と「リベラル」または「左」には目指す方向性に大きな差があり、今日においても政治的対立軸として機能しているのは明らかである。

「上からか、草の根からか」、これが21世紀の本当の対立軸と言っているのも根拠がない。上からか草の根からかは、方法論であり政策論ではない。どのような政策志向を持つ人間がどのようして選挙で選ばれるかは、その時の状況によって変化する。草の根運動が原動力となって選ばれた政治家は、オバマ前米大統領のようにリベラルでもありえるし、トランプ現米大統領のように排他主義的ポピュリズムを主張する人物でもありえる。さらに言えば、アメリカにおいて保守的な共和党候補を応援してきた「ティーパーティー運動」はまぎれもなく草の根運動である。

中途半端な立ち位置では失敗する。積極的にリベラルを訴えるべき

立憲民主党が保守政党である自民党と対峙する二大政党の一翼を目指すならば、自らを非保守のリベラル政党だと明確に定義すべきである。民主党および民進党は、党内にリベラル派と保守派が混在し、それが党の性格を不明確にし、衰退につながった。

9月に行われた民進党の代表選において、「今回の代表選の争点は保守とリベラルの対立ではない」と訴えていた議員が少なからずいたが、私にはそのような主張は愚かに思えた。結局は保守かリベラルかで小池百合子氏から踏み絵を踏まされ、党が分裂したのである。中途半端な立ち位置では失敗する。

冷戦後に初当選した進歩主義的な考えを持つ政治家の中には、自分をリベラルと定義することに躊躇する人が多いように思われる。リベラル→左→社会主義と思われ、支持の拡大につながらないことを恐れているのだろう。しかしながら、そのような姿勢は非常に後ろ向きである。そもそも社会主義とは「資本主義の弊害に反対し、より平等で公正な社会を目指す思想、運動、体制(http://blogos.com/article/242327/)」であり、社会民主主義を含む広い概念である。必ずしも市場経済と対立する概念ではない。

自らを民主社会主義者だと述べた、リベラル派のバーニー・サンダース米上院議員が昨年の大統領選であれだけ広い支持を集めたことを思い出してほしい。むしろ、リベラルであることの意義を有権者に対して積極的に訴えていくことが求められているのではないか。

補論:リベラリズムと社会民主主義

リベラリズム(Liberalism)を日本語に訳すと、「自由主義」となる。ややこしいのが自由主義には複数の意味合いがあり、代表的なものに政治的自由主義と経済的自由主義がある。前者は個人の政治的な自由を重視し、政治的な自由を達成するには社会的な公正を実現しなければならず、そのためには政府の経済への介入を認めるという立場である。これは社会自由主義とも言われる。

一方で後者は、経済における意思決定は最大限個人にゆだねるべきであり、できるだけ政府などの組織集団がかかわるべきでないという立場である。小さな政府を標榜する経済的「新自由主義」に親和性が強い。よって同じ言葉で正反対の意味を持つのであるが、日本とアメリカではリベラルは政治的自由主義→社会自由主義の意味合いで使われることが多い。

この理由として、①アメリカでは冷戦時代より社会民主主義を含む社会主義全般にアレルギーに強かったこと、②日本では社会主義を標榜し自衛隊および日米安保に否定的な態度を取っていた左派政党である日本社会党および日本共産党の勢力が冷戦後に低下したことから、社会主義や左派を名乗ると支持が広まらないという認識が広まったことが挙げられ、両国において社会民主主義の代わりにリベラルという言葉が多用されるようになったと考えられよう。

なお、社会民主主義とは社会主義を「資本主義の弊害に反対し、より平等で公正な社会を目指す思想、運動、体制」と考えた場合、その一部に属し、社会的な労働者の貧困、失業などの不平等問題を議会や政府の管理と介入により解決して行こうというものである。

一部では社会主義=共産主義と誤解されているが、社会主義自体は非常に広い概念であり、日本ではかつて冷戦期に野党として存在していた日本社会党・民社党・公明党・日本共産党・社会民主連合はいずれも「社会主義」の実現を目標としていた。一方で社会民主主義は、暴力革命やプロレタリア独裁を否定する点で、旧共産圏諸国の共産党が掲げていたマルクス・レーニン主義と大きく異なることに留意されたい。

リベラリズム(社会自由主義)と社会民主主義はもともと違う文脈から登場した言葉ではあるが、政府の介入による再分配・人権や環境を重視した進歩主義的価値観・国際協調主義を主張するなど多くの点で共通点がある。現在は社民・リベラルという言葉があるように、両者は実質的にほぼ同義語に近くなっているといっても過言ではないだろう。

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