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なぜ甘えた男ほど"不機嫌さ"を表に出すか

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■自分でも「わからない」不機嫌の理由

しかしそのような状態にある当の男性は、自分がなぜ不機嫌になっているか、その理由を具体的に把握できていないことが多い。なぜなら、我々男性は、自分の中にわき起こる感情を言葉にするのが苦手な傾向にあるからです。

先に「女性は自分の経験や感情を言語化することに長けている」と書きましたが、これに関しては圧倒的な男女差があると感じています。

我々は男性に恋バナを取材する機会も多いのですが、彼らはざっくりした事実関係を列挙するだけで、そのときに自分がどう感じたかを語ってくれることはほとんどありません。こちらから質問しても「よくわからない」「細かいことは忘れた」と言うだけです。我が身を振り返っても思い当たるところがあるのですが、感情を逐一言語化してきていないため、記憶として定着しないという側面もあるのではないかと思われます。

端的に言うと多くの男性は、自分がなぜ不機嫌になっているのか、その理由が「わからない」のです。「不機嫌になった理由を説明しない理由」もここに起因していて、「わからない」ことは説明できないわけです。先に述べたように、女性は「男の人も感情やその理由を言語化できる(しようとする)はずだ」と考えがちですが、それは的外れな期待かもしれません。

しかし、ここは少しややこしいのですが、「不機嫌な感情になること」と、「不機嫌な感情を態度に表すこと」は、よく考えると異なる次元にあります。そして、「不機嫌な感情」の理由は多様で捉えどころがありませんが、「不機嫌な態度」の理由はひとつしかありません。

■不機嫌になる=便利な手段

多くの男性が簡単に「不機嫌な態度」を取る理由。それは、「不機嫌な態度」を取ることが自分たちにとって“便利な手段”だからです。

不機嫌になれば要望が通るし、プライドが保てるし、相手が自分に合わせてくれる。そのため問題と向き合わずに済み、体裁を取り繕うためのコストもかからない──。そういう都合のいいことを経験的に知っているため、「なんかムカつく」「なんか不満」「なんかイライラする」といった“言語化できないネガティブな感情”に陥ったとき、男性は不機嫌になるという便利な手段を多用するのです。

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『生き抜くための恋愛相談』より。

これは赤ちゃんが、お腹が空いたときやおむつが汚れているときに泣いて訴えるのと似ています。もちろん赤ちゃんとは異なり、不機嫌になったところで母親がその原因を取り除いてくれるわけではないのですが……。

そんな赤ちゃんのような男性を目の前にした場合、女性はどう対処していけばよいのでしょうか。洋子さんのように、「機嫌が悪いかどうかたずねる」ことは、泣いている赤ちゃんをあやす母親的態度と言えます。それに対する〈別に悪くねーよ〉という彼氏の返答は、まさに赤ちゃん的態度で同じ男性として死にたくなってきますが……いつまでもこのようなやり取りを続けても、洋子さんが先に進めないことは明らかです。では、どうすればよいか。

相談文に戻ると、洋子さんは〈何か地雷を踏んだのか急に不機嫌になることがあります〉と悩んでいます。理由もわからず急に不機嫌になられる経験が重なると、どんどん話題を選ぶようになり、コミュニケーションがとても窮屈になっていくはずです。これでは持続的な関係を築けるわけがありません。

近しい男性とは、なるべく良好な関係を築いていきたいもの。そのためには、洋子さんだけが我慢したり適当にやり過ごしたりする一方向的な対処だけでは難しいのではないかと思われます。

では、お互いが行う双方向的な対処法とは何か。それは「話し合う」という、ごくシンプルな対処法です。

■「なぜ?」と問うても逆効果かも……

しかし、相手は不機嫌になっている赤ちゃんみたいな存在です。「そもそも話し合いにならないから困ってんだよ!」という話だとも思います。

ポイントになるのは、その「話し合い方」です。不機嫌な相手と話し合おうと思うと、洋子さんのように、つい「なぜ不機嫌なのか?」ということを問いかけてしまいがちです。もちろんそれはもっともな問いかけなのですが、先に述べたように、彼はおそらく自分が不機嫌になっている理由がわかりません。

また、「なぜ?」と聞かれると、「理由を問われている」ではなく「何か責められてる!」と捉える傾向が我々男性にはあります。したがって、ますます彼の殻のトゲが固くなってしまう可能性が高いわけです。

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『生き抜くための恋愛相談』より。

そこでオススメしたいのが、「なぜ?」と問う代わりに、「あなたに不機嫌になられると怖い」「私は悲しい」「精神的にしんどい」という気持ちをそのまま伝える、という方法です。

不機嫌になるのは、言語化できないネガティブな感情に陥ったとき、目の前の問題をやり過ごすための便利な手段でした。しかし、それと引き換えに大きな代償を支払っていることに、おそらく本人は気づいていません。その代償とは「相手との信頼関係の悪化」です。そして、その代償を明確に伝えることが、不機嫌な男性へのもっとも効果的な対応になるはずだと、男性であるところの我々は考えています。

つまり、「あなたが不機嫌になるのは自由だけど、あなたに対する信頼メーターはその都度目減りしている。このまま信頼がゼロになってしまったらどうなるか、よく考えてください」ということを、ハッキリ伝えるわけです。

これまで女性から聞いてきた話や、我々自身の経験を振り返ってみても思うことですが、男性は「この人に嫌われることはないだろう」と思っている相手ほど、不機嫌を発動しやすい傾向があります。言ってしまえば、これは完全なる油断と甘えです。そこであえて突き放すように、甘えの行き着く先には「別れ」があるということを伝え、自分が不機嫌な態度を取ることで何を代償にしているのかを自覚させることが効果的だと思うわけです。

■「怒る」と「不機嫌」の違い

ところで、「怒る(おこる)」と「不機嫌になる」は似て非なるものです。「怒る」という行為には、自分の主張を相手にわかるように伝える義務や、伝えたことに対する責任、切り出すことのストレスが伴います(そのような義務や責任を果たしていない「怒る」という行為は、単なる暴力です)。一方の「不機嫌になる」は、そういったものを一切背負わないで、相手に都合良く理解してもらったり、変わってもらったりすることを暗に強制する態度です。

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『生き抜くための恋愛相談』より。

その意味でも不機嫌になることは赤ちゃんが泣いて訴えることに似ているのですが、しかし、赤ちゃんと母親の関係と、大人の男性と女性の関係とでは、決定的に異なる部分がひとつあります。それはほとんどの場合、女性よりも男性のほうが「腕力が強い」ということです。

恋愛や夫婦関係はある種の“密室”であり、そこでカップルや夫婦は互いに生身で相手と対峙します。そのような状況で腕力や体格で勝る側が不機嫌になれば、たとえ直接的な暴力行為を行ったことがない場合でも、相手は恐怖や不安を感じる可能性が極めて高いはずです。

これは失恋ホストなどの際に多くの女性から聞く話なのですが、男性に不機嫌になられたときに女性がイヤな気持ちになるのは、接しづらさや空気の悪さだけでなく、男性があまり感じることのない恐怖や不安といった感情も大きいのではないかと考えられます。

今回の話に対して、「女だってすぐ不機嫌になるだろ!」といった声も聞こえてきそうですが、我々はここで「女性は不機嫌にはならない」ということを言いたいわけではありません。そうではなく、理不尽な理由ですぐに不機嫌な感情になる男性が、なぜ驚くほど簡単に不機嫌な態度に出ることができるのか、その理由を考えたいのです(我が身を振り返りつつ……)。

■「不機嫌になる上司」はもっと厄介

赤ちゃんがすぐ不機嫌になって泣いて訴えるのは、異常に気づかれなければ生きていけないという、いわば生存を賭した「甘え」と言えます。それに対して、気に入らないことがあるとすぐ不機嫌になる男性の態度は、腕力差を拠りどころにした「甘え」だと見ることができるでしょう。

すぐ不機嫌になれてしまう男性は、どこかで腕力差や体格差を自覚し、利用しているのです(ちなみにこれは、「すぐに不機嫌になる上司」にも同じことが言えます。この場合は、腕力ではなく権力や立場の差が非対称になります。「すぐに不機嫌になる男性の上司」は、女性にとっては両方の要素があるので本当に厄介な存在と言えます。そこからさらに踏み込んで考えると、恋人や妻に対してすぐ不機嫌になる男性の一部には、「女よりも男のほうが偉い」という差別的な価値観を、なんの疑問もなく持っている人がいるように思います)。

すぐ不機嫌になる男性に対して恐怖や悲しさを伝えることは、「この状況をどうするかはあなた自身で考えて」と突き放すことであり、「相手を尊重する大人になってください」という成長を要求することでもあります。

もちろん、洋子さんが相手の不機嫌に悩むのは、基本的にその人のことが大切だからだと思います。大切な相手と良い関係を築くためには、ときに緊張感も必要だということで、ひとつキリッと決めてみてください!

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桃山商事 清田隆之/森田雄飛
恋バナ収集ユニット「桃山商事」のメンバー。2001年結成。恋愛の悩みに耳を傾ける「失恋ホスト」を始め、これまで1000人以上の男女から見聞きした話をコラムやラジオで紹介している。「日経ウーマンオンライン」で連載している恋愛相談が人気を博すほか、「anan」「Numero TOKYO」「FRaU」「毎日小学生新聞」「精神看護」などに寄稿。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)、清田隆之名義の著書に『大学1年生の歩き方』(左右社/トミヤマユキコとの共著)がある。

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(桃山商事)

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