アメリカのラスベガスで銃乱射事件。事件後に自殺したパドック容疑者と同居していた女性がフィリピンからアメリカに戻ってきてロサンゼルスで事情聴取を受けるなど連日新しいニュースがありますが、社説をまとめてみました。
アメリカでは乱射事件が起きるたびに銃規制をめぐる賛否の議論をするが出てきますが、またか、という感じのようです。それでも殺傷能力を高めるバンプストックという、合法に入手できる装置の取り締まりに向けた議論が始まっているということです。
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(Associated Press)
Washington Postの社説はThe worst kind of American exceptionalism(アメリカの特殊性の最悪の形)の中で、1日にラスベガスのカントリーミュージックの音楽祭の会場で起きた事件について、トランプ大統領が「きわめて邪悪な犯行だ(an act of pure evil)」と非難した一方で銃規制について触れなかったと指摘しています。
2012年のコネチカット州サンディフック小学校(児童ら26人死亡)、2012年のコロラド州オーロラの映画館(12人死亡)、2016年のサウスカロライナ州チャールストンの教会(9人死亡)、2017年のフロリダ州オランドのナイトクラブ(49人死亡)でそれぞれ起きた銃乱射事件を念頭に「誰が代償を払うのか?小学校の児童、映画鑑賞者、教会の参拝者、ナイトクラブのパーティを楽しむ人たち。そしてカントリーミュージックの愛好者だ」と報じています。
「アメリカという国と政治家は、防止策に着手するまでいったいいくつの銃乱射による虐殺が必要なのか自らに問いかけなければならない」と糾弾。「アメリカの特殊性は、政治的な意思とリーダーの欠如だ」と厳しく締めくくっています。
Los Angeles Timesの社説はThe slaughter in Las Vegas is all too familiar yet Americans refuse to stop it(ラスベガスの銃乱射はあまりになじみ深いものだが、アメリカは止めようとしない)の中で、1日に大惨事が起きたとしながら「歴史から学ぶとすれば、具体策には結びつかないだろう」と伝えています。
軍事にも使われるライフル銃を使い、罪のない人々を殺したことについて「自己防衛のためではなく、戦闘下でもなく、今のところ明確な目的もなく、単にはっきりしない怒り、不満、あるいは疎外感を満足させるためだ」といいます。
そのうえで、銃規制の賛否の議論について「まるでパブロフの国家儀式のようになってきた(almost Pavlovian national ritual)」と批判。
「銃規制に反対し、政治に強大な影響力を持つNRA=全米ライフル協会は、軍事用のライフルが狩りやスポーツ射撃に必要だと主張しているが、1日、こうした武器が本来目的に使われるのをみな目撃した。短時間に大勢を殺すことだ」としています。
Gun Violence Archiveによりますと、犯人を除く4人以上が殺された乱射事件はこの275日の間に73件起きたということです。今のアメリカを「武装して、危険(armed and dangerous)
」と結んでいます。
New York Postは社説After Las Vegas; looking for answers(ラスベガスのあと。答えを求めて)の中で、心あるアメリカ人は「こうした攻撃を止める方法はあるだろうか?」と自らに問いかけているはずだといいます。
豊富な資金力を持ち銃規制に反対するNRAは現在、◼︎銃の消音器(silencer)の購入を容易にする法案と、◼︎銃を他人に見えないように携帯することを禁止する州(ニューヨークなど)がほかの州で取得した携行許可を認めるよう義務化する法案を推進しています。
ラスベガスでは、半自動式の銃を連射できるようにして殺傷能力を高めるバンプストックという、合法に入手できる装置を用いて違法な自動ライフル銃とほぼ同じ能力を持つようになったということです。
模倣犯が出てくるのは時間の問題で、バンプストックを取り締まるべきだと主張します。
銃規制だけで問題が解決するわけではないと認めつつ、「常識的な措置をあきらめる理由にはならない」と締めくくっています。
記事
- 2017年10月06日 10:43