- 2017年10月03日 09:15
なぜ"怒りっぽい人"は嫌われ、孤立するか
2/2■それ以来、昇進はストップ
最近では、上司が部下に対して癇癪を起こしたり怒鳴りつけたりすると、「パワーハラスメント」と言われる恐れもある。昔は「あの部長、怒りっぽい」で済んでいたことが、会社全体の問題にまで発展することもあるのだ。
「極端な例ですが、あるメーカーの拠点長は、とにかく部下の抗弁を聞かない人でした。ミスをしたときには皆の前で一方的に大声で問いただし、言い訳は一切認めない。耐えられなくなった部下たちが一致団結して、出社をボイコットしちゃったんです。彼は拠点長の役職を解かれ、それ以来、昇進はストップ。本人は、自分がそこまで部下たちを追い詰めていたとは全く気づいていなかったそうです。この手の問題は、表面化する段階ではたいてい手遅れになりがちなのも特徴ですね。関係修復は、まず容易ではありません」(諌山氏)
感情のマネジメントができる人でなければ、人事的にも評価されない。部下とのトラブル、上司や同僚とのトラブルを、会社側がいちいち尻ぬぐいしていられないからだ。
「自己責任で対処できるだけのヒューマンスキルが重要視されている時代だと思います」(諌山氏)
■早まった退職で退職金の一部を逃す
また、出世するしないにかかわらず、イライラを撒き散らし続けて周りから孤立するようでは、組織の一員としては死に体。
「外資系企業の人事でよく使われるのが『アクセシブル』という言葉。これは他者から見たときのアクセスのしやすさ、つまり、取っ付きやすさを指す言葉です。当然ながら、怒りっぽい人、常にイライラしている人というのはアクセシブルではない。つまり、社内の人が寄り付かず、自ずと情報が入ってこない不利な立場を強いられることになります。自ら部下や他部署に何か頼み事をした場合でも、そもそも好かれていないので、優先順位が下げられてしまい、十分な協力が得られなくなるリスクもあるでしょう」(村上氏)
実際、ある外資系ソリューション企業では数年前、次のようなケースがあったという。
「当時、財務部長のポストにあった人物がやはり気難しい性格で、周囲となかなか折り合えずにいました。やがて会社が吸収合併されることになったのですが、この際、適切なプロセスさえ踏めば、管理職には退職前に年収分の割増金が支給されるというパッケージが用意されていたんです。ところが彼は、最後までごねて上とやり合った末に、半ば強引に退職を決断。そういったパッケージに関する詳しい説明を受ける機会もなく、正規のプロセスを経ずに出ていくことになりました。当然、割増金もなし。周囲からちゃんと情報を得られていれば、早まった退職でこうした損をすることもなかったはずなのですが……」(村上氏)
諌山氏は、怒りっぽいことで人望がない人を「グリップ力が弱い」と指摘する。
「部下や同僚の心をつかむ力が小さい、ということです。グリップ力が弱い人には、みんな、心をさらけ出して話そうとしません。知らないうちにお山の大将になっていることが多いんです。みんなが知っている情報を一人だけ知らないということが起こります。ある企業の係長が、部下が消費者金融に借金をしているのを把握しておらず、大問題になったという事例もあります」
■「叱咤」で現場が復活した例も
怒りっぽいと、社内のコミュニケーションにも問題が生じる。しかし、誰かに苦言を呈さなければならないときもある。そういったときには「人に対して怒るのではなく、問題自体を解決するスタンスで臨むべき」と村上氏は言う。
「これは某大手販売店での話です。当時、営業部の成績が極端に下がってしまっていて、部長からは連日のように各店舗に強い叱咤が飛んでいました。しかし、頭ごなしの叱咤はときに罵倒に近く、現場の士気は下がるばかりで、成績は一向に上がらなかった。それを見かねた新任の役員がある日その部長に、『部下を怒鳴って問題解決すれば苦労はしない。好調店を分析して、そのやり方を展開すること』と指示したところ、数カ月のうちにみるみる業績が回復。まさに、視点を変えたことで成功したケースだといえます」
その役員は後に、他社でトップに就き、存分にリーダーシップを発揮しているという。
イライラは、人間関係の構築を阻み、ビジネスパーソンとしての信頼を失う。肝に銘じて過ごしたい。
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諌山敏明アチーブ人財育成代表。住友生命保険相互会社で人材開発、人材派遣会社で経営管理部長兼人事部長を努める。2012年独立。著書に『男性管理職のための女性部下マネジメント』(幻冬舎)。 村上賀厚
ノリ・コーポレーション代表。フォードジャパン人事課長、ロイタージャパン人事本部長などを経て2006年独立。著書に『元・外資系人事部長が見た 要領よく出世する人』(東洋経済新報社)。
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(友清 哲 写真=Getty Images)
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