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イラン版「傭兵会社」の暗躍、IS後に激化する“もう一つの戦争” - 佐々木伸 (星槎大学客員教授)

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 シリアにおける過激派組織「イスラム国」(IS)の壊滅作戦が大詰めを迎え、内戦も急速に勢いを失う中、“もう一つの戦争”が激化の徴候を見せ始めている。中東最強の軍事大国イスラエルと、シリアに恒久的な軍事拠点を築こうとするレバノンのシーア派武装組織「ヒズボラ」との対決だ。

2つの戦線の脅威

 9月7日の未明、イスラエル空軍機がシリア中部ハマ県の軍事施設をミサイル攻撃した。施設は化学兵器工場だったと見られている。イスラエルはこれまでにもシリア内戦の最中、シリア政府軍の軍事施設や武器庫を再三にわたって空爆してきた。最新の兵器がヒズボラの手に渡るのを阻止するのが狙いだ。

 7日の攻撃もこうした懸念を反映するものだが、イスラエルのネタニヤフ首相は最近、イランが「レバノンとシリアに精密誘導ミサイルの製造工場を建設しようとしており、両国を前線にしようと図っている」と非難、その危機感を露わにした。イスラエルはその後も、空軍機がレバノン南部で示威飛行を繰り返す一方、イスラエル領空を侵犯した無人機を迎撃ミサイルで撃墜した。

 イスラエルが懸念を深刻化させているのは、ロシア軍やヒズボラ、シリア政府軍の猛攻で反体制派が弱体化した結果、シリア内戦が鎮静化し、ISもその壊滅が迫ったことで、ヒズボラが戦闘の相手を本来の敵であるイスラエルに転換し始めてくることが予想されるからだ。

 元々、イスラエルへの抵抗運動としてレバノンに誕生したヒズボラは後援者であるイランの指示を受け、アサド政権支援のため、シリアでの戦闘に常時、8000人の戦闘員を送り込み、崩壊瀬戸際だったアサド政権の立て直しに大きな力を発揮した。シリア派遣の戦闘員は延べ数万人に上った。

 ヒズボラはこの数年間のシリア内戦への介入で、戦闘の実戦経験を積み、本格的な軍事組織に変貌した。イスラエルが恐れる所以である。イスラエルはヒズボラの背後にいるイランが、内戦の終了、ISの一掃後もヒズボラ軍団をシリアに駐留させ続け、シリア領からイスラエルに向け南下させるかもしれない、と憂慮している。

 そうなれば、イスラエルは元々のレバノン戦線と、新たなシリア戦線に対峙しなければならず、国家安全保障上の深刻な事態となる。だからこそ、イスラエルはヒズボラに新型ミサイルや化学兵器が渡らないよう、空爆してはその芽を摘んでいるわけだ。しかし、こうした取り組みにもかかわらず、ヒズボラはレバノンにすでに10万発を超えるロケット弾を保有しているといわている。

 イスラエルは2006年、ヒズボラとレバノン南部を中心に1カ月に及び交戦、レバノン側に1000人、イスラエル側にも170人の死者が出た。次に両者の間に衝突が起きれば、前回を凌ぐ戦争となり、イスラエル側にも甚大な被害が出るのは必至。イスラエルはすでに、レバノン南部にヒズボラの浸透を防ぐ防御壁を建設するなど戦争準備を開始している。

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