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ネットフリックスは何がすごい?過熱する「オンライン動画配信サービス」競争 日本の放送業界が抱えるジレンマ - 塚越健司(拓殖大学非常勤講師)

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 前回は「世界共通のインターネット」という理念が崩れかけていることを論じた(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10455)。ネットに限定されず、国家間や国内の市民同士の争いなど世界中で生じている昨今、壊すべき旧来の理念と、守るべき理念の区別もまた重要だ。

 産業界においても、これまでとは一線を画する現象が見受けられる。IT企業等を筆頭とする新たな産業が既存産業と競争関係にあるのが現代社会だ。この争いは技術発展が期待できる一方、既存産業の衰退やその構造転換が、多くの問題をもたらすこともある。今回は競争が過熱する「オンライン動画配信サービス」と日本の放送業界の関係について考察したい。

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(iStock/Daviles)

オンライン動画配信の黒船「ネットフリックス」

 カドカワの調査によれば、日本における有料の動画配信サービスの利用者は推定1100万人とされる。その多くはAmazonに年会費を払うことで他のサービスと併用できる「Amazonプライム・ビデオ」であることが推測されるが、とはいえ日本においても有料の、お金を払ってでもコンテンツを観ようというユーザーは増えている。

 オンライン動画配信サービスは主に月額数百円~高くとも2千円を越えない程度を支払うことで、好みの動画がスマホやタブレット、パソコン等で見放題となるサービスであり、ここ数年急速に普及している。動画以外では音楽業界にも配信サービスは幅広く普及しており、「spotify」や「Apple Music」、「Google Play Music」等海外のサービスの他、日本でも「LINE MUSIC」や「AWA」をはじめとして、数多くのサービスが存在する。ユーザーはどのサービスに金銭を支払うかを選択中であり、今後さらに競争が過熱することが予想される業界でもある。

 オンライン動画配信の大手は、上述の「Amazonプライム・ビデオ」や「Hulu」、そして筆者が注目する「ネットフリックス(Netflix)」があり、本稿はネットフリックスについて論じたい。ネットフリックスは1997年にアメリカで設立し、当初はオンラインでDVDレンタルを行っていた(ネットの注文を受けて郵送でDVDを顧客宅に配達するサービス)が、その後2007年に現在のような動画配信をメインとし、2015年に日本にも進出。

当時は動画配信界の「黒船」とメディアが騒ぎ立てたのも記憶に新しい。またアメリカを含めた全世界ユーザーが2017年4月の段階で1億人を突破していることもあり、今後も成長が期待されている。またアメリカの若者820人への調査では、他の動画配信サービスと比較してオリジナルコンテンツの質ではネットフリックスが圧倒的な支持を得ている

 ネットフリックスの強みはオリジナルコンテンツもさることながら、その独自の「レコメンド機能」にある。視聴者がどの動画をどの程度の時間視聴したか、など詳細なデータをネットフリックスが分析することで、膨大な動画の中から視聴者の好みに合わせた動画をオススメしてくれるというものだ。

 さらにネットフリックスはユーザーがストーリー展開を選択できる実験的なアニメーションの配信も行っている。これはユーザーの好みに合わせた内容を配信できるだけに留まらず、ユーザーの好みを把握し、よりユーザーの嗜好を知る「大量のデータ」が獲得できる。

 なぜユーザーの好みのデータが必要なのかといえば、それはネットフリックスが抱えるユーザー数にある。世界190以上の国と地域で運営されすでにユーザーは1億人を越え、アメリカ国外のユーザーも増加しているネットフリックス。世界中のユーザーの好みを把握し、それらに合わせたコンテンツづくりを行うことで、結果的にさらなるユーザーの獲得を目指していることが推測される。

桁外れのコンテンツ配信費用

 ネットフリックスは世界中の企業と契約してコンテンツを収集・配信しているが、近年ではオリジナル作品の制作も行っている。「ハウス・オブ・カード――野望の階段」、「ストレンジャー・シングス――未知の世界」やポン・ジュノ監督作品の映画「オクジャ」などのほか、日本ではフジテレビと共同制作した『テラスハウス』、又吉直樹原作の『火花』などがオリジナル作品として制作されている。

 人気獲得のためにもキラーコンテンツは必要だ。ネットフリックスはあるインタビューの中で、2018年にはコンテンツ配信に70億ドルをかけると答えている。そしてすでに2016年は50億ドルをかけており、2017年は60億ドルをかけるという。そのうちの大多数は他社コンテンツを配信するためのライセンス料であり、オリジナル作品のコンテンツ制作費の比率は少ないというが、それでもこの金額は驚くべきものだ。

 比較として、日本のテレビ局の番組制作費を挙げておきたい。2016年度の在京民放5局(日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)の番組制作費の合計は4154億6400万円だ(各局の決算資料の合計で、売上等とは異なる。詳しくはリンク先の記事を参照)。5局すべてを合わせた金額を大きく引き離すネットフリックスの金額の高さが理解されるだろう。

 確かに、世界中にユーザーを抱えるネットフリックスであればその規模が必要なのかもしれない。とはいえその規模が増せば増すほど、ただでさえインターネットやSNSによってその影響力の低下が指摘されるテレビ局は苦境に立たされるだろう。

 芸人の明石家さんまは、ネットフリックスで動画を制作することからネットフリックスのネットCMに登場し、自らの葛藤を口にする。彼はテレビで育ち、テレビに恩義を感じており、本来ネットフリックスはライバルであると述べた上で、しかしコンテンツの制作費がテレビと比べて高いとも述べている。

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