- 2017年10月03日 10:42
男子生徒の自殺で都初のいじめ調査が実施 「認定は困難」の結果に遺族は再調査を求める
2/2調査部会「法のいじめの定義は広範すぎる」
報告書には「その他の検討事項」の中に、「いじめの定義を巡る混乱」という項目がある。いじめ対策推進法による定義は「いじめ」を広く捉えている。しかし、調査部会としては、いじめを広く認定することをしなかった。
「関係性が存在する以上、今回、当該生徒が同じクラスの生徒や同じ部活動の生徒の言動から、心理的影響を受けていたことは事実である。その結果、当該生徒が、不快感や寂しさを感じたことがあったであろうことは否定しない。だが、いじめ問題に対する指導を行うに際して、学校、教職員がその端緒として活用する定義としては有用であるとしても、少なくとも、いじめ防止対策推進法に基づき重大事態の調査が行われるに当たってはこれをいじめと捉えることは広範にすぎる」
この件について、会見で調査部会長の坂田仰・日本女子大教授は、「遺書がない中で、亡くなった生徒の気持ちもわからず、法の定義をそのまま当てはめるには限界がある。ある種のいじめと捉えることもできるが、加害側とされる生徒の意図を考慮せずに判断していいのか」と答えた。
いじめの定義については、原発事故をきかっけに横浜市へ自主避難して来た子どものへのいじめ調査でも問題になっていた。16年11月に公表された報告書では、全体としてはいじめを認定しているが、被害児童から加害児童になされた金銭授受は認定しなかった。これは過去のいじめ行為と同じようなことを回避するための行為だがいじめと認めなかった。しかし、その後、岡田優子教育長は「金銭授受もいじめの一部と認識する」と謝罪したことがある。
遺族側「法の趣旨はいじめの防止。被害者の心情を理解することが必要」
遺族側の代理人は「調査部会が示したいじめの定義であっても、今回の件はいじめと判断できるのではないか。法の趣旨はいじめの防止。被害者の心情を理解することが必要だが、その観点でいじめの判断がなされなければならない」と述べた。また、遺族の母親は調査委の判断について、「こじつけとしか思えない」と答えていた。

今回の調査を終えて、坂田部会長は「遺族の主張を前提にいじめの調査を行って来たが、いじめの存在は確認できなかった。我々は調査結果について自信を持っています」と話した。ただし、坂田部会長は「調査の限界」という言葉を何度も繰り返した。調査委は「第三者委員会」と呼ばれることがあるが、学校や都教委から完全に独立しているわけではない。また、自殺の原因がいじめではないとしたら、その背景に踏み込んでいいのかと悩んだことが報告書にも書かれている。
一方、遺族は報告書の内容を批判する。「息子はTwitterに心身の苦痛を感じたことを書いているし、息子が心身の苦痛を家で母に話していた会話は事実です。事実を報告書に書いてないことは、偏った不公平な書き方です」と、報告書を批判した。「中立・公平と言っていたのに、生徒や先生に聞き取りをした内容だけを元に判断している、息子は理由もなく、勝手に死んだわけではない」と話していた。
遺族側代理人は「いじめが、学級や学校といった集団の中で日々の積み重ねで構築され、孤独感や孤立感といった感情を日に日に蓄積させるものという視点が欠けている」として、文科省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」に基づいて、再調査を要望した。
なお、調査部会と遺族とのコミュニケーションが円滑ではなく、信頼関係が作り上げられなかった点があったともされている。教育委の担当者が遺族に対して怒鳴ったのではないかと記者から指摘された。担当者は「遺族に対して感情が高ぶったところがあったのは事実で、遺族にはすでに謝罪した。かなり長い時間にわたり、私なりに丁寧に寄り添ったつもりで、努力はしてきた。しかし、一回でもあってはならないこと」といい、大枠で事実を認めた。
姉もコメント発表「遺書がなければ結局認めないということなのか」
また、亡くなった生徒の姉もコメントを書いたメモを発表した。合唱コンクールの件については「個人的な発言を聞き一方的に気分が悪くなったというのは普通に気分が悪くなるでしょう。一生懸命やっててぶち壊されたようにも思うんだから。本人だけを責めてないからいじめではないという判断で、それですべて片付けられそうだ」(原文ママ)と懸念を表明した。
また、いじめの判断について「精神的に嫌なことをされていても遺書がなければ結局認めないということなのか。それでいじめと判断されないのはおかしい。いじめの範囲を広げないってなんで決めるのか。部会の人たちのものさしではかるのはやめてほしい」(同)などとしていた。



