- 2017年10月02日 08:47
【読書感想】東大から刑務所へ
2/2堀江:人間ってすぐ忘れる生き物なんですよ。だって僕が長野刑務所からシャバに出てきたのは4年前なのに、僕が元犯罪者だってことを多くの人が忘れてるんじゃないですか。
井川:特捜警察がガサ入れしたときは、日本中のマスコミが「ホリエモン=極悪犯罪者」と喧伝したものだった。なのに今や、たかぽんはゴールデンタイムのバラエティ番組に出演したり、朝の「サンデー・ジャポン」で普通にコメンテーターをやってるもんね。
堀江:人間の記憶ほどいい加減なものはないんですよ。だったら、みんなの記憶なんて全部塗りつぶして、新しいイメージで上書きしてしまえばいい。そのうち「堀江って昔、何かすげえ罪で捕まったらしいぞ」みたいな言説ですら、「えっ、そんなのウソでしょ。都市伝説でしょ。フェイクニュースだよ」となりますから。ググれカスと言いたいけど、ウィキペディアすら調べようとしない横着者が世の中にはあまりにも多い。ということは、負の歴史なんてあっという間に忘れ去られるんです。
井川:仮釈放された直後の2017年2月、私の著書『熔ける』が幻冬舎で文庫化されたのよ。文庫本をお袋に見せたら「えーっ! せっかく世間があんたのことを忘れかけてるのに、なんで本なんて出すのよ」と眉をひそめる。私はこう言い返した。
「いやいや、逆だよ、お袋。このままだったら、オレはただの犯罪者として、記憶され、その記憶さえもやがてみんなの頭の片隅から消えてしまう。こうやってもう1回本を出してもらえれば、『なんだか知らないけどおもしろそうなヤツだな』と思われて、良くも悪くも人々の記憶に残るから」
実刑を食らうような罪で服役していた人が、けっこう短期間で忘れられる一方で、刑法では罪にならない不倫タレントはずっとそれで干され続ける、というのは、理不尽な感じもします。
イメージ商売だから、しょうがないところはあるんでしょうけど。
堀江さんの話を読んでいると、警察や検察は「万人に平等で公正」ではなさそうなんですよ。
彼らが「本気」になりさえすれば、「出る杭」は、あっさり打たれてしまう。
韓国で前大統領が逮捕され、「あまりにも世論に動かされやすい韓国の司法」を問題視する人が多かったのですが、日本でも、司法は世論や警察の顔色をうかがってしまうのです。「検察のメンツ」なんてものもありますし。
堀江:僕の場合、井川さんが逮捕されたときとは全然状況が違うんですよ。なにしろ、特捜検察から何をどこまで立件されるのか全然予想がつかなかった。「これを違法とするならば、何でも違法にできちゃうじゃねえか」という焦りがあった。いろんな事件をデッチ上げられて、何回逮捕されるかもわかりませんでした。
弁護士からは「強制わいせつとか、全然別の事件で攻められるかもしれない」と言われました。実際、「堀江貴文に関係する700人の女性リスト」が作られたらしい。井川:なんだそりゃ。
堀江:あからさまな嫌がらせですよね。特捜検察は性犯罪なんて捜査する部署じゃなくて、大規模な経済事件とか政治家がらみの疑獄なんかを扱う部署です。僕が全然捜査に協力しなくて徹底抗戦してたから、とにかくできるだけ逮捕・拘留機関を長引かせたかったんだと思う。淫行捜査までやって、あわよくばヘンな女から被害届でも出させたかったのでしょう。
井川:「堀江貴文に関係する700人の女性リスト」は実際に見せられたの?
堀江:いや、もちろん現物は見ていません。あとから聞いた話によると、携帯電話の番号とか連絡先とか名刺とか、いろんなものが700人分もリストアップされていたらしい。誰とヤッたとか、こいつとはヤッてないとか、そんなことまで調べられていた。本筋とはまったく関係ない話です。
井川:「700人リスト」の中に18歳未満の未成年が1人でも交じっていたら、淫行で追起訴されてたね。
ジェームス三木さんの『春の歩み』みたいなのを検察が税金を使ってつくってくれるわけです。
バカバカしい、とは思うのだけれど、一度目を付けた相手には、ここまでやるのか……と驚かされます。
しかしこれ、本当なのかな……堀江さんも「現物は見ていない」らしいし……
この手の「別件逮捕」まで駆使されたら、何も出ない人のほうが少ないではなかろうか。
読んでいると、「この人たちも、懲りないな……」と苦笑するのと同時に、刑務所は、人間を「改心」させる場所じゃないのだな、ということも思い知らされるのです。
よく塀の中で我慢できていたな、と感心するのだけれど、出てしまえば元通り。
むしろ、お金があれば、窃盗なんてやらなかった、あるいは、幸福であれば麻薬に手を出さなかった、という人のほうが、出所してからどうにかしようと思っても、その先の生活が行き詰まって再犯を繰り返してしまうのかもしれません。
こういう人たちの存在は、やっぱり「面白い」のだけどさ、僕にとっては。

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