- 2017年09月26日 09:15
リフレ派も批判「黒田日銀」の異常な出口
1/2■自民党が選挙に勝てば続投か
日銀総裁の黒田東彦は来春で5年の任期を迎え、あと半年に迫る「総裁人事」の行方に注目が集まっている。衆院解散、総選挙に向けて動き出した首相の安倍晋三が、選挙で勝利し、政権基盤が安定化すれば、日銀人事を決めるのは名実ともに安倍ということになる。
市場では、すでに安倍は、黒田を続投させるのではないか、との観測が広がっている。その舞台裏と異次元金融緩和を導入した黒田日銀の課題を点検する。
「企業は、名目賃金が上がった分を製品価格に転嫁することに慎重だ」
「足元の物価や賃金の上昇が、現行政策を導入した時の期待に比べてやや遅れているのは事実」
金融政策決定会合を終えた9月21日の記者会見で、「この1年間で最大の誤算は何か」と問われたことへの黒田の答えだ。黒田の口ぶりは、どことなく投げやりで、表情には疲れがにじんでいた。
日銀は今年7月の「展望レポート」でデフレ脱却の目標として掲げてきた消費者物価上昇率2%の達成時期を「19年度ごろ」と予想し、再び先送りした。デフレ脱却への道筋は視界不良のままだ。
画像を見る9月21日なかなか上昇してこない物価に黒田総裁の表情もさえない。(写真=ロイター/アフロ)
■異次元金融緩和の「敗北宣言」
黒田は、国債の大量購入を軸とした異次元金融緩和で、物価が持続的に下落するデフレからの脱却を目指した。年間80兆円という巨額の国債購入で、円の供給量を爆発的に増大させた上、マイナス金利まで導入した。その狙いは、「円」という通貨への過剰な信頼を破壊し、モノやサービスへの欲望を取り戻させることだ。
別の言い方をすれば、モノと円の関係で考えると、100円のモノが102円出さないと買えなくなるということは、同じモノを買うのに多くの円が必要となるわけで、円という通貨への信頼の低下はインフレを意味する。
首相の安倍は、第二次安倍政権がスタートさせる際、こうしたリフレ派の考え方を大胆に導入することを宣言、2013年春にリフレを推進できる日銀総裁として黒田を選んだ。2%という目標は米欧にならったもので、人々の物価観を2%にアンカーすること、要するに人々が将来にわたって、物価は毎年2%くらい上がり続けると予想するようになることを狙った。
しかし、物価目標の達成は繰り返し先送りされており、黒田は、デフレ脱却を実現できていない。
その背景について日銀は1年前に公表した「総括的な検証」で「適合的な予想形成」という分析を示した。過去のデフレに引きずられて企業や消費者が行動するため、異次元金融緩和を実施しても人々の物価観を転換できなかったという説明だ。
これは、異次元金融緩和の「敗北宣言」と言ってよいだろう。
■効果薄れた異次元金融緩和をめぐる対立
総括的な検証と合わせて黒田は、異次元金融緩和に10年物国債の利回りをゼロ近辺に誘導する長期金利の目標を導入した。伝統的な金融政策では中央銀行が操作するのは、短期金利で長期金利は操作できないと考えられていた。その点で長期金利を操作しようという政策も異例の政策なのだ。
これは事実上、日銀のさらなる国債購入に縛りをかけるものと言える。この枠組みでは、日銀の国債購入は、政府の国債発行の増減と表裏一体となり、金融政策は事実上、政府の財政政策に従属する形になった。
長期金利の行方を左右する最大のファクターは、政府が発行する「10年物国債」の量だ。政府が財政再建を進めて、国債の発行量を絞れば、長期金利は下落傾向を示し、財政の拡大を進めれば、長期金利は上昇傾向を描く。結局、長期金利をゼロ近辺に誘導するという目標は、政府の国債発行の動きに連動せざるを得ない。
銀行の収益にダメージを与えるマイナス金利の深掘りや、株価の価格形成にひずみを与えるという批判の多いETF(上場投資信託)の買い入れ拡大も難しいだろう。総括的な検証以降は、国債の購入規模も徐々に縮小しており、公式な宣言はないものの、異次元緩和は事実上、打ち止めとなり、出口に向けて舵が切られつつある。
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