最近、斬新な広告2つを相次いで目にしました。一つは紙の新聞への全面広告で驚かせたアウトドアブランドのL.L.Beanのもの、もう一つはiPhone8とXの発表に合わせた家具・インテリアのIKEAの”便乗”キャンペーンです。こっちはネット上での拡散をメインにしたものと思われます。
まず、L.L.Bean。これは先週金曜日の22日にNYタイムズに折り込まれました。これを報じたADWEEKによるとこんな感じです。
上部に会社名があって、下部に大きく「アウトサイダーでいよう」とあります。アウトサイダーって、普通は「部外者」という意味ですから、ちょっと違和感を感じさせます。
空白スペースの間にちょぼちょぼと小さな単語が散在し、つなぎ合わせると「Just bribg this outside」となります。「これを外に持って行って」という指示です。
そこで、部屋から外へ出ます。すると、あら不思議。ページ全体に文章が現れます。画像を見る
始まりは「Welcome to the outside」で始まるL.L.Beanのメッセージです。L.L.Beanのホームページに掲載されている内容を拡充したもので、拙訳で要約するとこんな感じ。
「外へ出よう。パスポートも招待状も会員権も要らないんだから。玄関から出るだけで到着する。家の中にいたんじゃ『余所者(outsiders)』だけど、外に出ればみんな一緒になれる。『外にいる人(Outsider)』でいよう」。これで最初に感じた”違和感”解消、という仕掛けです。
これを折り込んだNYタイムズは自身の記事で「L.L.Beanが新しいことに挑戦することを厭わないことを買い物客にアピールするものだ」と解説しています。
なお、この仕掛けはphotochromic inkで印刷したことにあり、このインクは紫外線に当たった時だけ文字が浮き出るということのようです。
さて、つい先日の新型iPhone発表に便乗したIKEAの方は5枚の写真です。ネット上では相当広く拡散していますが、これを制作したスウェーデンの広告代理店ACNEのページから借用します。写っているのはIKEAの卓上スタンドRIGGADで、2年前に発売された商品ですが、土台部分に端末を乗せるだけで充電できるワイヤレス充電装置を組み込んでいるのが特徴です。まず1枚目はこれ。
Appleファンならニヤリとされたのではないでしょうか。このコピーは2010年にiPhone4が発表された時のキャッチコピー<This changes everything. Again.>をもじったものです。この卓上ランプはなんでも充電chargeしますよ、と。
で、2枚目。
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この<One more thing>というのは、かってスティーブ・ジョブスが好んで使ったというフレーズです。プレゼンの終盤でこう言って新製品を説明したんですね。で、それを使って、1枚目の充電機能に加えて、「でもランプでもある」とPRしてます。
そして3枚目はこれまた有名な<Think Different>というフレーズをもじって<Link Different>ときました。Think~の方はジョブスが再登板した1997年のアップルコンピューターのキャンペーンで登場し、大々的に拡散しました。Link~というのはもちろんワイヤレス充電ということです。
ご丁寧に、アップルコンピューターのトレードマークである齧りかけりんごを配しています。
4枚目は直感的にはわかりにくい印象ですが、Juiceには「充電」という意味があるのに引っ掛けたのでしょう。下に見えるのはスタンドの無線充電マークです。
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そして最後は、iPhone所有者ならご存知、音声での問いかけになんでも答えてくれるSiriへの質問です。「どのランプを買うべきか?」
ここまで、RIGGADのワヤレス充電について笑わせながらiPhoneユーザーに印象付ければ、Siriならずとも、「Riggad、便利かも」と思うことでしょう。その意味では、ちょっと悪ノリ風ではあるものの、キャンペーンとしては大成功と言えるのかもしれません。
ちなみに、IKEAはこの手の便乗キャンペーンがお好きなようで、この春に高級ブランドのバレンシアガがIKEAの買い物バッグにそっくりなバッグを2145ドルで発売した時に、すかさず二つ並べて、「こっちは99セント」というパロディ風の”比較広告”でも話題になったとのことです。これもACNEの制作でした。