- 2017年09月25日 09:15
トヨタはマツダのロータリーを発電に使う
2/2■電源コンセントはなく、給油口しかない
【安井】日産の「ノートe-POWER」がすごく売れているのも、電気自動車っぽく走れるけれど、大きなエンジンで発電するハイブリッドだからでしょう。電源コンセントはなく、給油口しかない。
【清水】シリーズハイブリッドなので、あれは売れるんです。「充電しないEVです」と言ったから売れたのです。
【安井】ロータリーエンジンを使えばもっと効率がいいものが作れるということですか。
【清水】しかも静かです。僕はそう思っていますけどね。だから多様な電動化を進めようとしているトヨタはマツダのいいものをどうやって使うかが課題なのです。マツダをトヨタが単に助けたんのではなくて、トヨタはマツダとの提携で、もっと面白いクルマをマツダのユニークな技術を使えば、作れるだろうと考えているに違いないと思います。
■EV、EVと言ったほうが株価は上がるが……
【安井】モーターと電池さえあれば、だれでもEVが作れるという話は少し短絡的だと思えます。
【清水】そういう分野もあるにはあるでしょう。小さなベンチャーが趣味のクルマをつくることはあり得るでしょう。でも世界中の市場で受け入れられるようなEVはつくれそうにないと思います。
画像を見る清水和夫氏(右)と安井孝之氏(左)
【安井】街中でパーソナルモビリティとして使ったり、カーシェアリングしたりするEVという市場には参入が相次ぐ可能性がありますね。ゼロエミッションが求められる観光地で乗るようなクルマもひょっとしたらEVになるかもしれない。
【清水】そういうのはトヨタ、日産、ホンダがつくるのではなくて、ヤマハなどのオートバイメーカーが作ったほうがいいかもしれない。自動運転にして、お年寄りでも乗れるようにしたら売れるでしょう。
■「電動化」といっても定義はあいまい
【安井】その分野でメルセデスとトヨタが真っ向勝負するという話にはなりませんね。
【清水】まったく違います。僕は、自動産業にとっての敵は世論かもしれないと思います。トランプ大統領を生み出したアメリカの世論みたいに、EVで自動車業界に革命をもたらし、EVが市場を席巻するぞという世論に自動車産業が追い立てられて、道を誤らないかと危惧しています。
【安井】スウェーデンのボルボが2019年以降に発売するクルマはすべて電動化する、と発表して話題になりましたが、これも中身をよく見ないと間違います。すべてEVなのかというとそうではなくて、内燃機関のエンジンも搭載しているマイルドハイブリッドやプラグインハイブリッドも「電動化」の中に入っています。「電動化」といっても定義はあいまいで、情報を受け取る方も誤解しているのが現実ではないでしょうか。ブームのようにフワフワとした雰囲気のもとで、みんなが動き始めて、その潮流に乗らないと、「おまえらはダメだ」とマーケットからたたかれてしまいかねないという危惧がありますね。
【清水】そうです。EV、EVと言ったほうが株価は上がる。そうすると株主は喜びます。19世紀末に自動車が誕生して以来の大変革を迎えているとは思います。しかし将来のクルマの姿はそんなに単純なものではありません。EVでも様々な形態が存在し、FCVもあり、場合によってはディーゼルもまた姿を変える、という風に多様性が増していくと思います。
■次の100年は多様なクルマが併存する
▼対談を振り返って(安井孝之)
「EVをつくるのは簡単」「EV時代にはクルマはコモディティー(汎用品)になる」という俗説が横行しているが、このインタビューシリーズでは「EVをつくるのは難しい」と結論付けた。日産の開発担当の坂本秀行副社長は「コモディティーにはならない。自動車メーカーとして(レイアウトの変更など)やれることが多くなり、むしと違いが出てくる」と言う。EVはスマホやIT家電のように主要部品を組み立てれば一定の品質が確保できる代物ではない。クルマメーカーとして蓄積したクルマ作りのノウハウが生きる商品なのだ。
日産のEV、新型リーフの航続距離が400キロに延び、「EVは普通のクルマになった」と注目された。だが依然として充電時間の短縮はままならない。急速充電だとおよそ1時間。先を急ぎがちな旅先で「ゆっくり充電しましょう」となるだろうか。自宅で充電し、買い物や週末の近場でのレジャーなら400キロで間に合うが、長期休暇で遠出となるとやや心もとない。新型リーフ発売後、受注は予想を上回る4000台の受注を達成したという。クルマの価格に見合った消費者の満足度が今後も維持できるかが注目点だ。
EVには航続距離のほか充電時間、劣化問題、電池材料のリチウムの価格高騰など懸念材料がなお残っている。また火力発電で発電した電気を充電してEVを走らせれば、全体として排出するCO2は必ずしも減らない。クルマの普及を考えるとき、「Well to Wheel(油田からクルマまで)」で議論する必要がある。
未来のクルマ社会はEVがもちろん伸びてゆくが、インタビューの2回目以降で議論したように燃料電池車(FVC)、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車(PHV)、クリーンなガソリン車・ディーゼル車などが共存していくに違いない。先進国、新興国、途上国のマーケットが一種類のパワートレインでカバーされるとは思えない。市場特性や用途に見合った適材適所のクルマが開発されていくのだろう。
ユーザーにとってはわくわくする未来である。だがメーカーがグローバルに市場を拡大しようとするとき、一点突破型では難しくなる。EVから内燃機関までを幅広く研究する必要に、メーカーは迫られる厳しい未来になるに違いない。
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清水 和夫(しみず・かずお)モータージャーナリスト
1954年生まれ。武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年に自動車ラリーにデビューして以来、プロレースドライバーとして、国内外の耐久レースに出場。同時にモータージャーナリストとして、自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで活躍している。日本自動車研究所客員研究員。
安井 孝之(やすい・たかゆき)
Gemba Lab代表、フリー記者、元朝日新聞編集委員
1957年生まれ。早稲田大学理工学部卒業、東京工業大学大学院修了。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京経済部次長を経て、2005年編集委員。17年Gemba Lab株式会社を設立、フリー記者に。日本記者クラブ企画委員。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。
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