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PRのコンサルタントが経営者に初めてお会いする際に普通に悩む事

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(写真:アフロ)

仕事柄、企業の経営者の方から自社PRや宣伝方法について相談を受ける。初めてお会いする前に、事前に調べられる範囲のホームページなどの公開情報で、その方の企業についてできるだけ調べる。

私が重点的にチェックするのは、その方の企業の【規模】と【製品・サービス】の2つである。

なぜ企業の【規模】を調べるかの理由は、その企業にとって、最適(必要かつ最小限)な「PR体制」について、だいたいの想像をつけるためである 。もちろん業種・業態によって特殊な事情はあるが、たとえば従業人が10人規模の企業であれば、広報PR専任者を社内に2名持つことは、ほぼ100%無理だ。やらないほうが良い。

仮に「作業」としてのPR活動を行う人はいたとしても、「戦略」「実行」の全てを内部化するために専任者を配置することも現実的ではないかもしれない。その場合、誰が「戦略」「実行」を担当するのか?ということが、トップの方とお会いした時の最初の課題となる。

私は「戦略」はトップの方が考えることをお勧めする。その「戦略」を考える「お手伝い」を私はする。ただ、戦略立案を「丸投げ」されるのはお断りする。私は自分で戦略PRや広報活動に関する知識や経験はあるが、その企業が属する特定の業種や、その企業ならではの独自の業態のプロではない。「丸投げ」をお断りすることは、ある種の弁えと誠実さだと思っている。

「戦略はトップの方が考えて(決定して)ください。お手伝いはします。」

では「実行」は誰がするのか?戦略が決まった後の「実行チーム」をどうするかが次に課題となる。私は「「実行」についてはある程度お任せください」と言う。私ひとりで全部の施策を「実行」できませんが、その分野では私よりも専門性の高い仲間と沢山つながっています。「ハブ」になって「実行」(プロデュース)に関しては全て責任を持ちますと答える。

最期に「作業」の部分の話になる。この「作業」というのは広報PR活動において重要であるが、私はあまり自分に任せないことを提案する。「見栄えのよいパワポ」「掲載誌のクリッピング」「リサーチ資料作成」・・・どうしてもと言われれば、あえてお断りはしないが、その「作業」自体は正直なところ「私自身」が全て最初から最後まで行うわけではない。周囲のサポートしてくれる人にお願いしている。その部分の「マージン」は、しっかり頂かねばならない。「戦略」「実行」とは直接関係ない「社内会議のための資料作成」「保存のための資料」などの「作業」は、あえて私に依頼しない方が「お得」だと本当に思うので、そのように提案をする。

一方、【製品・サービス】ついて、事前に調べる時にどこに注目するかというと、その方の「企業」と「商品・サービス」との関係性についてである。具体的にはいくつもの商品ライン(ブランド)を持ち、 常に新製品が販売開始される(PRしないといけない)ビジネスモデルの企業なのか?「単品・単サービス」を提供する企業で、「企業名」と同じ「商品・サービス」を持ち、「ブランド名=企業名」として認知されている企業なのか?という具合に着目する。

「広報活動」や「戦略PR」といっても、根本のところでクライアント側と依頼をうける側とでは、最初のうちは考え方が大きく違うことがよくある。最初段階のイメージが違うと、その後の戦略も施策も後々溝が深まってしまう。先方の思う「課題」の多くは「メディアにもっと取り上げられたい」「どうすればメディアにとりあげられるのか?」という趣旨のことが多いことは、当然のことだと思うので、すでに織り込み済みなのだが、「メディア露出」を考える際に「自社と商材との関係性」をよく考えて欲しいと、いつも思うのだ。

話を分かりやすくするため、あえて有名企業を例に挙げる。

世界を代表する飲料メーカーであるコカ・コーラ社はコカ・コーラという商品(ブランド)を販売している。同時に、コカ・コーラ ゼロという別ラインの商品(ブランド)もある。一方で、「コーラ」とは呼ばれない他の「清涼飲料水」も多く販売している。そもそも消費者からはコカ・コーラ社の製品とは認識されていない商品も多くある。アパレルの「ワールド」という企業も同様のタイプの企業である。1社1ブランドではなく、創業以来、多ブランド戦略を展開し、社名ではなく「ブランド」を前面に出している。「ワールド」という企業の商品だとは知らないまま、ワールドの持つ「ブランド」を好み、購入している顧客は多い。

反対に、レッドブル社が提供する「レッドブル」という飲料がある。エナジードリンクとしてのシェア、売上ともに世界1位であり、日本を含め、世界160か国以上で提供されている。異なる缶の色や、サイズ、また「シュガーフリー」といった商品ラインを持つが、基本的に「レッドブル社」の販売する商品は「レッドブル」のみである。2005年に初めて日本で販売され、当初は外国人が多く出入りするクラブやバー限定で販売された。

その後、首都圏の一部のコンビニエンスストア等で販売され始め 、徐々に販路を拡大し、ガソリンスタンドなどでも提供されるようになった。グローバルにおいてはモータースポーツなどのスポーツイベントの協賛など、大規模な宣伝活動を通じて積極的なメディア露出を行なう一方、日本国内に進出する際には、一過性の「ブーム」にならないよう慎重に広報・マーケティング戦略が練られ、BMW・ミニをPR用に改造されたサンプリングカーの後部に巨大な「レッドブル缶」のオブジェを設置し、都心部やイベント会場などでサンプリング配布を断続的に行った。

両極端なタイプを、あえて「コカ・コーラ型」「レッドブル型」と呼ぶとする。

コカ・コーラ型の場合、常に何らかの商品ブランドが、PR露出され続けていることが大切である。それは新商品かもしれないし、いくつかある商品ラインナップの中の何らかの販促活動かもしれない。次々と新しい「弾(広報的なトピック)」を撃ち続けることによって、常に消費者からの注目を浴び続ける必要がある。

ベースメントとしての「企業イメージ」「企業ブランド」をボトムアップのための企業PR的な活動ももちろん欠かせないが、コミュニケーションの中心は、どうしても個々の「商品・サービス」が、常に「飽きられない」「忘れられない」「記憶される」ため、新規プロモーションを行い、メディア露出の(小さな)「山」を作り続けていくことになる。その「山」の頂点を繋ぎ合わせていくことで、「企業」と「商品・サービス」全体の相乗効果で広報力(知名度や信頼度)が高まり、大きく右肩上がりのトレンドを創りあげていくことができる。

言い換えれば、Aという商品がいくら露出しても、Bという商品が露出しなければ、当然、Aは売れるがBは売れない。全体としての相乗効果は生まれにくくなる。また10の商品ライン(ブランド)のうち、どれにフォーカスするか(どれにフォーカスしないか)という大胆な経営戦略的判断も重要となる。

一方で、レッドブル型の企業の場合、注意しなくてはならないのは、メディア露出によるブランドの「消費と毀損」だ。先の例と異なり「1企業=1ブランド」なので、あまり早急にメディア露出を急ぐと、良くても一過性の「ブーム」で終わってしまいかねない。瞬間的な「売れ過ぎ」はむしろマーケティング戦略上の失敗につながることがある。

まだ商品のライフサイクルにおける「導入期」においては、商品ブランド自体が確立していないことも多く、良い意味での試行錯誤が必要であり、場合によってはプロダクト戦略、プレイスメント戦略、プライス戦略などを複合的に再検討しなくてはならないことがある。このような状態にも関わらず、一気にメディア露出をしてしまうと、その後のマーケティング戦略の見直しが柔軟に行えなくなる可能性がある。

商品・サービスの導入期、あるいは、売り上げが停滞した際の「底入れ」において、「メディアに取り上げて欲しい」と思う一方で、少し冷静にメディアとの適切な距離感を考えてみることが、「大きな広報戦略」(経営者的視点での広報戦略)となる。

瞬間的なメディア露出の獲得(アテンションの獲得)は、「それなりの手段と対策」を講じればそれほど難しくはない。ただ「メディア露出」にも様々なタイプがある。本当に有用な「メディア露出」なのかということを考える(本当の意味での「広報戦略」を考える)ことは、意外と忘れがちだ。

既存のマスメディアとネットメディア、さらにSNSなどのソーシャルメディアや企業のオウンメディアが複雑にからみ合う時代だからこそ、自社のメディア露出のあり方について、長期的(全体的)なコミュニケーションデザインが重要です。戦略なき「メディア露出」が本来、その企業が大切にすべき「ブランド・エッセンス」「企業価値」を「消費」「毀損」してしまわないようにしないといけない。

このようなPR領域のことを率直に言葉にしたところで、一般の方たちにとってニュースバリューがあるのかどうか疑わしいが、専門分野について書けという要望も若干ある。企業経営に携わる方たちが、広報戦略を考える上で参考にして頂ければと思う。

※Yahoo!ニュースからの転載

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