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電子出版ははたして儲かるのか?

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結論から書けば、今後よほどのことがない限りは儲からないと思います。「トントンにする」だけなら、不可能ではないと考えますが、投下資金と回収のバランスを取るまでには、しばらく時間がかかるでしょう。しかしそれでも、出版界は、電子出版に活路を見いだすしかないというのが俺の考えです。

電子出版といえば、今、俺の周囲では多くの会社や個人作家が参入機会をうかがっていますが、そちらのほうが儲かるから、参入したがっているというわけでもないようです。「紙の本」はジリ貧の一途なので、このまま座して死を待つくらいなら、いっそ電子出版に進出して、儲かるかどうかは後で考えたい、というのが実情に近いのではないでしょうか。溺れる者藁をもつかむ、です。

「紙マンガ」の現状はいよいよすごいことになっております。多くのマンガ雑誌は、かりに単行本がそこそこ出ていても、雑誌の赤字が単行本の利益を大幅に上回っているという状態がもう数年は続いているわけです。雑誌を出さなければ単行本は出せないのだが、雑誌の赤が単行本の利益を食い尽くす現状が、これ以上続くはずはありません。

そこから、作家に原稿料を払ってでも、雑誌はコストのかからない電子媒体にして、とにかく原稿を溜めて紙の単行本を出そう、という流れになっているわけです。ここ3年ほど、いろいろな版元が無料のWEB雑誌を始めているのは、そういうことだと思います。今後の出版界は電子雑誌中心に移行して、制作コストを極限まで抑えたうえで、従来通り紙の単行本、広告収入、作品の権利ビジネスで利益を出す方向にシフトするのは必至の情勢になっていると思います。

問題は、はたしてそれで儲かるのかということですが、これは冒頭にも書いたとおり、現状の出版社の規模を維持した状態で儲けを出すのは、非常に困難だろうと言うしかありません。

以下、作家個人の原稿料で考えてみたいと思います。出版社にとってはコストであって収入とは違いますが、原稿料はどのみち出版社が支払う金額ですので、これで考えるのが作家や読者にとってはわかりやすいと思います。

単純計算で恐縮なんですが、たとえば週刊連載マンガの原稿料で考えてみましょう。雑誌連載マンガでは、多くの場合、新人はページ8000円くらいから始まり、ベテラン作家になって20000円くらいになるというのが相場だと言われております(これが高いか安いかは、今は問題にしません)。話を単純にするために、中間をとって14000円を一般的なマンガ原稿料だということにしましょう。

そして、一回の連載ぶんをストーリー物で週に16ページだとしましょう。月刊誌はここでは除外して考えます。すると、商業マンガ家の月あたりの原稿料収入は、

16×14000×4=896000

ということになります(一ヶ月を4週とした場合。所得税の源泉徴収等は考慮していない)。商業マンガ作家が週刊連載を一本もったときの原稿料収入は、だいたい月90万円になるわけです。一見高そうに見えますが、ここから仕事場の家賃を出したり、アシスタントに支払うお金をだすわけですから、手取りは作家にほとんど残らないか、アシを数人雇えば最悪、赤字になります。従ってこれは、はじめから単行本の印税収入を当て込んだ額ということですね。

これを電子出版で出したとしたら、どのくらいの収入になるのでしょうか。これも、話を思い切り単純化して考えてみます。たとえば紙雑誌で16ページ相当を連載一回分とした場合、ケータイコミックだと30円から50円くらいでしょう。iPadのような大画面の配信はどうなるのかまだわかりませんが、多くの人にさほど抵抗がない価格帯が16ページ50円から80円といったところではないかと思います。

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