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【読書感想】外国人労働者をどう受け入れるか―「安い労働力」から「戦力」へ

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 実習生を招いている企業経営者に本音を聞くと、「外国人を雇用したいわけではない。日本人を募集しても集まらないから、仕方なく実習制度を使っている」と答える人がほとんどだ。では、外国人技能実習生を雇用してみて、どうだったのか、と聞いてみると、この問いにも異口同音で「非常に大変だ」と答える。

 従業員30人前後のある工場では、中国人実習生とベトナム人実習生を受け入れている。実習生を雇用して、大変だったことを教えて欲しいと言うと、企業名を伏せる約束で、教えてくれた。

「いちばん困ったのは、トイレを壊されることですよ」

 日本人であれば、当たり前の水洗トイレだが、その使い方がわからない。流してはいけないものを流して、詰まらせたり、トイレットペーパーを持ち帰っては駄目だといくら言っても、持ち帰ってしまったりするため、しばらく頭を悩ませたという。そのうち実習生たちに掃除をさせるようにしたら、きれいに使うようになっていった。

「日本語が全然できないため、仕事を教えられないんですよ」

 日本語によるコミュニケーションができない、という苦労談も多かった。そもそも実習生は、来日する半年前ぐらいから、日本語を学んで、準備しなければならないことになっている。しかし、実際は、仲介業者に高額の斡旋料を払い、来日する実習生としての資格を「買う」ため、日本語の授業は「受けたことになっている」にすぎない。そのため、来日後、日本語で作業の段取りなどを教えたくても、教えられず、身振り手振りを駆使し、場合によっては、通訳をお願いしなければならないこともあるという。

「逃げられそうになったこともある。企業にとっては最悪の事態だ」

 どれだけ処遇をしっかりとしても、逃げ出す可能性はあるという。

 僕の家から比較的近いところにあるハウステンボスでも、東アジアからの観光客の増加に伴って、トイレの汚れが目立つようになった、という話を聞いたことがあります。

 わざと汚しているわけではなくて、習慣や使用法の違いに慣れていないだけなのでしょうけど、たかがトイレ、されどトイレですよね。

 そのくらいのこと、文化の違いがあれば仕方がない、と外野から言うのは簡単なのだけれど、そういうちょっとした溝が、大きな断絶につながっていくのかもしれません。

 雇っている側、あるいは現場で指導する人からすれば、そういう事態に直面するたびに、「なんで自分がこんな面倒なことを……」というネガティブな感情にとらわれやすい。

 その一方で、外国人労働者をきちんと処遇し、働きやすい職場をつくることによって、業績をあげている企業が少なからずあることも、この本のなかでは紹介されています。

 実際のところ、日本以外の国での外国人労働者は、どのように扱われているのかよく知らないので、「日本はとくにひどい」のか「外国人労働者や移民に対しては、このくらいが平均」なのかは、これを読んだだけではわかりません。

 しかしながら、前述した「奴隷のような扱いを受けている実習生」などは、他国云々以前の問題ですよね。

 アジアでも、日本だけが突出して豊かだった時代はもう終わっているのですから、現在のひどい方の労働環境を知ると「いくら少子化対策として移民や外国人労働者の受け入れを緩和しても、こんな国にわざわざ来たがる人がいるのか?」とすら思えてきます。

 外国人労働者として来日したバングラデシュ人が立ち上げた建設請負会社「シャプラ・インターナショナル」のモバーク・ホシェーン社長と、専務としてともに会社を支えている妻の宣子さんのことが、この本のなかで紹介されています。 

 宣子さんを密着取材していたある夏の夕暮れ、普通の会社では見かけないであろう場面に遭遇した。

 社員たちが仕事を終えて後片付けに戻ってきた時のことだった。子どもの夏休みの宿題を持って宣子さんのところに相談に訪れたのは、パキスタン人の男性だ。夏休みの絵日記の宿題をどうしたらいいのか、子どもと一緒に悩んでいたらしい。

「夏休みの宿題、これどうしたらいいのか。子どもに教えたくて」

 宣子さんは、笑いながら受け取り、鉛筆で見本を書き始めた。

「これは、過酷だねえ。難しいよね。朝顔の観察日記だよね」

 日本では夏休みの宿題の定番の一つだ。宣子さんは手近な紙に朝顔の絵を描きながら、「これと同じようにね、毎日、天気を書いたり、花が咲いたとか、見たままを書くんだよ」と教えている。その説明をうなずきながら聞いていた彼は、しばらくすると「ありがとうございました!先生、ありがとう」と嬉しそうに見本の絵を手に、ほっとした表情を見せた。

 宣子さんも「はい、はい。宿題終わりましたね」と笑顔を返している。宣子さんは、彼らにとって雇用主であると同時に、日本の母であり、先生でもあるのかもしれない。その場面に遭遇した時、外国人を支えるというのは、こういうことなんだろうと感じさせられた。

 会社は「働く場所」に違いないが、日本で安心して働いてもらうためには、仕事をしてもらって終わりではない。同居する家族の暮らしも支えなければならないのだ。宣子さんは、「子どもの宿題を一緒に考えること」が安心して働ける社会の土台につながると知っているからこそ、嫌な顔一つせず、絵日記の書き方を丁寧に教えているのだろう。

 社員の子どもの宿題のやりかたまで面倒をみるのは、もちろん「義務」ではないはずです。

 でも、そういうところから、文化の違いへのストレスというのは、蓄積されていくような気がします。

 日本の家族主義的な会社経営というのは、いまの日本の若者には敬遠されがちなのだけれど、孤立しがちな外国人労働者にとっては、それが「働きやすさ」につながることもあるのです。

 こういうのが、日本の「おもてなし」なのかな、なんて思うんですよ。

 大きな問題点と、未来への希望の芽と。

 ちゃんと説明すればわかるし、改善してくれるのに、それを面倒くさがりながら「あいつらは何もわかっていない」って決めつけて、壁をつくってしまいがちなんですよね。

 日本人だけがそう、というわけではないのだけれど。

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