外国人労働者をどう受け入れるか―「安い労働力」から「戦力」へ (NHK出版新書 525)
- 作者: NHK取材班
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2017/08/08
- メディア: 新書
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外国人労働者をどう受け入れるか 「安い労働力」から「戦力」へ NHK出版新書
- 作者: NHK取材班
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2017/08/14
- メディア: Kindle版
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内容(「BOOK」データベースより)
日本で働く外国人の数が、二〇一六年に初めて一〇〇万人を超えた。飲食業や建設業をはじめ、低賃金・重労働の業種ほど日本人が集まらず、外国人の労働力なくしては、もはや日本の産業は成り立たない。一方で、日本人の雇用が奪われるのではないかと懸念する声もある。外国人たちの悲惨な「奴隷労働」の実態や、識者や企業への取材をふまえて、これからの「共存」のあり方について多角的な視点でまとめる。
NHK「無縁社会」「ワーキングプア」を制作したスタッフが、日本での「外国人労働者」の現状を取材したものです。
「実習生」という名目で来日し、ひどい環境で低賃金の長時間労働をさせられている、というのは再三採りあげられてきたはずなのですが、それでも、制度を悪用するヤツはいるのです。
というか、人間、自分が生き残るためには、他人をここまでないがしろにできるのか、と愕然としてしまいます。
外国人用のシェルターに避難してきた「元実習生」の話。
周さんは農家で大葉を収穫する業務にあたっていました。その作業というのは、輪ゴムで大葉を五枚重ねるというものなんですね。それを二つ、つまり10枚の大葉を束ねて報酬は2円、という計算でやっていたんです。つまり出来高制です。その賃金のあり方は、大問題ですよね。それに加えて、経営者のセクハラ問題もあったんです」
「10枚の大葉を二つに束ねて2円というと、時給にすると、どのぐらいですか」
「おおよそ1時間の作業量を換算して、時給300円です」
そもそも出来高制の賃金設定は、技能実習制度では認められていない。「実習」している、つまり技術を習得している、という建前では、出来不出来で賃金に差が出てしまうのは、あり得ないからだ。
しかも、時給に換算すると300円という低い水準は、さらにあり得ないことだ。周さんが働いていた農家は茨城県だったが、茨城県の最低賃金747円(2015年10月時点)を400円以上、下回る額だ。
周さんは、この作業で手が荒れ、両手が真っ赤に腫れあがっていたそうです。
縫製工場で働いていた28歳(当時)の女性、楊さんもようやく逃げ出してきた一人だ。それも実習先からではない。強制帰国させられそうになって、寸前で空港から逃げ出してきたのだ。
楊さんは、2012年5月に来日し、縫製工場で実習生として働き始めた。しかし、日々の残業が多いだけではんく、休みがほとんどない過酷な勤務状況だった。元旦を含めて、一年に10日間ほどしか休めず、長時間労働を強いられてきた。それでも一年目の基本給は月6万円で、残業代が時給400円。二年目の基本給は7万円で、残業代は時給500円。三年目は基本給7.4万円で、残業代は時給700円だった。
楊さんは縫製工場のアイロンがけ担当で、「忙しいときは、12時間以上立っていた」そうです。
現在、上海など中国の都市部では、日本で働くのと労働条件はほとんど変わらないくらいだそうなのですが、中国の田舎に住んでいて、学歴もなく、都市では仕事がない、という人たちから、業者がお金をとり、「保証金」をかけて日本に「実習生」として送り込んでくるそうです。
多額の「保証金」は、途中で仕事をやめて帰国すると没収されてしまうため、ひどい労働環境やセクハラ、パワハラでも逃げ出しにくくなっているのです。
これって、「奴隷」じゃないのか?
この2017年にも、自分が使う側であれば、奴隷的な労働を許容し、反抗を許さない、という人は、少なからず存在するのです。
そして、こういう環境でつくられた「安い服」を日本人は着ているんですよね。
こうして労働者を犠牲にして「コストダウン」しないと、価格競争に勝てなくなってしまっている。
でも、そこまでして、ブラック労働でつくられた安い製品を買う、というのは、なんだかとても虚しい。
取材班は、外国人労働者を雇用している側のこんな話も紹介しています。