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新型iPhone、なぜいつも品薄なのか

――筆者のクリストファー・ミムズはWSJハイテク担当コラムニスト

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 米アップルが今月12日の新製品発表会で明らかにしたニュースの中で最も消費者をがっかりさせたのは、新製品の中で一番人気が高い「iPhone X」(アイフォーン・テン)は10月終わりまで事前予約ができず、11月にならなければ出荷も始まらないということだった。アナリストは出荷開始後も供給不足を予想している。香港の販売業者はiPhone Xの入荷直後は300ドルから400ドル(約3万3000円から4万4000円)上乗せして販売する予定だ。

 人気のある最新の電子機器が供給不足に陥ることは珍しくないが、消費者は、ハードウエアメーカーは過去の経験から、欲しい人がいる場所に欲しいタイミングで製品を届けられるのではないかと思うだろう。特に、業務運営の達人として名を上げたティム・クック氏が最高経営責任者(CEO)を務めるアップルならできるだろうと。

 供給不足は目的のためなら手段を選ばないマキャベリ的な販売促進のための芝居なのか。それとも計算に基づくリスク管理なのだろうか。複雑な電子機器を何百万台も製造し、世界中に流通させるのは本当に難しいのか。実際はそのどれもが正しいようだ。

冷徹な計算

 企業がいち早く製品を購入する消費者を待たせることは珍しくない。サムスン・リサーチ・アメリカに2009年から2015年まで勤務したアソカン・アショク氏によると、これは事前予約の期間の重要性が増しているからだという。

 企業は事前に予約を受け付けることで、製品に対する需要と製品の種類別の需要分布を予測する上で欠かせない初期データが入手できる。アショク氏によると、製品価格がこれまでになく高く、需要を測ろうにも前例がない場合、需要の読みはさらに難しい。999ドルのiPhone Xはまさにこのパターンだ。アップルにとって未知の領域だとアショク氏は言う。

 アップルはおそらく、初代iPhone以来の需要予測の難しさに頭を悩ませているのだろう。新型iPhonesの需要についてはこれまでのデータがあるが、iPhone Xと、それより若干価格が安い「iPhone 8」と「iPhone 8 Plus」にそれぞれどのくらいの予約が入るかを把握するのはさらに難しい。それだけではない。多くのアナリストの予測では、デザインの一新を待ち望んでいた消費者のアップグレードによる「スーパーサイクル」が起きるかもしれない。そうなれば2014年のiPhone 6発売時のように売り上げが急増する。

 需要の予測が非常に重要なのは「ジャスト・イン・タイム」方式での製造が増えていることもある。何百万台もの電話を製造するには、部品メーカーが必要に応じて部品を供給する必要がある。部品メーカーの利益率は非常に薄く、売れ残りの在庫を抱えることはできない。

完璧主義の代償

 アショク氏によると、一流メーカーが予定通り製品を届ける上で最大の難関の一つは、自社の厳しい基準だという。

 アップルは最後の最後になって、ハードウエアの最終的な設計に小さな、しかし重要な変更をすることで知られている。この完璧主義は不当だとは言えない。ハードウエアがいったん消費者の手に渡れば、修正することはできないからだ。バッテリーの発火でリコールが行われたサムスン電子のスマートフォン「Galaxy Note 7」(ギャラクシー・ノート・セブン)のように、リコールになれば莫大なコストがかかる可能性がある。

 新技術を導入するとなると、頭痛の種はさらに増える。アップルはiPhoneシリーズとして初めてiPhone Xに有機EL(OLED)ディスプレーを採用した。製造基準に合致した部品の割合を「歩留まり」と言う。IHSマークイットのスマートフォン担当主席アナリスト、ウエイン・ラム氏によると、初めの技術にとって歩留まりは敵だという。

 「初代iPhoneでは、静電容量式タッチスクリーンの歩留まり率は80%程度だった。新しいテクノロジーだったからだ」(ラム氏)。5枚に1枚のディスプレーを廃棄するということは、多額のコスト負担を意味するという(ラム氏によると、アップルのタッチスクリーンの歩留まり率はその後、上昇した)。工場労働者の研修も歩留まりに関係している。スマートフォンの最終的な組み立ては今も手作業で行われているからだ。

世界的な供給不足

 ほぼあらゆるハイテク機器に内蔵されているNAND型フラッシュメモリーはこのところ、世界的な供給不足にある。

 IHSマークイットのラム氏は「OPEC(石油輸出国機構)のようなもの」と説明する。精油所が何年も前に石油会社と契約するように、アップルのような巨大企業は大量のNAND型フラッシュメモリーの契約を行い、規模の小さな企業ははじき出される。

 アップルでさえ、iPhone Xにとって最も重大なボトルネックとなるかもしれない現状を避けて通ることはできない。アナリストによると、現在、アップルが採用したOLEDスクリーンを製造できるのは、スマートフォン市場でアップルの最大のライバル、サムスン電子だけだ。確かにサムスン電子のビジュアル・ディスプレー事業部門はスマートフォン部門とは分かれているが、アップルはジャパンディスプレイやLGディスプレーなど他のパートナー企業にOLEDディスプレーを生産させようとしているようだ。

 スマートフォンの製造は非常に複雑であるため、そもそも私たちの手元に届くこと自体がちょっとした奇跡といえる。企業は製品の事前告知をしたり、事前予約を受け付けたりするなど、コントロールできるものは何でもコントロールする。どのくらい品薄になれば消費者は手に入れたいと思うのかも考えている。そうすれば数週間後、いや数か月後に製品が手元に届いたときに、待ったかいがあったという気がするからだ。

By Christopher Mims

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