- 2017年09月21日 09:15
普通のトラックで冷凍輸送する梱包の秘密
1/2■箱ではなく温度を売る
日本の物流業界は、運賃の値下げ、ドライバーの不足などによって、苦しい状況に追い込まれている。だが、嘆いてばかりでは仕方がない。和歌山県に本社を置くワコン社長の西田耕平(51歳)は「日本の物流をよくすることが自分の使命」と語る。
「常々、私は新聞配達のやり方はおかしいと思っていたんです。だって、1軒の家にそれぞれ違う販売店から新聞が届く。それは各新聞社が独自に販売店網を持っているからです。こんな非効率なことはない。販売店が自由に各紙を扱えるようにすれば、どれだけ無駄がなくなるでしょう。商流と物流を分けなければダメです。日本のいたるところで、同じようなことが起こっています。中でも物流は非効率の極みです」
国土交通省によると、2016年のトラック輸送の積載率は41%前後。これは20年前にくらべて約15ポイントも下がっている。物流は時代がたつと共に進化するどころか、非効率化が進んでいる。
画像を見る西田耕平・ワコン社長
ワコンは輸送用包装・梱包資材のプロとして、資材を製造、提供するだけでなく、貨物および荷主にとって最適で効率的・低コストの輸送法を提案する新しい業態の会社である。
扱う包装・梱包資材は、段ボールから、プラスチック製・木製・金属製・布製コンテナ、保冷剤、蓄熱剤、パレット、そのほか緩衝材・結束剤まで幅広い。ワコンは用途に応じてこうした資材を使い分けるだけでなく、オリジナルの包装・梱包機器や仕組みの開発まで行っている。
たとえば、ある自動車部品メーカーに対しては、3次元設計システムを使って、ミリ単位で無駄な空間を削ったオリジナルの包装機器を開発・製造し、10トントラックへの積載量を約3倍に増やし、輸送コストを3分に1に削減したという。
また、液晶パネルのメンテナンス会社には、パネル部品の輸送用コンテナを改良し、重さを10分の1に落とした。これによってトラックの積載量を大幅に増やすことができた。
さらにワコンでは、貨物の温度管理までシステム化している。西田は「箱を売るのではなく、必要な温度を提供するのが当社の仕事」と言う。たとえば医薬品は厳密な温度管理が求められる。このためワコンでは最適な温度帯で定温輸送できるノウハウを磨き上げてきた。
ワコンでは温熱解析シミュレーションソフトや保冷・保温用の「サーモボックス」を開発。保冷剤や蓄熱材、あるいは断熱材などを組み合わせて、貨物ごとに最適温度を作り出す。従来は冷凍食品の輸送に最適とされるマイナス18度の環境を実現するには冷凍車を使うしかなかったが、ボックスごとに温度を設定すれば、1台のトラックで、マイナス18度、ゼロ度、常温など何種類もの温度環境を作って運ぶことができるので、効率的だ。
2016年度の売上高は19億5000万円。過去4年間で約1.7倍に増えている。
■医薬品流通の国際基準「GDP」にも対応
2017年6月には、より厳密な温度管理ができる「テンプジョン(TempJohn)」というクラウド型システムを開発、発表した。
テンプジョンでは、保冷ボックス内に取り付けた手のひらサイズの温度計測器(温度ロガー)を通じて、クラウド上で温度管理をするものだ。ボックス内の温度が設定から外れると、メールでアラームが通知される。
画像を見る箱を空けずにBluetoothで温度計測器(温度ロガー)に接続。
これまで温度を記録するにはボックスのふたを開け、中にある温度ロガーを確認する必要があった。だが、これでは開閉時の温度上昇で貨物に悪影響がある。テンプジョンを使えば、ボックスを開ける必要がない。
医薬品流通をめぐっては、2019年までに国際基準である「GDP(Good Distribution Practices)」への対応が求められている。GDPでは、医薬品が製造工場から出荷されて、患者に届くまでの物流課程において、品質の確保、温度管理、偽造医薬品対策などが必要となる。テンプジョンはいち早くGDPに対応したシステムとして、「問い合わせが多い」(西田)という。
もうひとつ、同社が誇るサービスが空港での定温輸出梱包サービス「パックプロ」である。
一般的に日本から輸出される貨物は、荷主の工場などから梱包会社に運ばれ、梱包後、空港の「保税蔵置場」に保管されてから、飛行機に搭載される。一方、パックプロでは、工場から直接空港に運んでも、即日、飛行機に搭載できる。ワコンは関西空港と成田空港に自社のロジスティクセンターを持っているため、その場で輸出梱包を行い、定温庫に保管、通関手続きも代行できるからだ。
この仕組みにより、これまで発送に数日かかっていたものが、翌日には相手に届けられるようになった。なおかつ、出国3時間前まで定温庫に保管できるため、貨物の品質を維持できる。厳密な温度管理の必要な医薬品や化学原料でのニーズが多いという。
■農作物を効率的に都市へ運ぶ
西田のモットーは「顧客第一」。こんなエピソードを紹介しよう。
介護向けの冷凍食品を製造するメーカーから「サーモボックスがほしい」という問い合わせがあった。西田が話を聞きに行くと、実は大手運送会社から値上げの要請があり、年間で数千万円のコスト増になるので、輸送会社の冷凍車を使わずに、サーモボックスを使って常温車で運びたいとのことだった。
画像を見る定温輸送パッケージ商品「Cargo(カーゴ)」。
配送の方法などを細かく聞くと、そのやり方は効率的とはいえなかった。西田は「それならば、当社で冷凍車を手当てして運びましょう」と、オペレーションまで引き受けることになった。西田は「日本の物流をよくするには、ボックスなど資材だけの対応では解決しないので、運送そのものも手がける必要があります」という。
ワコンは今年6月、大黒天物産と共同出資で運送のオペレーションを行うアリ・ロジという会社を立ち上げた。大黒天物産は西日本地域を中心にディオ、ラ・ムーなどの大型ディスカウントストアを128店展開しており、独自の配送ネットワークと定温車両を保有している。西田はそうした設備を利用することで、野菜や肉など生鮮食品の物流システムを確立させることを狙っている。
「農作物の流通では農家ではなく、卸売市場が主導権を握っているため、農家が値決めもできない。商流と物流がくっついているから、こんなおかしなことが起きるのです。それを断ち切り、農家が農作物の値を決めて、出荷し、われわれがそれを効率的に消費地に運べばいい。日本の農業を救うとか大それたことを考えているわけではなく、われわれができることであって、社会的にやるべきことなら、やるという一種の使命感で動いています。それが仕事というものだと思うのです」
大黒天物産では、すでに生鮮食品の効率的な定温輸送を実現しており、そのネットワークに乗せて産地から直接、農作物を集め、消費地の中に作る中継拠点に運ぶ。一種の共同配送である。中継拠点には冷凍冷蔵庫を設置、保管して、そこから外食やレストランの飲食店に収める。
「まずは、東京の新橋と大阪の梅田に拠点を作り、さらに各都市の繁華街の中に設置したい。われわれは運び屋に特化し、注文に応じて効率的、スピーディーに配送すれば、発泡スチロールの箱を店先に放置するような運び方をしなくてすみます」
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