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規制緩和の是非よりも、規制緩和をどう活用するかでは

規制緩和すれば、自由に市場に参入する企業が現れ、競争が促進される結果、イノベーションも起こり、その市場が成長するという考え方があります。
基本的には正しいというか、むしろ規制緩和が良いのか、悪いのかということではなく、どんな分野で、規制緩和を行い、また競争や市場の働きをどう利用して、行政の無駄をなくしたり、経済の成長につなげるのかという議論がそろそろもっと盛り上がってもいいのかなと感じます。

しかし、一方では、規制緩和には副作用もあるということを理解しておかないと、思わぬ罠も待ち構えていることもあります。
小泉内閣の行った製造業への派遣解禁は、決して日本の競争力を高めたわけでもなく、結果として、不幸なことに派遣切りで失業した人たちが増加し、社会コストを増加させてしましました。さらに、その反動によって、規制緩和や自由化をタブー視する風潮や反動を生んでしまった罪もあるのではないでしょうか。規制緩和のボタンの掛け違いであったと感じています。

さて。規制緩和はいいことづくめとは限りません。落とし穴もあります。そのひとつは、市場の働きに任せることで、強い企業がどんどん競争に打ち勝って、市場を寡占化することも起こってくるということです。これはマーケティングの競争戦略、あるいは競争優位の戦略を学んだ人にはすぐに想像できることだと思います。

規制緩和の成功も、予期せぬ問題が起こってくるという両方の体験を併せ持っているのが米国での航空自由化だといわれています。
米国で航空自由化がはじまったのは、確かカーター大統領時代で、長い歴史があります。その結果、今では、航空料金が下がったり、路線網も拡大し、利用者数も増えたことで、航空の自由化は成功したといえそうです。
ただ、その自由化の歴史のなかで、分かったことは、規制緩和は、やはり強い会社がより強くなり、寡占化していく傾向があるということでした。米国の航空自由化が比較的うまくやってこれたのは、政府が競争をうまくコントロールしてきたことにもあったようです。

例えば、航空会社による合併や吸収を独占禁止法によって阻んだとか、格安航空会社の参入、大手航空会社が築いたハブ&スポークの隙間をくぐった地方空港と地方空港をつなぐコミュータ航空会社も増えたのですが、それも、大手航空会社が競合する路線で価格ダンピングすることを、政府が規制したということがあります。規制は撤廃したけれど、うまくコントロールして、適正な競争を維持してきたということでしょう。

トラック業界の規制緩和は失敗例だと言われています。結局は得をしたのは大手荷主と政治家だけだったという記事がありますが、こちらのほうは、市場の成長もなかったということです。弱肉強食だけが起こりました。
規制緩和は「既得権益」を正しく奪ったのか?


同じ規制緩和でも、池田信夫さんがかねてから主張されている、放送局の電波オークションのアイデアは大賛成ですね。
周波数オークションこそ「成長戦略」だ

現在は認可制で、放送局が安い電波料のメリットを享受しています。しかし、そのことが経営を甘くし、どのチャンネルも同じような番組しか提供できなくなったり、広告収入が減少し、経営が苦しくなってきている現状では、細かな視聴率競争ではなく、電波オークションでもっと骨太な競争を促進することで、放送局の再編が促され、さらに体質強化につながるのではないでしょうか。自由競争は寡占化を生みやすいという働きを利用して、体質強化を図るということです。さらに2011年のテレビデジタル化によって空く電波帯を解放すれば、それが埋蔵金にもなるという発想も正論だとお思います。

またこれまでの中央集権体制維持のための規制、交付金制度、またそこに巣くっている利権によって非効率になっている分野は極めて多岐に渡っており、それは地方主権化と平行して押し進め、解決を目指して欲しいものです。

小泉さん流にいえば、人生いろいろ、規制緩和もいろいろであり、どのような分野で、どのような規制緩和を進めるべきかの議論がまずは重要だということでしょう。
経団連からも、規制緩和に関しては、規制改革要望としてまとめられ提言がなされています。

2009年度日本経団連規制改革要望(総論)
2009年度日本経団連規制改革要望概要(各分野の個別要望)

結構、参考になると思います。しかし、個別の要望を見ると、分野によっては、もっと踏み込んだほうがいいものがあるのじゃないか、都合が良すぎないかと感じるものもあります。経団連という立場があるから、それはしかたないことかもしれません。

いずれにしても、財政の出動だけでは、本質的な日本の潜在成長力を高めることにはつながりません。平行して、規制緩和によって、成長しそうな市場にターゲットを定め、新規参入と、競争を促進して、経済を活性化させるということも急ぐべきでしょう。やれることはやるべきです。

しかし、規制緩和によって、予測のつかない、想定の範囲外のことも起こってくるので、政府の監視機能の強化、とくに公正取引委員会の機能強化、問題が起こった時の軌道修正の体制をセットしておかないと、副作用だけが残るということにもなりかねません。
重要なことは、規制緩和がいいかどうかではなく、規制緩和をどう利用し、どう操っていくかではないかと思います。それが分かっていれば思い切った規制緩和に、もっと踏み込めるのではないでしょうか。

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