- 2017年09月20日 12:48
「暫定的な北朝鮮との共存がむしろ北朝鮮の崩壊を早める」姜尚中・東大名誉教授が提案する「戦争回避」の道筋
2/3「イラク戦争」が北朝鮮のトラウマになった

2005年に、6カ国協議の共同声明が出ました。でも、10年以上にわたって、6カ国協議はクローズされた。
北朝鮮が「核」を交渉の”Leverage”(影響力)として使うのか、それとも”Deterrence”(抑止力)として使うのか。私は、最初から”Deterrence”(抑止力)として核を追求してきたわけではないのではないかと思います。少なくとも、金正日のときは、核はアメリカと交渉する”Leverage”(影響力)の位置付けであったのではないかと、私自身は思っています。
しかし2003年、イラク戦争が起きました。そして、イランとイラクと北朝鮮は、アクシス・オブ・イーブル(悪の枢軸)になってしまいました。イラク戦争で、サダム・フセインはあのような悲惨な状況になってしまいました。
これはかなり、北朝鮮にとってのトラウマになったのではないか。今日の朝、北朝鮮はミサイルを発射した後、「我々はリビアでもなければイラクでもない」と明言しています。
北朝鮮が核にこだわるのは、”Deterrence”(抑止力)として、徹底的に重要な柱であると、彼らが考えているということだと思います。
韓国の文大統領は「太陽政策」を志向している
こういう状況の中で、我々は「戦争か、交渉か」という非常にシリアスな状況に、どんどん追い込まれていると考えたほうがいいと思います。
ご存知の通り、韓国には約2万6000〜8000人の米軍がおりますし、その家族や、いろんな意味で韓国に滞在しているアメリカ人は、約20万人近くいると思います。
もしもトランプ政権が、局部攻撃を加えるか先制攻撃をやるかは別にして、何らかの形で戦争を起こす場合、韓国の協力なしには戦争それ自体が無理なのではないかと思います。
現在の文在寅大統領のメンターの一人は、金大中(キム・デジュン)元大統領だと思います。基本的に彼は、太陽政策を継承したいと考えていると思います。
私が金大中氏と何回か話したとき、彼は「太陽政策は単なる宥和政策ではない。一番大切なことは、北朝鮮につけ入れられない防衛力を高めていくことだ。そのうえで、交渉をするんだ」と、何度も力説していました。
今、文在寅政権は、韓国の防衛力の強化のため、かなり強い防衛力にしようということで、いろいろなことをやっていますけど、一方で、いつかトレンドが変わったときに対話を考えていると思います。
本来であれば、10月4日2回目の南北サミットの10周年になります。ただ今の状況では、文在寅政権が対話に舵を切ることはかなり難しいと思います。
どういう事態になるのかを考えるとき、なぜ解決ができないまま今日に至ったのか、少し過去を振り返らないと、これから起こることもなかなか予測できないのではないかと思います。
さきほど申しましたけれども、2003年のイラク戦争によって、北朝鮮は「核」を単なる”Leverage”(影響力)ではなく、”Deterrence”(抑止力)にしなければいけないと、ぐーっと舵を切っていったのではないかと思います。
トランプ政権はオバマ政権を批判して、”Strategic Patience”(戦略的忍耐)は挫折したと言っていますけど、私は20年間にわたって、アメリカの戦略は北朝鮮に対しては失敗していたのではないかと思います。
つまり、ブッシュの共和党政権の2期にわたる時代と、オバマの民主党政権の2期にわたる時代のほぼ20年近く、北朝鮮は事実上、時間稼ぎができたということです。
それはアメリカ合衆国のパワーエリートの中に「北朝鮮はそのまま崩壊していくのではないか」という、ある種の甘い期待があったのではないかと思います。



