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- 2010年03月05日 22:20
ベーシックインカム 一番かんたんな方法
これぞ、コロンブスの金の卵。
ベーシック・インカム懐疑論で最も大きいのは、「財源どこ」というもの。
私ですら、財源の議論が欠如していることをもって「ベーシック・インカム入門」を批判したし、私自身は「弾言」や「働かざるもの、飢えるべからず。」で社会相続をその原資に充てることを提案している。
もちろん財源に「古典的」な消費税や所得税を充てることも可能で、これらは「やさしいベーシック・インカム」で議論されている。献本御礼&紹介が遅れたことを陳謝。ちなみに共著者の星飛雄馬は本名。「働かざるもの、飢えるべからず。」でもお手伝いいただいた。
いずれも誰かの財布が痛む。もう痛みがない故人から拝借するという点で私は弾案が最も優れていると今でも確信しているが、それでも遺産を愉しみにしていた人が痛みを感ぜずにはいられない。
しかし、もし誰の財布からも金を抜き取らないとしたら?
そんな方法が、あるのである。
妙案!と思った0.2秒後には、私はこう返事をしてしまった。不覚にも。
この時私は、自ら試算した5万円/人月(必要財源72兆円/年)や、ニコ生のラフコンセスである7万円/人月(必要財源84兆円)というものを想定してた。それだけの額を必要とするのも、生活保護や基礎年金を置き換えることが念頭にあったからだ。
しかし、そういったものを全て後回しにして、「日本経済復活 一番かんたんな方法」のインフレターゲットをベーシック・インカムで実装したらどうなるかを改めて考えてみた。
同書、というより共著者の飯田泰之の十八番、「日本の潜在経済成長率は2%はあるはずだ」の+2%をターゲットとし、それと実績(-2.1%)との差、4%程度の政府紙幣を発行し、これを全国民に均等割する。話をわかりやすくするため、その額総額24兆円、一人年額20万円としよう。この程度はリフレ派経済学者が普通に唱えている数字だ。しかもリーマンショックの前だったから、今は「もっと刷れ」と言っているかもしれない。
違うのは、それを銀行を通して市中に出すのではなく、国民一人一人に直接手渡しすること。これだけだ。これも定額給付金という実績がすでにある。一回こっきりということもありその手際は悪いものだったが、日本居住者(そう。外国籍も含む!)であれば誰でも受け取れたのである。継続性があるということであれば、ずっとましなシステムが作れるだろう。なんなら国民背番号と同時導入したっていい。徴税のためなら痛いが、ベーシック・インカム給付のためであればずっと受け入れやすいものとなるだろう。
すると何が起こるか。
日本を鳥の目で見ると、ものもことも(以下あわせてグッズ)増えておらず、貨幣だけが増えたのだから、インフレが達成されたことになる。飯田流に言えば、100円のものはこれで102円になるわけだ(何もしなければ98円になっていたことに留意!)。それだけのこと。手持ちのもので買えるものが増えたわけでは全くない。
だから意味なし、というのが財政再建派の論法であった。が、今度は日本人を虫の目で見てみよう。
無収入の人は、これで国民年金をちゃらにできる。今までは無収入であっても成人であればそれだけ支払わねばならなかったのだ。専業主婦の妻の分は、当然私が肩代わりしている。
年収200万のワーキングプアにとっては、10%の年収アップである。
年収300万の森永卓郎言うところの「B級」も、6%アップ。年収1000万円までは、年収の増加がインフレ率を上回るのだ。
家族4人であれば、80万円。中古車であれば買えるし、すでに車を持っていれば下取りとの差額で新車が手に入るかもしれない。
グッズがなにも変わらなくても、こうなのだ。
@YAMAMOTO_Nozato指摘のとおり、実はこれ、暗黙の累進課税強化とも見なせる。しかし富裕層は、それを増税という形ではなく、商品値上げという形で体験する。この方がずっと彼らにとっても--私にとっても受け入れやすい。
ところで実際のインフレというのは、ものの値段が均等に同率で上がるのではない。あるものの値段はそのまま、またあるものの値段はインフレ率よりずっと高率で値上がりする。必需品と高級品とどっちの値上がり率が大きいだろう?前者だとしたらBIの効果は帳消しになりかねないが、私は現時点においては高級品の方が値上がりすると見ている。
理由は、バブルがまさにそうだからだ。あの頃不動産や株の値段は倍にも三倍にもなったが、自動販売機の缶飲料の値段は100円が120円になった程度だった。これとて20%もの値上がりだったが、以後ずっとその値段で来ている。
インフレなのに、ものは余っている。「失われた20年」の中にいるはずの日本で、2000万トンの残飯が出ている。
だとしたら、安物を買うインセンティブは下がる。そしてそれ以上に、預貯金という名で貯金しておくインセンティブも下がる。株や不動産といったリスクアセットを取りにいかなければ、腐ってしまうのだ。
しかし見ての通り、収入増は収入が少なかった人ほど大きい。
なんと、インフレプロテクションまでついてくるのだこのプランは。
もちろん政府紙幣ではなく、地域通貨もさらに良さそうなアイディアである。自由貨幣もいいだろう。
しかし、それらは本質ではない。
最も重要なのは、今までのホールセール型の間接金融政策を、直接金融政策にすることだ。
マクロ経済学者というのは、マクロだけあって、国だのGDPだの何兆円だのといったことは気にかけても、いまそこにいるあなたの年収がいくらで、あなたにとって1000円が何の意味を持つかについてなーんも考えて来ていなかった。クジラの生殖には精通していても、ヒトのセックスに関しては童貞どころか精通前のようなちぐはく感の原因がそこにある。
私も少しマクロ経済熱にかかっていたのかもしれない。こんな単純なことをこんなちょっと深く考えなかったのだから。
もちろん、これはベーシック・インカムの理想型ではない。しかし十分考慮、いや実施に値する初体験ではなかろうか。そうして、国からはわずかではあるが確実にお金がもらえるという体験を積んでいけば、我々も「間合いをつかむ」ことが出来る。そしてどんな問題が出てくるかを、妄想ではなく実体験として積むことができる。
なにも全部ただにしようってんじゃない。
昼飯ぐらい、我が国におごらせようじゃないか。
Dan the Free Luncher
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ベーシック・インカム懐疑論で最も大きいのは、「財源どこ」というもの。
私ですら、財源の議論が欠如していることをもって「ベーシック・インカム入門」を批判したし、私自身は「弾言」や「働かざるもの、飢えるべからず。」で社会相続をその原資に充てることを提案している。
もちろん財源に「古典的」な消費税や所得税を充てることも可能で、これらは「やさしいベーシック・インカム」で議論されている。献本御礼&紹介が遅れたことを陳謝。ちなみに共著者の星飛雄馬は本名。「働かざるもの、飢えるべからず。」でもお手伝いいただいた。
いずれも誰かの財布が痛む。もう痛みがない故人から拝借するという点で私は弾案が最も優れていると今でも確信しているが、それでも遺産を愉しみにしていた人が痛みを感ぜずにはいられない。
しかし、もし誰の財布からも金を抜き取らないとしたら?
そんな方法が、あるのである。
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BIですけど、税金を廃止して、財源は政府通貨を発行することで確保するならば、インフレを補填するという名目でBIを実現する大義を得られますよ。通貨発行益とは、金融資産税ですから、使わなければ徴税され、使ってしまえば徴税されないわけです。増税するならこれしかない。 @dankogai
妙案!と思った0.2秒後には、私はこう返事をしてしまった。不覚にも。
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dankogai: 定性的にはよさげだが、定量的にはどうか。GDPの1/6相当額をヘリコプターでばらまくのは巨額すぎないか?要検算<@YAMAMOTO_Nozato 税金を廃止して、財源は政府通貨を発行することで確保するならば、インフレを補填するという名目でBIを実現する大義を得られますよ。
この時私は、自ら試算した5万円/人月(必要財源72兆円/年)や、ニコ生のラフコンセスである7万円/人月(必要財源84兆円)というものを想定してた。それだけの額を必要とするのも、生活保護や基礎年金を置き換えることが念頭にあったからだ。
しかし、そういったものを全て後回しにして、「日本経済復活 一番かんたんな方法」のインフレターゲットをベーシック・インカムで実装したらどうなるかを改めて考えてみた。
同書、というより共著者の飯田泰之の十八番、「日本の潜在経済成長率は2%はあるはずだ」の+2%をターゲットとし、それと実績(-2.1%)との差、4%程度の政府紙幣を発行し、これを全国民に均等割する。話をわかりやすくするため、その額総額24兆円、一人年額20万円としよう。この程度はリフレ派経済学者が普通に唱えている数字だ。しかもリーマンショックの前だったから、今は「もっと刷れ」と言っているかもしれない。
違うのは、それを銀行を通して市中に出すのではなく、国民一人一人に直接手渡しすること。これだけだ。これも定額給付金という実績がすでにある。一回こっきりということもありその手際は悪いものだったが、日本居住者(そう。外国籍も含む!)であれば誰でも受け取れたのである。継続性があるということであれば、ずっとましなシステムが作れるだろう。なんなら国民背番号と同時導入したっていい。徴税のためなら痛いが、ベーシック・インカム給付のためであればずっと受け入れやすいものとなるだろう。
すると何が起こるか。
日本を鳥の目で見ると、ものもことも(以下あわせてグッズ)増えておらず、貨幣だけが増えたのだから、インフレが達成されたことになる。飯田流に言えば、100円のものはこれで102円になるわけだ(何もしなければ98円になっていたことに留意!)。それだけのこと。手持ちのもので買えるものが増えたわけでは全くない。
だから意味なし、というのが財政再建派の論法であった。が、今度は日本人を虫の目で見てみよう。
無収入の人は、これで国民年金をちゃらにできる。今までは無収入であっても成人であればそれだけ支払わねばならなかったのだ。専業主婦の妻の分は、当然私が肩代わりしている。
年収200万のワーキングプアにとっては、10%の年収アップである。
年収300万の森永卓郎言うところの「B級」も、6%アップ。年収1000万円までは、年収の増加がインフレ率を上回るのだ。
家族4人であれば、80万円。中古車であれば買えるし、すでに車を持っていれば下取りとの差額で新車が手に入るかもしれない。
グッズがなにも変わらなくても、こうなのだ。
@YAMAMOTO_Nozato指摘のとおり、実はこれ、暗黙の累進課税強化とも見なせる。しかし富裕層は、それを増税という形ではなく、商品値上げという形で体験する。この方がずっと彼らにとっても--私にとっても受け入れやすい。
ところで実際のインフレというのは、ものの値段が均等に同率で上がるのではない。あるものの値段はそのまま、またあるものの値段はインフレ率よりずっと高率で値上がりする。必需品と高級品とどっちの値上がり率が大きいだろう?前者だとしたらBIの効果は帳消しになりかねないが、私は現時点においては高級品の方が値上がりすると見ている。
理由は、バブルがまさにそうだからだ。あの頃不動産や株の値段は倍にも三倍にもなったが、自動販売機の缶飲料の値段は100円が120円になった程度だった。これとて20%もの値上がりだったが、以後ずっとその値段で来ている。
インフレなのに、ものは余っている。「失われた20年」の中にいるはずの日本で、2000万トンの残飯が出ている。
だとしたら、安物を買うインセンティブは下がる。そしてそれ以上に、預貯金という名で貯金しておくインセンティブも下がる。株や不動産といったリスクアセットを取りにいかなければ、腐ってしまうのだ。
しかし見ての通り、収入増は収入が少なかった人ほど大きい。
なんと、インフレプロテクションまでついてくるのだこのプランは。
もちろん政府紙幣ではなく、地域通貨もさらに良さそうなアイディアである。自由貨幣もいいだろう。
しかし、それらは本質ではない。
最も重要なのは、今までのホールセール型の間接金融政策を、直接金融政策にすることだ。
マクロ経済学者というのは、マクロだけあって、国だのGDPだの何兆円だのといったことは気にかけても、いまそこにいるあなたの年収がいくらで、あなたにとって1000円が何の意味を持つかについてなーんも考えて来ていなかった。クジラの生殖には精通していても、ヒトのセックスに関しては童貞どころか精通前のようなちぐはく感の原因がそこにある。
私も少しマクロ経済熱にかかっていたのかもしれない。こんな単純なことをこんなちょっと深く考えなかったのだから。
もちろん、これはベーシック・インカムの理想型ではない。しかし十分考慮、いや実施に値する初体験ではなかろうか。そうして、国からはわずかではあるが確実にお金がもらえるという体験を積んでいけば、我々も「間合いをつかむ」ことが出来る。そしてどんな問題が出てくるかを、妄想ではなく実体験として積むことができる。
なにも全部ただにしようってんじゃない。
昼飯ぐらい、我が国におごらせようじゃないか。
Dan the Free Luncher
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