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赦し - 映画評 - Invictus

画像を見るあなたは、赦せるだろうか。
27年自分を投獄した相手を。
それをやってのけた人が、いる。

本作「Invictus」は、その人ネルソン・マンデラのドラマタイゼーション。政治犯として27年間投獄されたのも本当なら、その後自らを投獄した南アフリカ共和国大統領を満期まで勤めたのも本当。そして彼の大統領時代に同国で開催された1995 ラグビー・ワールドカップで同国が優勝したのも本当だ。そうそう。日本がニュージーランドに145-17で歴史的大敗したのも。

もちろん本作の100%が史実どおりでないのも確か。どこが史実と違うのかは、英語版Wikipediaを見ればわかる。そのうちの一つが、本作の名前ともなっているInvictus。マンデラ大統領が南アキャプテン、ピナールに渡したのは、InvictusではなくThe Man in the Arenaの方だったらしい。
しかし他にどのように形容したらよいのか。
最も赦さざる相手を、赦した人を。
404 Blog Not Found:失敗防止学の教科書 - 書評 - ヒューマンエラーを防ぐ知恵
"To err is human"、「失敗するのが人間だ」というのは、私も好きでよく使う言葉だが、これには"to forgive, divine"、「赦せるのは神のみ」と続く。

これは Alexander Pope の言葉だそうだが、そうだとすると Madiba は神ということになる。

しかし神には赦せても、人に赦しを求めることは叶わぬのではないか。
アパルトヘイト廃止後の南アフリカ大統領というのは、自ら赦すだけでは務まらない仕事なのだ。それを全国に行き渡らせるにはどうしたらよいか。
それが、本作の主題でもある。
Madiba それをどうやって成したかは、是非本作で確認していただきたい。
一つ言えるのは、Madibaが神ではなく人だったからこそ、この難事を成し遂げたのだということ。
Nelson Mandela - Wikiquote
That was one of the things that worried me -- to be raised to the position of a semi-god -- because then you are no longer a human being. I wanted to be known as Mandela, a man with weaknesses, some of which are fundamental, and a man who is committed, but, nevertheless, sometimes fails to live up to expectations.
心配事が一つある--半神に祭り上げられること--そうなっては人ではなくなってしまう。私はマンデラとして記憶されたい。根源的に弱みを持った。懸命に勤めたけれども、しかし時には期待に答えきれなかった人として。

本作はまさにそのようにマンデラを描写している。彼の泣き所である家庭問題も、本作にきちんと登場する。 演じているのは、 Morgan Freeman 。今「父性」というものを演じさせてこれ以上の人はいないだろう。Lean on Me の校長先生以来、こういう役を演じさせたら人類に彼の右に出る者はいないのではないのだろうか。その上今回は、本人と骨格がクリソツなのである。

「骨格がクリソツ」といえば、ラグビー選手たちもそうで、エンドロールで本物の選手たちのスティル写真が登場するのだがもうありえないほど似ている。まるで、「いかに話に作らなかった」かに腐心するかのように。
それは、実は「本物」にとっても同様だった。彼が凄かったのは、それを「断腸の思い」でやったことではなく、喜んで、笑顔でやったこと。これは映画の中だけの話ではない。"Nelson Mandela"で画像検索してみると、ほんといつも笑顔なのだ。天才、だからなのかも知れない。しかしこの人がそれを「天然」ではなく「心がけて」やっていたことは台詞の端々からも伺うことが出来る。
Forgiveness is our greatest weapon.

27年の受難ですら、この人にとってはそうなのだ。この人に笑顔で「赦せ」と言われて断れる人などいるだろうか。この人はそれを熟知した上で活用しているのだ。
現代の南アが抱える問題は、一人の偉人だけでは解決できないほど過酷だ。エイズの蔓延には彼の後継者ムベキの失策も大きい(このあたりのことは「医療品クライシス」に詳しい。この場を借りて献本御礼)しかしもし彼が赦しを選ばなかったらかの国はどうなっていたか。そして世界はどうなっていたか。
ネルソン・マンデラは、人である。だから人である我々には、「おれには出来ない」という言い訳は成り立たない。偉人の存在意義は、まさにそこにこそある。
神では駄目なのだ。

人が、人になさねば。
Dan the Not-so-forgiv(en|ing)

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