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「太陽光発電の「不都合な真実」」の不都合な真実

というわけで、同記事の不都合な真実を指摘しておくことにする。

【最終回】太陽光発電の「不都合な真実」:日経ビジネスオンライン
植物も光合成によって、太陽光発電と同様に、太陽エネルギーを別の形態のエネルギー源(糖/ATP)に変換して利用している。その変換効率は数%で、一方の太陽光発電は最大10〜20%とずっと高いことになっている。
しかし、イネ科の穀物植物や藻類などは5%以上もあり、それほど大差があるわけではない。
イネの葉が農地に落ちる日光を全て受け止め、そしてそれを100%コメにしたならそうなる。しかし事実はだいぶ異なる。実際には日光はかなり取りこぼすし、イネは自身が成長するためにも生活するためにも光合成で得たエネルギーを利用しなければならない。

それでは実際にヒトがイネから取り出せるエネルギーは、どれくらいか。
404 Blog Not Found:グリーン・レクイエムが奏でられないわけ
が、当然のことながら、おてんとさまの恵みをすべて糧にするわけにはいかない。そしておてんとさまの恵みを糧とするにあたって、光合成というのは実はそれほど効率がいいわけではない。具体的にどれくらいかというと、「太陽電池を使いこなす」(P. 138)に、「イネの変換効率は0.169%」という数字が出てくる。この通りだとすると、必要な表面積はなんと124m2となる。なんと家一軒分である。
0.169%である。著者の主張とは二桁も違う。
著者の指摘は、よって「バイオマスは代替エネルギーとはしては非効率」と読み替えることしか出来ない。
【最終回】太陽光発電の「不都合な真実」:日経ビジネスオンライン
パネルを冷却しなければ実用にならないが、冷却水は砂漠では通常手に入らない。実際、2009年秋に米国ネヴァダ砂漠での大規模な太陽光発電計画が、冷却用と住民生活用の水の奪い合いで中断された。そもそも、このアイデアには、植物がなぜ砂漠で生育しないかと言う根源的な問いが忘れられている。光合成維持に必要な蒸発冷却用の水がないから、生育しないのだ。

光合成と太陽光発電は似ているようで異なる。光合成はタンパク質で組み立てられているが故に、最適な温度範囲はよって低くなるし、高すぎれば仕組みが壊れてしまう。太陽光発電は、光電反応。温度範囲はずっと広い。さもなくば地上よりずっと過酷な宇宙空間では使えないことになってしまうが、実際に使えているし、それどころか大気の影響がない分効率はさらに高くなる。

太陽発電で冷却しているという事例を知らなかったので、記事に指摘されているのは具体的にどの事件か調べてみたのだが、それらしき記事をなんとか見つけることができた。しかし、そこにはこうある。
Dirty detail: Solar panels need water - Friday, Sept. 18, 2009 | 2 a.m. - Las Vegas Sun
Dust on solar panels can decrease their efficiency by about 3 percent, solar photovoltaic experts said. The larger the solar array, the more electricity lost.

ここで使っている水は、なんと洗浄水である。
冷却水では、ない。


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新・太陽電池を使いこなす
桑野幸徳

これは洗う方がおかしい。太陽光発電で「パネルを清掃せねばならないのですか」というのはFAQの一つなのであるが、答えは「不要」である。
「新・太陽電池を使いこなす」 P. 77

太陽電池は掃除が必要か?


 そんなときにある大学の先生から、
「桑野さん、太陽電池の掃除が大変でしょう」
 といわれた。

 その先生は、太陽電池モジュールの表面にゴミがたまるので、その掃除を一週間に一回ぐらいはやっているのだと思われたのだ。太陽電池モジュールの表面につくゴミなどの汚れによる出力低下は、日本の場合最大三パーセント程度である。しかも日本では週に一度くらいは雨が降るので、汚れは洗い流され、発電能力は回復する。したがって、実質上掃除の必要はないのである。実際、私はシステムを設置して以降、まったく屋根のゴミ掃除をしていないのである。

雨による洗浄が期待できないネヴァダでは、もちろん事情は異なる。しかし、水で洗う必要が本当にあるのだろうか?用はホコリを取り除けばよいのだから、ブロアーで吹き飛ばせばいいように思われるのだが。ピカピカにすることにこだわる必要はないのだ。



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世界を動かす石油戦略
石井彰 /
藤和彦

さらにネヴァダやスペインでは、太陽光発電だけではなく太陽熱発電も使える。ローテクに思われるかも知れないが、熱効率は実はこちらの方がよく、30-40%ある。特定の波長しか電力にならない太陽光発電と異なり、熱であれば全て波長が有効になるからである。さらに蓄熱により、夜間も発電できるというメリットもある。その代わり仕組みが大掛かりになるので、都市に置くのには適さない。
著者の「世界を動かす石油戦略」はなかなかの好著であり、著者が化石燃料通であることは疑うべくもない。それだけに太陽光発電に関する知識が「空気より重い空飛ぶ機械というのはあり得ない」と1895年に宣ったケルビン卿のレベルに留まっているのが悔やまれる。

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