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死刑囚の基本的人権 - #書評_ - 福田君を殺して何になる

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福田君を殺して何になる
増田美智子
(各リンクはbk1へのもの)

404 Blog Not Found:もう一つの実名匿名問題
彼を「山口県光市母子殺害犯」と呼び続けるのは、彼からそれ以外の属性を奪うことでもある。むしろそちらこそ彼の犯した罪にふさわしいという見方もできるのかも知れないが、彼にも一人の人間として裁かれる権利がある。
本書は、まさにその立場に立脚して書かれた一冊である。一読すれば、本書の署名は必然であり、「福田君」なしには本書は本書たりえないことは明白である。
と同時に、著者は告発せずにはいられない。

福田君の判決を死刑にしてしまった責任が、誰にあるのかを。

本書「福田君を殺して何になる」は、光市母子殺害事件に関するルポタージュとして、困難かつ綿密な取材の下に書かれた、現時点で最も真摯な一冊。
目次 - THE INCIDENTSより
序章 予期せぬ返事

1章 少年時代

2章 父親

3章 不謹慎な手紙

4章 謝罪

5章 虚構

6章 弁護士

7章 死刑

終章 当事者

解説 今枝仁弁護士

本書がいかに真摯な作品であるかの証拠は、解説を今枝仁弁護士が書いていることだけでも十分だろう。本書には、今枝弁護士がなぜ解任されたかの答えも出てくる。
クライアントに対して、真摯すぎたから、だ。
それに対して弁護団が求めたのは、案件に対して「真摯」であること。
そしてこの弁護団の姿勢こそが、死刑判決の最大の理由となっているのだ。
P. 203
 弁護団のありさまについて、よく私はサッカーにたとえ、こう表現している。
「自殺点を打ちまくり、大量リードされたあげく、後半ロスタイムで守備固め」。

本書は裁判のゆくえを丁寧に追うことで、無期懲役がいかにして死刑になっていったかを克明に追っている。本書の核はあくまで福田君本人であるが、著者は本村さんをはじめ、関係者をつぶさに取材することで、福田君にも本村さんにも肩入れすることなく、しかしどちらにも真摯に筆を運んでいる。
その上での、
取材拒否や今枝弁護士解任で弁護団を守ろうとしているのは、福田君ではない。とにかく他人から批判されたくないという彼ら自身なのである。

という言葉は重い。
光事件、実名本差し止め求め提訴 被告の元少年弁護団 - 47NEWS(よんななニュース)
山口県光市母子殺害事件の被告の元少年(28)=死刑判決を受け上告中=を実名で記した単行本をめぐり、元少年側が、申し立て中の仮処分とは別に、出版社側を相手取り、出版の差し止めと、損害賠償を求める訴訟を広島地裁に起こしたことが2日、分かった。
というニュースは、それをさらに裏付けているに過ぎない。
著者は本書を、こう結んでいる。
P. 226
だが、いちばんの理由は、「福田君を殺して何になる」という問いの答がほしかったからだ。前章で、私は「福田君が死刑になることで、何か1つでも、社会にとって得る物があってほしい」と書いた。しかしその「得るもの」が、私はいまだに見つけられずにいる。

部外者として恐縮なのであるが、しかし彼に刑を科す国の一主権者として、私は「得るものがなかった」という答えそのものこそ、社会が得る最大のものであるのではないかと感じずにはいられなかった。得るものがないからこそ、得るために何をしなければならないかを考えることを強いられる。何かを得られたのであれば、「それでよかった」ことを追認することになってしまうのではないか。
だから、あなたも本書で知ってほしい。
この事件でいかに多くのものが失われ、そしていかに何も得られなかったか、を。

小飼弾

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