- 2017年09月15日 17:37
一院制導入にメリットはない。結成前から中身の無さが露呈した小池国政新党
民進党よりも滅茶苦茶な小池新党
都民ファーストの会の代表がまた交代した。野田数代表が都知事特別秘書に専念するという名目で、わずか2か月余りで辞任し、後任に小池百合子氏の元秘書で初当選したばかりの荒木千陽都議が就任した。結党一年未満で3回も党首が変わること自体が異常であるが、当選2回以上の議員が多数いる中で無名の新人議員を議員総会さえ開かず代表に選出することはあまりに異様である。
早速、音喜多俊都議がこれに反対を表明するなど、「都民ファーストの会」が民進党以上に滅茶苦茶な組織であることが露呈されつつあると言えよう。
滅茶苦茶なのは、国政新党も同じである。小池氏に近しい若狭勝衆院議員は記者会見で、年内結成を目指す国政新党の目玉政策として「一院制」の導入を掲げる考えを表明した。前回の投稿でも示したように、小池氏や若狭氏に自民党と明確に方向性が異なる政策ビジョンなど無いことがまたもや露呈したといえる。彼らの言うことは「議員定数削減」とか「身を切る改革」など、松下政経塾出身者がステレオタイプに掲げるようなものばかりである。国会の「一院制」も、議員定数を削減させる「身を切る改革」の一つであるといえば、有権者受けが良いと判断して飛びついただけであろう。
一院制を導入するメリットはない
では、一院制を導入することは本当に必要なのだろうか?少し考えてみよう。
G7各国をはじめとして多くの先進国では二院制が採用されている。逆に先進国(地域)の中で一院制を採用しているのは、韓国・台湾・北欧諸国・ニュージーランドなどである。二院制が採用されている国のうち、庶民院(下院)でないほうの議院(上院)には様々なタイプのものがあるが、典型的なのは貴族院の流れを汲み庶民院を引退した政治家や有識者から構成されるものや、地域(州など最上位の層に属する地方政府)の利益を代表するものである。
上院の多くはその権限が下院より劣後するが、地域代表の側面が強いものの中には、アメリカの上院のように下院と同様の権限を持つ例もある。日本の参議院の場合は地方選挙区選出議員が地域の利益を代表し、全国比例選挙区選出議員が職能別の利益を代表している傾向が強い。
二院制を採用する根拠の一つとして、「多角的な民意の反映」により下院の暴走を防ぐというものがある。ある時点における民意を反映した議院で可決された法案に過誤があった場合に、異なった方法で選出されたもう一つの議院が存在した場合、法案の修正が可能になる。
したがって、二つの議院が存在した場合は、選出時期や選出方法が異なる方が望ましい。一方で、選出時期と選出時期が異なる両院が完全な対等であった場合には、ある法案に対して両院で反対の議決結果が生じる可能性があり、政治の停滞を招く可能性がある。日本・アメリカ・イタリアでは両院の権限が対等またはそれに近いので、しばしば両院間でねじれが生じた場合に、政権がレームダック化するなど政治の停滞が起きやすい問題がある。
一院制導入の理論的根拠として迅速な審議・意思決定が挙げられるが、議院内閣制で議員の選出方法が単純小選挙区制、または大統領制においても大統領と議会の選出時期が同じ(か、それにかなり近い)状況であり議員の選出方法が単純小選挙区制だった場合、ある時点での比較多数派(過半数でないことに注意)の意見ですべてが決定されてしまう危険性がある。
こうしたことまで念頭に置いて、小池氏・若狭氏・細野氏が一院制を主張しているのかは疑問である。二院制であっても、多角的な民意を議論に反映させながら一院制のように明確な意思決定を行うことは可能である。一つは西欧諸国で見られるように上院の権限を抑制するという方法である。
また、両院が対等な権限を持っていたとしても両院での議決が異なる場合は(両院による合同会議を開く等の方法で)両院の議決の合計結果を国会における意思決定とする方法もある。この場合は、議決に関しては実質的な一院制となるが、審議過程は二院制になるのでより丁寧かつ慎重な審議が可能となるメリットがある。以上を踏まえて、民主主義の側面からは一院制が二院制に優位性があるとは言えない。
また、一院制にして議員定数削減を行おうというのも非常に乱暴な話である。議員定数はやみくもに削減すればよい話でない。ポピュリスト的な政治家がよく議員定数半減などと口にするが、適切な議員定数を考えることなしに定数削減を主張するのは非常に危険なことである。ただでさえ、日本の国会議員の人口一人あたり定数は衆参合わせても国際的に比較すればかなり少ない。選挙区あたりの人口を何人にするのが最適か、そしてどのような選挙制度(の組み合わせ)にするのが最適かを考えずに、定数削減を訴えるのは愚の骨頂である。
さらに、議員定数を削減すればそれだけ一選挙区あたりの人口が増えるのだから、一選挙区あたりの選挙費用は増大する。これもすべて党側が負担することにはならないから、候補者の持ち出しは今より増えることが予想される。結局、富裕層か組織票が見込める者が出馬に有利になり、一般人は選挙に出にくくなる。やみくもな国会議員定数削減は、若狭氏が訴える「しがらみのない政治」の実現どころか「しがらみだらけの政治家」を増やすだけである。
小池新党も前原民進党も「非自民」の選択肢ではない
こんな小池新党でも、泥船の民進党よりはましと思い、乗り換えをめざして民進党を離党する保守系議員は後を絶たないだろう。その結果、民進党では、保守系の前原氏を代表に選んだはずなのに保守系議員が離党していくのでリベラル系の影響力が強くなっていき、さらに保守系議員の離党が加速するという奇妙な現象が起きつつあるのかもしれない。しかしながら、代表である前原氏は野党共闘に後ろ向きなので、党としての対応がどっちつかずになり、ますます党勢の低迷に拍車がかかるだろう。小池新党も前原民進党も「非自民」の選択肢ではないことは明らかだ。



