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北朝鮮の中距離弾道ミサイル(火星12)が日本上空を通過:日米ミサイル防衛の役割分担とは

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日本のSM-3とPAC-3の役割は?

先月「火星12」が発射された際、「日本上空を通過するミサイルを自衛隊が迎撃しないのは、その能力がないから。ミサイル防衛は無意味。」といったような言説を見かけました。今回も破壊措置は行われませんでしたが、やはりミサイル防衛に対する疑念を抱く方もあるやもしれませんが、これは大きな誤解です。

まず、破壊措置命令に基づく武器の使用は、ミサイルや破片の「落下による我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要があると認めるとき」と自衛隊法82条の3に定められています。現在、破壊措置命令は常時発令されており、なんらかの落下物があり、迎撃の必要が認められる場合には即座にイージス艦からのSM-3が発射される運びになっていますが、先月も今回もその必要がなかった、ということです。なお、Jアラート第1報は、日本に向かって発射されたら配信される仕組みですので、「落下による我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要」がない場合には、Jアラート第1報が鳴る+迎撃しないということになります。

では、日本の弾道ミサイル防衛(BMD)は一体なんのために配備されているのでしょうか。至極当たり前の答えなのですが、日本のBMDは日本を防衛するためのシステムですので、我が国のSM-3とPAC-3の迎撃標的は「ノドン」もしくは「北極星2号」です。「ノドン」も「北極星2号」もいわゆる準中距離弾道ミサイル(MRBM)と分類されます。北朝鮮のもつ弾道ミサイルのうち、我が国にとってはこれらのMRBMが主脅威なのです(スカッドERも西日本を攻撃可能)。

日本上空を”問題なく”通過するICBMやIRBMといった中~大陸間弾道ミサイルを迎撃しないのは、こうした理由からです。

ノドンvs日本のBMD

今回のIRBM発射とは話がそれますが、いい機会なのでまとめておこうと思います。

我が国の脅威となる「ノドン」を北朝鮮は何発持っているのでしょうか? 各種報告書によると、ミサイル保有数は200発。かなりな脅威ですね。発射は移動式発射車両(TEL)を用います。衛星などに見つかりづらいような場所へ移動し、発射するわけです。

一方、「ノドン」を発射する肝心のTELは50基ほどと見積もられています。この評価は2013年のものですが、弾道ミサイルの専門家であるモントレー国際大学院/Arms Control Wonkのジェフリー・ルイス氏に直接質問したところ、2017年時点においてもやはり50基より少ない数字であるとの見立てでした。



つまり、一斉発射できる「ノドン」は最大でも50発程度でしょう。もっとも、実際に50発すべてを無事に発射するというのはなかなか難しいものだ、ということは北朝鮮自身がよく分かっているはずです。そして、ここに固体燃料式の「北極星2号」が加わります。

これに対して我が国の迎撃ミサイル態勢はどのようなものでしょうか?

我が国のミサイル防衛の主役は、イージス艦とSM-3によるイージスBMDです。海上自衛隊がそろえるSM-3は32発(こんごう型護衛艦4隻に8発ずつ)。さらに、あたご型イージス護衛艦2隻もSM-3を搭載するべく改修が決定されています。あたご型のBMD改修が終了すると、48発となります。陸上配備型イージス・システムである「イージス・アショア」の導入も決まったので、迎撃ミサイルの総数はさらに増勢予定です。

SM-3が万一撃ちもらした場合は、PAC-3が対応します。航空自衛隊の全24高射隊(各高射隊に発射機5基)で384発のPAC-3が発射可能です(高射教導群および術科学校の配備分を除く。予備弾数は不明)。もちろん、PAC-3は防護範囲が限定的ですので、ランチャーが国内の最適地に展開している必要があります。在日米軍との数を合わせた数字だけを見れば以下の通りとなります。

  • SM-3:日本×32(48+に増加予定)+米海軍×45(63発に増加予定)
  • PAC-3:日本×384+米陸軍×約400


繰り返しになりますが、迎撃に際してこれらのBMD部隊がどの程度迎撃に適切な場所に展開できているかがキモです。急に撃たれたら対応できないとする意見もありますが、北朝鮮が日米韓にまったく発射の兆候を悟られずに数十発の弾道ミサイル発射という大規模な奇襲に成功する可能性がそれほど高いのか?とも言えます。

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