- 2017年09月15日 11:32
日野皓正事件で思った日本の「ヌルマ湯主義でよか」ー北芝健の視点

先頃メディアをにぎわしたのが、ジャズの大御所・日野皓正。
コンサート会場のステージで、独奏をやめなかった男子中学生のドラムスティックを取り上げて投げ捨て、それでも手で叩きつづけたことから往復ビンタ。74になってこの怒りの出し方は凄い。
ビンタが暴力だの、叱り方も多々あったろうにという「お約束の意見」もテレビじゃ著名司会者やコメンテーター達が仕事失いたくないから金太郎アメ的に口走った。
だけど日野皓正の「他の熱心な演奏者に迷惑をかけた上にエゴをやめなかったバカ野郎!」とシツケをした行為は半世紀前のわが国だったら賞を貰うくらい受け入れられていた。この半世紀でモンスターペアレンツが力をつけ、教師は強い言葉さえも発するのを禁じられてしまった歴史がある。
「ジェントルな国になって良かった」とか「暴力はやっぱりダメだ」とかメディアが作り上げた型枠の中の文化論はどこかイビツだと言う人々もいた。
いずれにしても、殴りまくったコーチのせいで自殺した高校生がいたり、教師がイジメを止められなくて死に追いやられた無念の命の扱い方と日野皓正の事件は異なる。このへんを間違うとメディアファッションとなる。
わが国の現状はこの通り。 ヨーロッパ、アメリカは知らず。というかこの間までアフリカから人間を強制連行して奴隷にしていた国々が先進国と呼ばれようとも、コピーしたみたいに手本にするのは如何なものか。
有罪率95%以上という判検交流(裁判官と検察官が意を通じて有罪パーセンテージをマックスに調整すること)の国で、おまけに報道ファシズムの国という現状なんだから日本は良い国でしかないのだ。そういう世の中で生きる文明の高みにある我々の生活。これで良いんならこのまま行きましょうや。
朝鮮半島の諜報技術が凄いと言っても欧米にはかなわない

ともあれ、1991年の冷戦が終って核の脅威がお行儀良くなったと思ったら北朝鮮が北東アジアの鬼ッ子になってコワイ状況連発。
水爆を持ったのは間違いないのだが、そうなりゃ国土が小さいと言えどもイスラエル並み。ロシアのプーチンも中国の習近平も放っておくはずがない。かくして「仲良くしようよ」「チゲ鍋でもつつこうよ」になる。
アメリカは、どの都市に水爆が落ちても「自国民の命を守れなかった」と責められて政権が終るからトランプ大統領ってのも大変だ。かくして金王朝の存続を確約してこのオドかしっこは固まって行く。
三代目キム王朝のトップが痛風になって足ひきずっただとか、初代トップのイルソンおじいちゃんの刈上げを真似して髪型意識しただとかはニュース映像でも見られるが、この間の核実験が水素爆弾だったと言うのが判別できたのはアメリカ、ヨーロッパのスパイ技術。朝鮮半島の諜報技術が凄いと言っても全世界を手中に納めた欧米にはかなわない。
日本の諜報組織だった陸軍中野学校
それを除くと優劣がつけられないのがイスラエルのモサド。
個人レベルではロシアの旧KGB(現FSB、SVR)、イギリスのMI6、フランスのDGSE、ドイツのBND等より凄いのだ。しかし、このモサドが敬しあこがれるスパイ技術を持った集団があった。
えっ?そんなのないだろうって?ところがそれがわが国・日本にあったんすよ。
1945年の終戦と共に閉じられたが、かの「陸軍中野学校」がそれ。
個人レベルと言ったが、国家予算さえ大きければCIAのように十万人規模の諜報組織は出来る。しかし「陸軍中野学校」が送り出したのは2200人。これがモサドをもしのいだスパイ集団だった。
北芝健(きたしば・けん)
元警視庁刑事、作家。
東京・葛飾区出身。祖父・両親が医師の家庭に生まれるが、本人は家事を継がずに文科系の早稲田大学へ進学。在学中1年間、英国居住ののち、中近東・インド・東南アジア・米国…へのバックパッカーとなる。卒業後、貿易会社を経て警視庁入庁。刑事警察。公安外事警察の私服捜査員として事件捜査に従事。現在は大学院講師の傍ら、単行本著作、漫画原作、各メディアでコメンテーターをしつつ、沖縄岡柔流空手を教える。
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