- 2017年09月14日 08:25
「給料前借り特区」は貧困ビジネスを生み出さないか
1/2福岡市の高島市長のもとですすめられている「給料前借り特区」。まだ提案の段階らしいが。
毎日新聞の記事にこうある。
労働者には日ごとに働いた分の賃金額がスマホに通知され、店頭でスマホ決済することでその金額内で買い物などができ、店の口座には雇用者側が代金分を支払う仕組みだ。
https://mainichi.jp/articles/20170905/ddp/041/010/011000c
これがなぜ「岩盤規制」を突き破る「特区」で提案されるのか。
労基法24条にぶち当たる
毎日の記事は、以下のように記している(強調は引用者)。
賃金は、労働基準法で「通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならない」と規定しているが、特区でこの規制を撤廃する。
https://mainichi.jp/articles/20170905/ddp/041/010/011000c
これは、労働基準法第24条1項である。
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html
ここには、「賃金は通貨で払う」(通貨払いの原則)、「直接労働者に払う」(直接払いの原則)、「全額を払う」(全額払いの原則)の3つが表現されている。
通貨で払うと定めているのは、現物支給を禁じるため。使用者がお金が払えないので野菜で支給したり、「20万円の浄水器売ってきたら、そのぶんを給料にしてやる」とか言い出したりしないためである。
直接払いを定めているのは、子どもを働かせて親が受け取ったり、「仲介人」が中抜きをしたりしないため、つまり中間搾取をさせないためである。
全額払わせるのは、前借金と相殺したり、店の皿を割ったら罰金で引いとくぞみたいな「賠償予定」をして給料から天引きしてしまうことを防ぐためである。
この3つの原則には、労働者にどういう借金があろうが、罰金があろうが、商品が売れてなかろうが、「親が代わりにもらいます」とか言おうが、とにかく一度はお金で全額本人に渡さなきゃいけないという姿である。
そうしないと、なんだかんだと理由をつけて、使用者はお金をさっぴいて渡し、労働者を安く奴隷のようにしばりつけてこき使うシステムを生み出してしまうからだ。
さらに24条2項にはこうある。
賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html
これは、「毎月払いの原則」と「一定期日払いの原則」といわれるもので、厚労省によれば、以下のような目的をもっている。
毎月払の原則は、賃金支払期の間隔が開き過ぎることによる労働者の生活上の不安を除くことを目的としており、一定期日払の原則は、支払日が不安定で間隔が一定しないことによる労働者の計画的生活の困難を防ぐことを目的としています。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei05.html
以上の5点、
- 通貨払いの原則
- 直接払いの原則
- 全額払いの原則
- 毎月払いの原則
- 一定期日払いの原則
これを「賃金支払いの5原則」という。
毎日新聞の記事では、福岡市の特区は、このうち最初の3点(つまり労基法24条1項)の規制を「突破」するもののように読める。*1
ところが、その後、学者のコメントを読むと、
東京大の水町勇一郎教授(労働法)は「労働基準法は賃金を月1回以上、一定の期日に支払わなければならないと定めているが、これは労働者の経済生活を安定させるため。これに例外を作ることで、むやみに使ってしまい、生活の安定を失う人が出てこないか不安が残る」と指摘する。
https://mainichi.jp/articles/20170905/ddp/041/010/011000c
とあり、これは「一定期日払いの原則」(つまり労基法24条2項)の突破のように読める。



