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最後の世代から、最初の世代へ

なんでも、うちの実家近所の寺の住職(80代)が入院し、あたりの老人たちの間では「死んだら誰が読経してくれるんだ」という話題でもちきりだという。なんだか冗談みたいな話だが、これは地方の本質を表していると思う。

ちなみに跡取りはいないから、寺自体が今後どうなるのかわからない。もともと世襲や妻帯を認めている宗派は少なかったが、なし崩し的に多くの寺がそうなっていて、一般的な自営業同様、多くが後継者問題を抱えている(拙著「アウトサイダーの時代」でも少し触れている)。地域共同体と一体化していた檀家制度は、共同体と時を同じくして崩壊するだろう。

戦後、医療の進歩で乳幼児死亡率が低下し、若い人口が急激に増えた。そして、養うべき高齢者も子供も少ない人口ボーナス期がはじまり、日本は高度成長期を迎えた。その中で第一次産業から二次産業への移動が起こり、若い労働力は地方から都市へ向かった。この過程で、地域コミュニティだけでなく、家族制度自体も希薄化していった。先代や先々代の実家が同じというだけでは、普段は別の場所で暮らす他人同士、なかなか親戚づきあいなんてできない。たまに法事で顔を合わせる親族の付き合いも、たぶん、僕の代で終わるだろう。

つまり、僕自身がかつて育成されて送りだされたコミュニティは、地域も一族も宗教も全部ひっくるめて もう終わりが見えているわけだ。ちなみに働き手のうち70歳以上が4割、60歳以上で7割という農業は遠からず老衰することが確実なので、産業面でも地方は崩壊するはずだ。

出生率が2.0を割った70年代が、ターニングポイントだったのだろう。地方出身の30代には、同じような感覚を背中に感じている人が少なくないのではないか。ひょっとすると、若年層のもやもやとした閉塞感の中には、そういった寂寥感のようなものが混じっているのかもしれない。前に向かって走り続けてるんだけど、「なんだか後ろの方が寂しいぞ」みたいな。

自称“保守”の一部には、郵政や土建屋と結託して“地方再生”とか言っているのもいるが、日本にはもう金が無いので無理だ。可能性があるとすれば(橋下新党の言う)地方分権による活性化だがそれも中核都市への集中を促すだけでインフラが維持できなくなった地域を中心に急激に過疎が進むと思われる。無いモノは無いのでしょうがない。

とはいえ、個人的には新しい時代にメリットも多々感じている。都市へ流入した人間の間にコミュニティが希薄だったのは、良くも悪くも日本企業というタコ部屋が機能していたからで、それが崩壊して(若手を中心に)流動化が進んでいる以上、多様なコミュニティが社会の中で花開く気がする。

それは共同住宅やルームシェアのような住居ベースかもしれないし、あるいはネットを介した文化的、趣味的なものかもしれない(個人的には、宗教が来るような気がしている)。家族というものについては、もともと北欧やアングロサクソン系では成人と同時にほぼ完全に独立して老後のケアすら人任せなわけで、そんなに心配する必要はないだろう。というわけで、古い共同体を懐かしみつつも、我々は新たな共同体を作り、その一員となるべきだ。

「ALWAYS 三丁目の夕日」は団塊世代にかつての社会を見せることで成功した映画だが、30年後の「ALWAYS〜」では「盆暮れ正月は田舎に帰省して実家で酒飲んで〜」なんてノスタルジーが団塊ジュニア向けに描かれているかもしれない。もちろん、若者はそんなオッサン臭い映画なんぞ観ずに、彼ら自身のリアルに向き合ってくれていることだろう。

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