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内閣総理大臣 増補版 ――その力量と資質の見極め方

リンク先を見る内閣総理大臣 増補版 ――その力量と資質の見極め方 (角川oneテーマ21)
舛添 要一
角川書店(角川グループパブリッシング)

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舛添氏が02年出版の自著に加筆修正した新刊。前半部ではマキャヴェリからアリストテレスまでを引用し、自身の政治哲学を述べていく。「政治の本質とは可能性の技術であり、政治家は理想よりも結果責任を重視すべき」「理想を掲げて戦争するようなリーダーは迷惑なだけで、常にあらゆる選択肢を冷静に検討すべき職業」など、内容はいたってオーソドックスなリアリストだ。

そしてその立場から、選択を回避して先送りをもっぱらとする鳩山政権、そして現代日本政治の悪しき庶民主義を、どちらも政治家の義務を果たしていないとして批判する。

これは同感だ。麻生さんのバー通いを叩くメディアはともかく、便乗して(普段行きもしない)居酒屋通いをしてみせる政治家を見ていると、そんなことしてる場合かよと思う。自転車で走り回ってドンキでスーツ買って見せる議員なんて、頭おかしいんじゃないかとさえ思う。

ではリーダーに必要な資質とは何か。なにより有権者に対してビジョンを提示する能力であり、ビジョンを生み出すには、歴史、哲学を学ぶことが必須であるとする。「現代の政治水準はヴィクトリア朝以下だ」という意見の裏には、オルテガ的な大衆批判のニュアンスも感じる。

さすが本職の政治学者だけのことはあって、安倍さんや麻生さんの本よりははるかに質が高い。ただ、後半になると急失速する。肝心要の本人のビジョンがとっても曖昧なのだ。

たとえば「規制緩和と自由競争を柱とする小さな政府主義者だ」と前半で言っておきながら、こんなことをさらりと言ってのける。

日本企業の労働生産性の高さと品質管理の優秀性を支えたのは、日本人の高い勤労意欲であるが、その勤労意欲を手厚くバックアップしていたのが、終身雇用制と年功序列による雇用の安定と収入の保証であった。これらの日本モデルを、もはやグローバルスタンダードに合わないという理由であっさり破棄して一顧だにしないのではなくむしろ日本モデルこそが日本社会の活力の源泉であることを強く打ち出していくというヴィジョンがあっていい。

元厚労相が日本のホワイトカラーの労働生産性の実情を知らないというのは救いようがないと思う。申し訳ないけど、もうこの時点で前半の説得力は僕の中では音を立てて崩れてしまう。

そして経済政策は、インフレターゲティングを提唱する。いや、それ自体は別にいいんですけど、「首相がインフレ目標を公約にする」だけで経済がよみがえるというのは、あまりに楽観的過ぎるだろう。

他にも、「郵便のユニヴァーサルサービスは維持すべき」だとか「日本経済は外資の侵攻にさらされている」とか、そっち向けの香ばしい発言も適度にまぶしてある。要するに、巧みに全方位に気を使う典型的な名刺本というわけだ。

とりあえず改革否定はありえない。でも下野した自民党の一員としては痛みを伴う改革を前面には出しづらいし、なにより漂流する保守派も取り込みたい。とりあえず日銀は分かりやすいスケープゴートだ。という苦衷の綱渡りがなんとなく透けて見える。

というわけで、政治家・舛添先生が何をどうしたいのかというビジョンはさっぱり見えてこないのだけど、とりあえず政権中枢への並々ならぬ意欲をお持ちだということだけはよくわかる一冊。大臣時代のこぼれ話や鳩山政権採点等、良いところもたくさんあるので、とりあえず読んでみて損は無い。

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