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日本における内戦

日本の自殺者が年3万人を超えているというのは有名な話だ。藤岡弘は「内戦状態だ」というが、あながち誇張でもない気がする。

その原因についてだが、よくありがちな「日本が厳しい競争社会だから」というのはナンセンスだろう。年功序列のおかげで、大手のサラリーマンは外資に比べれば競争なんてないようなもんだし、規制のおかげで正社員と非正規雇用労働者は競争しなくてよい。そもそも、郵貯を実質再国営化して官僚OBをトップに送りこむような国だ。ほとんど計画経済である。むしろ競争が無いことこそ、内戦の原因だろう。

新卒至上主義や転職市場における年齢上限からも明らかなように、日本社会というのは「失敗を前提としたシステム」ではなく、「失敗してはいけないシステム」をベースにしている。こういう社会では落ちた人へのサポートはとても弱い。落伍者を支えるシステムなんて作ってしまったら、失敗の存在を公式に認めることになるからだ。

バカの一つ覚えみたいに「とにかく正社員こそが正しいんです!」と言っている人たちは、彼ら自身が議論を迷走させ、格差を固定しているという現実に気づいていない。「非正規雇用自体の規制」をマニフェストに掲げる社民党なんて、「失業を禁じる」という法律を作ろうとしているようなものだ。ノンリコースローンが普及していないのも、根っこにあるのは同じ思想な気がする。(直接金融が発達していないというのが直接的な理由だろうが)

たとえて言うなら、広々とした道路なんだけど「みんなまっすぐ前見て歩く」という前提で作られているために、手すりも何にもない橋みたいなもんである。一見すると日本社会というのは人に優しく見えるかもしれないが、実はめちゃくちゃ自己責任な社会でもある。

ついでにいうと、こういう社会ではいろいろなものが弱くなる。橋の上で出来ることといえば、失敗を恐れてしがみつくことだけ。運悪くギャーっと落ちていった人を横目に、せいぜい「どうか自分は落ちませんように」と祈る以外にない。

一方、幅は狭くても、すぐ下に網が張ってあるような社会なら、そんな心配せずにどんどん前へ進めばいい。知人に、地方の中小企業から東京の超大手企業に転職した叩き上げがいるのだけど、入社半年後に感想を聞いてみたら「とろい奴ばっかりでびっくりした」そうだ。そりゃそうだろう。彼は細くて手すりも網もない世界からするするとやってきたわけだから。

もちろん、世の中には手すりどころか、足場すらなくても空中浮揚してしまうホリエモンみたいな怪物もいるのだけど、やっぱり「失敗の存在」を認めないと、社会全体の活力は萎縮してしまうと思う。藤岡弘が言うように、日本が戦争やっているというのは事実だろう。でもその相手は、外国でも富裕層でもなくて、我々の社会そのものだ。それに気づかない限り、戦争は終わらない。

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