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公教育から生み出せる人材は、社会のニーズとずれている

今週、アゴラで中学受験の是非が話題になっていた。中学受験にかぎらず、日本の教育制度にいろいろと課題が多いのは事実だ。

東大出てみて個人的に思うのは、受験勉強ってほとんどまったく役に立ってないなということ。しかも4年間遊んでるから、入学時を頂点としてそこから教養もインテリジェンスも下がり続ける。大学まで一生懸命詰め込むだけ詰め込んで、4年間ぼぅーっとするシステムは実に無駄だ。

最近、とみにそう思うようになったのは、欧米の大学院で学んだ人(国籍問わず)と会う機会が増えたからというのが大きい。たぶん18歳時点の知識量では、普通の東大や一橋の学生は彼らに負けてない、というかむしろ勝っていると思うのだが、30歳過ぎた今だと結構な差で負けている気がする。※ 大学生活+20代の間に、決定的にまくられてしまっているわけだ。

まあ商社なんかでは頑張っている人も多いのだけど、大手のインフラなんかに入って10年経つと、もう人材の市場価値がゼロというか、“企業”という保育器の中でしか生きていけない生き物になっている人が多い。もともと年功序列制度というのは、そうやって人を企業カラーに染め上げて縛りつける制度なので、この結果自体は想定通りと言えるけど、本人の人生にとっても社会にとっても、これはいまや明らかな損失だろう。

というわけで、人事制度はもちろんのこと、教育制度についても以下の点は無視できない。
・詰め込み教育は効果ゼロではないが、それだけでは実社会であまり役に立たない。
・大学4年間の高等教育がとても重要。そこを無為に過ごす日本の教育システムは非効率。

詰め込み自体は何らかの形で残るだろうけど、大学教育自体はなんとかすべきだ。それには労働市場の完全流動化を実現して、「初任給が人によって全然違う」「3年目で事業責任者になれる」ような土壌を作るしかない。大学で学ぶことが要求される社会の実現だ。

というような話はいつも言っていることなので、もう知ってるよという人も多いだろう。今回は私立の中高一貫校について、ちょっと思うところをまとめてみたい。

一昔前まで、人事の間では「付属校上がり」を一段下に見る傾向のある人が多かった。同じ慶応の法学部なら、付属校より一般入試経験者の方が、受験というフィルターを経ている分、優秀に違いないというシグナル効果だ。企業自身、かつては詰め込み型を重視していたということだ。実際、幼稚舎のOBに聞いても「中学、高校と後から入ってくる人の方が成績は良い」のは事実らしいから、この先入観はあながち間違いでもない。

でも、最近こういう考えは、少なくとも企業側からはとんと聞かなくなった。いつも言っているように求める人材像が変わってきたからだ。「一生懸命詰め込んできました」というタイプは、もちろん悪くはないが別に好かれもしない。

僕もそうだったからわかるんだけど、公立の一番ダメなところは、ごくごく平均的なモデルにそってカリキュラムが組まれているため、頑張る子でも、というか頑張れば頑張るほど枠にはまった“普通の子”になってしまうということだ。

で、その平均的モデルというのは大昔に作られた昭和モデルなせいで、実社会でえらく苦労する羽目になる。中学、高校は地方公立で優等生、大学もそこそこ良い国立大、でも今では平均年齢40歳企業の“永遠の若手”状態という人は少なくない。むしろ僕の知人はそんなのばっかりだ。これもまた、若い世代の閉塞感の一つだと思う。

個人的には、私学の中高一貫校出身者の方が、話していて余裕があるというか、組織依存でないアウトサイダー指数が高い気がする。

もちろん、リスクはある。たとえば同じくらいの偏差値の私大学生を100人面接したとすると、頭一つ抜けている私立中高出身者がいる一方で、一番ダメなのも同じ私立校出身者だったりする。それでも、たぶんそういう人は公立校に行っても勉強はしていないはずなので、やはり今の時代、私立を選択するのは合理的な気がする。

余談だが、“勉強時間”という意味なら、大学までガンガン詰め込みして、在学中は“優”かせぐために一生懸命授業に出て、卒業後は官費で欧米の大学院に留学している財務や経産官僚が最強だろう。実際めちゃくちゃ優秀な人は多い。であるので、労働市場改革や教育改革を待たなくても、大学四年生対象に“達成度試験”みたいなものを作って就職活動に使わせれば、みんな勉強するだろうから手っ取り早く底上げにはなると思われる。

もっとも、霞が関を見ても明らかなように、優秀な若手を採ったところで、それを活かす人事制度がないと組織全体のパフォーマンスは上がらないわけで、結局は雇用流動化が必要である点に変わりはない。

※日本人で40代以上だと、章男ちゃんみたいに差を感じない人もいっぱいいるけど。

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