今週の東洋経済がなかなか濃い。
中でも渡邉正裕氏の「大企業30代のキャリアの磨き方」が出色だ。
今でも日本企業の社内制度はあまり変わってはいないので、会社任せだと旧式の“終身雇用型サラリーマン”になってしまうリスクが高い。
これは長時間残業、有給返上、滅私奉公といった特技はあるが、21世紀の現在はいまいち市場価値が低い。そうなると会社にしがみつき、ずっと足元だけを見て生きる人生が20年以上続くはめになる。
しかも、成果主義で下がるのは若手の賃金であり、昇給ピークは40代前半に低下するから、従来の中産階級のような生活水準はとても期待できない。
そうならないための指針としてよく出来ていると思う。興味を持った人には本書画像を見るをお奨めしたい。
ついでに言っておくと、00年前後、苦労して正社員内定を手にしたにも関わらず、第一氷河期世代の離職率が上がったのは、こういった事実に若者自身が気付いたからだ。リクルートの人間なんかには分からないだろうが、大企業の社内にはバブル世代という飼い殺しの見本みたいな可哀相な人達がいて、あれを生で見ると結構な衝撃だ。
というわけで、本特集は30前後の正社員で、キャリアを選べるだけの能力のある人には格好のアドバイスだろう。要するに「がっついた若手ビジネスパーソン」向けの処方箋である。
ところで、そうでない人はどうすべきだろうか。
同じ号の冒頭、一橋の齊藤誠先生は
「先進国で国民全部を幸せにするような成長余地などない。
だから労働市場などを規制緩和して既得権益を崩し、
効率的な再分配をするしかない」
と説く。
“そうでない人”向けの処方箋がありえるとすれば、これしかない。
それは僕自身のテーマでもある。
ただ、奇しくも掲載されている連合・古賀会長のインタビューを読む限り、彼らがそれを受け入れる余地は今のところ無さそうだ。
というわけで、今週号には、アウトサイダーとして成功するもの、旧秩序のインサイダーとしてもがくもの、そしてそこに入れないまま底辺で苦しむグループがぎゅっと凝縮されて、なんとも濃い内容になっている。
「僕には今、坂の上の雲が見えますよ」と笑顔で語る人間と、
「生まれた時代が違うだけで、なぜこうも待遇が違うのか」と嘆く人間が同じ特集にいるわけだ。
もはや総中流なんて幻想だ、という現実を認識したいなら、20代はもちろん、上の世代も読んで損はない。
・記事をブログで読む
記事
- 2009年12月18日 10:50