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GDP から考える日本経済

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今週 8 月16 日に発表された2010 年4-6 月期のGDP 速報値は、いろんな意味で衝撃的なものでした。まず年率0.4%成長という結果は、市場予測の2%前後を大きく下回り、景気が 回復局面にあることが疑わしくなる数値でした。既に海外経済は不透明感が漂い始めており、これまでのような外需主導型の成長は期待しにくく、日本経済は当面、足踏み状態を余儀なくされそうです。

同時に今回の発表では、「ドル換算で日中の経済規模が逆転したかもしれない」ことが報じられました。国際社会における中国のプレゼンスが高まる一方で、「世界第2 位の経済大国」でなくなった日本経済には、従来とは違う認識や発想が必要になってくるでしょう。さて、われわれはこの結果をどんな風に受け止めるべきなのでしょうか。

●悩み多きはGDP の使い方



GDP は内閣府の経済社会研究所が作成し、年に4 回公表している経済指標である。数ある経済データの中でも、これほど注目を集め、頻繁に使われるものは他にないだろう。が、あらためて定義を聞かれると、うろたえてしまう人が意外と多いのではないだろうか。GDP とは、1 年間に国内で生み出された付加価値の総量を指す。「日本国内で」生み出されたものが国内総生産(GDP=Gross Domestic Product)であり、「日本国民が」生み出したものが国民総生産(GNP=Gross National Product)となる。以前はGNP が主流であったが、グローバル化が進み始めた1990 年代中盤からGDP が主流となった。ちなみに今日では、GNP はGNI(国民総所得)と呼ばれるのが普通である。

ところが GDP ほど欠点が多く、誤解の多い指標は少ないのではないかと思う。以下はありがちな誤解の数々である。

1. GDPはいくつもの経済統計を使って作成する推計値であるから、「これが正しい」という絶対的な数値ではない。0.1%くらいの差は当然、誤差の範囲内である。
――今回の報道には、「成長率は3 四半期連続のプラスを維持した」という指摘を多く見かけたが、実はマイナス成長であったとしても少しも不思議ではない。

2. ゆえに内閣府は、新しい経済データが発表されるたびに、速報値、改定値、確定値と何度も推計を変更し、そのたびにGDP は大きく変化する。プラス成長だったはずのものが、数年後にはマイナス成長に変更された、ということもめずらしくない。
――1997 年度のGDP は「戦後初のマイナス成長」として大きな話題となり、翌年の参院選で橋本政権が大敗する一因となった。今日では1993 年が「戦後初のマイナス成長」であり、97 年はゼロ成長であったことになっている。

3. GDP はよく国際比較に使われるが、この作業も非常に難しい。普通はドル換算で行うものの、為替レートが動けばGDP も大きく変化することになる。今回、日中が逆転したのもドル換算レートでの話である。
――購買力平価方式(PPP)では、2008 年時点で1 位は米国で14 兆2646 億ドル、2位は中国で7 兆9164 億ドル、3 位が日本で4 兆3543 億ドルの順となっている。

4. GDP は常に市場価格を参照して計算されるので、例えば専業主婦の家事労働などはカウントされない。ゆえに家族が外食するようになれば、GDP は増大することになる。
――ここから転じて、「GDP とは違う、国民の幸福をはかる尺度が必要だ」といった議論もよく聞くところである。が、ここまで来ると経済の枠からはみ出して、哲学や倫理学の領域に踏み込んでしまう。

これらの問題点があるにもかかわらず、GDP がよく使われるのは、国の経済力を表すフローの指標として、まことに分かりやすいからだろう。

誤解を恐れずに言ってしまえば、国にとってのGDP とは、個人にとっての年収のようなものである。年収はその人の値打ちを表す、きわめて分かりやすい指標である。と同時に、究極の個人情報でもある。基本的には本人の自己申告がベースなので、統計が疑わしい国もある。が、いろんな方法で所得は補足できるので、大きく誤魔化すことは難しい。そしてGDP の序列は、国家としての序列にもなり得るのである。

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