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FBに頼る海外のニュースメディア、FBに頼らない日本のニュースメディア

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日本ではユーザー側からも、FBをニュースメディアの主要ゲートウェイと見ていない

 
このように世界のほとんどの国の大手ニュースメディアが、FBをオーディエンスと接触する主要な場として活用している。実際に多くの国のニュース消費者も、FBをゲートウエイとして選んでニュース記事と接している。ロイター(Reuters Institute)が今年の1月から2月にかけて、36か国のニュースユーザー7万人を対象に実施した調査結果によると、最近1週間にFBを介してニュース記事に接した人の割合は、図4のようになっている。
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(ソース:Reuters Institute)
図4 日常的にFBを介してニュースメディアと接しているニュースユーザーの割合。過去1週間にFBを介してニュース記事に接した人の割合を、国別に示している。


 南米や東南アジアのニュースユーザーのほうが、米国や西欧のユーザーよりも、FBに頼っている。FB以外のメディア接触チャンネルがあまり普及していないためだろう。逆に米国などの先進国では、スナップチャットやインスタグラム、それにインスタントメッセージ系などと、新しいメディア接触のチャンネルが多様化しており、そのためFBの利用がやや頭打ち傾向にある。

 それでも例えば米国では、ニュースユーザーの48%が最近1週間にFB上でニュース記事を見つけている。米国のニュースメディア(ニュースパブリッシャー)がFBユーザーが好む記事をタイミングよくFBページに投稿しているから、今でも48%のユーザーが日常的にニュース記事と出会う場としてFBを利用しているのだろう。その結果として、前回のブログ記事「メディア接触の主導権争い、「フェイスブック」の独走に「グーグル検索」が奪回迫る」でも触れたように、ニュース系を含めたメディアサイトに流入する外部トラフィックの40%前後が、フェイスブックからとなっている。

 一方日本のニュースユーザーはわずか9%しか、FBを介してニュースメディアの記事に接していない。昨年(2016年1月〜2月)の調査では16%であったので、FB離れが進んでいるようだ。さらに総務省の調査報告書でも、利用層の厚い10代と20代で、FBユーザー数そのものが減り始めている。今後とも、FBでニュースメディアに接する人口を増やしていくのは厳しのかもしれない。

 またインスタントメッセージをニュースメディアへのゲートウエイとして利用する人が世界各国で増えている。日本ではLineが伸び悩むFBを大きく引き離して普及しており、ニュースメディアのゲートウエイとしても期待される。でもLineを介してニュース記事に接している割合は、今年も昨年と同じ13%に留まっており、海外各国のFBのような強力なゲートウエイに至っていない(ロイターの調査より)。日本では、ニュースメディアのゲートウエイとしては、ソーシャル系ではなくてニュースアグリゲーターやまとめサイトが今後も主役を演じ続けることになるのか。

FB主導下のニュースメディア展開、グローバルに同時進行へ

 海外の主要ニュースパブリッシャーがFBを重要なプラットフォームとして活用し、それに応じてニュースオーディエンスもFBを介してニュースパブリッシャーの記事に接するようになってきた。ここで見逃せないことは、この数年近くの間、モバイル化とソーシャル化の流れに沿ってフェイスブック(FB)社が仕掛けたメディアシナリオに、海外の多くのニュースパブリッシャーが乗ってしまっていることである。
 
 2010年ころまでFBは、パブリッシャー(メディア)のコンテンツをあまり重視していなかった。ニュースフィードに流れるコンテンツは個人やブランド(企業)からの投稿が中心であった。FBがメディアコンテンツの露出を増やし始めたのは2011年/12年あたりからである。その動きを先取りして積極的にFBを活用したHuffPostとBuzzFeedの新興パブリッシャーが、FBを飛躍台に急成長する。その成功を見習って、2012/13年に多くの新興パブリッシャーが雪崩を打ってFBへの投稿に殺到し、いわゆるバイラルメディア・フィーバーが起こる。こうしてパブリッシャーのプラットフォーマーとしてもFBが地位を確保していった。

 だが、FBをプラットフォームとして積極的に活用するのは主に、バイラル系の新興メディアとなる。ニュースフィードには軟派系のコンテンツが氾濫するようになったが、質の高いコンテンツがあまり流れなかった。

 そこでFBはニュースフィードに良質のメディアコンテンツを優先して流すようにアルゴリズムを変え、ブランド力のある有力メディアにFBへの投稿を強く働きかけた。2013年ころから、NYタイムズ、ワシントンポスト、ガーディアンなどの有力メディアがこぞって、良質の記事をFBに数多く投稿するようになった。今では図1で示すように、伝統の高級ニュースメディアも多くのフォロワーを擁するようになっている。

 さらに本格的なモバイル動画時代を迎えて、2015年ころからパブリッシャーに動画コンテンツの投稿を促すようになった。主要な動画パブリッシャーに、動画制作開発費を支援して必死に後押しした。確かにニュースフィードにはパブリッシャーが制作した料理や動物の短尺動画が増えてきたし、さらに2016年からは海外のニュースメディアのライブ動画を見る機会も増えてきた。最近では動画の本命のスポーツやドラマなどの長尺動画も囲い込み始めている。

 このようなFBの相次ぐ仕掛けは、グローバルに進められてきている。分散型メディアを推し進めるインスタント記事も世界の主要パブリッシャーにほぼ同時に働きかけ、2015年に「フェイスブックの分散型メディア「インスタント・アーティクルズ」、一気にアジアや南米のグローバル展開に突入」した。

 FBのシナリオに乗っかってるうちに、パブリッシャーの編集活動や広告活動がFB主導下で展開するようになってきている。複数のサードパーティ・プラットフォームに分散投稿する「分散型メディア」が定着しているが、海外ではパブリッシャーの多くが特定のプラットフォームのFBに過度に依存していると言えそう。そこでパリッシャーとしては、編集面や広告面での独立性を維持しようと、FB依存を弱めたいところ。しかし、ロイターが今年実施した調査によると、24か国のデジタルメディア・リーダーの78%が、今年最も注力したい重要なソーシャルプラットフォームとしてFBをあげていた(図5)。FB依存は続きそう。

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(ソース:Reuters Institute)
図5 今年最も注力すべき重要なプラットフォームはどこか? 24か国のデジタルメディア・リーダー143人のアンケート結果より。調査はロイターが実施。


  日本のパブリッシャーは幸いというか、海外メディアのようにFBに依存していない。ロイターの調査(調査対象国36カ国)によると、日本人はニュースメディアのゲートウェイとしてソーシャルサイトを最も利用していない国民であると同時に(図4)、ゲートウエイとしてニュースアグリゲーターを最も利用している国民でもある。日本人にとって、ニュースサイトとして頭に浮かぶのは、ニュースパブリッシャー名ではなくて、ヤフーニュース、LINEニュース、スマートニュース、グノシー、それに特定まとめサイトといったニュースアグリゲーター名ではなかろうか。

◇参考
Reuters Institute Digital News Report 2017(Reuters Institute)
勢い増す「LINE」と「Instagram」、頭打ちの「Facebook」と「ニコニコ動画」(メディア・パブ)
平成28年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(総務省)
日本人のニュースメディア接触、先進国の中で際立つ特異性、ロイター調査が浮き彫りに(メディア・パブ)
Facebook visitor reach in selected countries as of 1st quarter 2015(Statista)
Journalism, Media and Technology Predictions 2017(Reuters Institute)

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