久しぶりにABC協会による雑誌の調査部数を見た。本年の上半期(1月~6月)のものである。
紙媒体にとっては厳しい時代のなか、今年の前半は東日本大震災と東京電力福島第一原発の破局事故があったわけだが、それでも健闘して部数を伸ばしている雑誌もある。これは本当に大したものだと思う。
一方でもちろん部数を落としている雑誌もある。
そんななかで私の目を引いたのは、いわゆる赤文字系雑誌の部数減だ。ちなみに赤文字系というのは、JJ、Cancam、ViVi、Rayなど20歳前後の女性をターゲットとしたファッション誌を指す。
私が勤務していた光文社は、JJをベースとして、これを卒業した読者にCLASSY.(30前後のOL層)、さらにVERY(30代の子どもがいる主婦層)、STORY(40代の主婦層)、HERS(50代の主婦層)と各年代別に雑誌を用意している。つまり、若い層にブランドを叩き込んで消費を煽り、それをどんと上に引っ張っていく作戦である。
これは自動車で言えば「いつかはクラウン」をキャッチフレーズにカローラ、コロナ、マーク?、クラウンというラインナップを作り、カローラで得たユーザーをそのまま囲い込んだ、かつてのトヨタのようなマーケティングだ。
しかし、JJは9年前、絶好調でダントツトップを独走している時に編集長を交代して以来、転落の道を辿る。50万部近くあった実売部数はあれよあれよという間に落ち、Cancam、ViViに追い抜かれ、ついにはるか後方にいたRayにも抜かれてしまう(というかRayはマイペースで走っていただけだが、 JJがどんどん落ちてきて、あっという間にRayの後ろへ行ってしまったのであった。このJJについては、それだけで本が一冊書けてしまうような話なので、いずれまとめることとしたい)。
このJJと入れ替わってトップに立ったのがCancamだ。蛯原友里、押切もえ、山田優などの人気モデルを擁して、大ズッコケしたJJを抜き去り、アッという間にトップに立つと快進撃を開始、絶頂時には70万部以上の発行部数がほぼ完売ということもあったほどである。
もちろん、広告の状況も多少のタイムラグはあるものの、部数と軌を一にする。JJからはどんどんクライアントが去り、Cancam、ViViへと流れていった。
しかし、このCancamの独走も長くは続かず、やがて部数が落ち始め(Cancamの派生雑誌としてAnecanを出したということもあるが)、やがて ViViがトップになる時代が来る。といってもViViはCancamのように爆発的に部数を伸ばしたわけではなく、安定した部数を維持していたら、JJ やCancamが勝手に浮き沈みをしていっただけなのだが、とにもかくにもViViがトップに立った(Sweetは外して書いてます)。
―― と、これが昨年、私が会社を辞めるあたりまでの情勢だった。ちなみに、昨年の上半期(1-6月)の実売はViViが32万6,000、 Cancamが21万2,000(この落ち方も凄い)、Rayが12万2,000、そしてJJが11万1,000である(ただしJJのこの数字は特殊事情(※注)によるもので、実際の平均的な実売はもっと低かった)。
そして、昨年の下半期(7-12月)はViViが30万2,000、Cancamが19万3,000、Rayが10万7,000、JJが8万6,000となっている。
で、今年の上半期は、、、
ViVi 25万1,000(前期比83%)
Cancam 14万8,000(前期比76%)
Ray 11万4,000(前期比106%)
JJ 7万6,000(前期比88%)
かろうじてRayが前期(2010年下半期)を上回っているが、そのRayにしても、昨年の上半期の部数は下回っている。そして、ViVi、 Cancamの落ち方が激しく、Rayからすると、しばらく前までその姿すら見えなかったCancamが完全に視界の中に入っている。
この数字の推移をどう解釈すればいいのだろうか。
記事
- 2011年11月22日 00:14