- 2017年09月06日 10:22
ロヒンギャ問題でミャンマー政府をかばう中国:日本にとっての宿題とは
3/3念のために言えば、ロヒンギャが「ただの被害者」ではなく、ミャンマー軍への攻撃をしている勢力があることも確かです。また、バングラデシュなどの難民キャンプでは、アル・カイダや「イスラーム国(IS)」が戦闘員をリクルートしている懸念もあります。
さらに、日本にとってもミャンマーは「東南アジア最後のフロンティア」として経済的な関心が高く、それが相手国政府との関係を重視させたとしても、不思議ではありません。そして、「人権重視」を叫ぶ欧米諸国に、自分たちと関係の深い国における人権侵害には口を閉ざしがちな「二重基準(ダブルスタンダード)」がある(例えばサウジアラビアなど)ことも疑いありません。
とはいえ、その一方で、ミャンマーの治安部隊や過激派仏教僧、さらに一般ビルマ人がロヒンギャを迫害していることもまた確かです。これに関連して、ミャンマー政府はラカイン州でロヒンギャの保護にあたっているNGOなどを「テロリストを支援する者」として規制し、自らに批判的なBBCなど海外メディアに検閲を行っています。
ロヒンギャの一部がテロに加担しているとはいえ、このようなミャンマー政府・軍による「国家テロ」が問題視されているなか、「民主主義と法の支配を共有している」と相手に述べることは、外交辞令であるとしても、控え目にいったとしてもバランスを欠いたものと言わざるを得ないでしょう。
日本にとっての宿題
多くの日本人は、日本が西側先進国の一国であることを疑いません。しかし、少なくとも人権や民主主義といった側面において、日本と欧米諸国の間には大きなギャップがあります。
先述のように、日本政府は「主権尊重」、「内政不干渉」を大方針としてきました。それはミャンマー軍事政権との関係だけではありません。例えばアパルトヘイト(人種隔離政策)体制下の南アフリカが国連によって経済制裁の対象となったとき、最後まで同国と貿易を続けたことで、日本は1988年にアフリカ諸国から国連総会において名指しで批判される事態を招きました。現代でも、欧米諸国が経済制裁の対象としているジンバブエやスーダンの政府代表は、日本政府と支障なく公式の会見をもっています。
相手国の「国内問題」に口を出さない態度は、控え目といえるかもしれません。しかし、それは結果的に、相手国にある不公正を見過ごすものでもあります。
さらに、「内政不干渉」を盾に、相手がどんな政府でもそれとのみ関係を築くことは、その政府が転覆しないという前提に立つもので、民主主義の観点からだけでなく、危機管理という意味でも問題です。その指導者が失脚した時、それとのみ強い関係をもっていた「前歴」がプラスに作用することはありません。
のみならず、それは日本政府が求める「国際的なリーダーシップ」に繋がるのかも疑問です。「人権侵害」を叫ぶ欧米諸国や、それと国連安保理で拒否権さえ用いて対立する中国は、それぞれに欠陥がありながらも、少なくとも相手国における存在感は大きくなります。しかし、日本政府は欧米諸国と一線を画しながらも、それを批判することは皆無です。現状において、ミャンマー政府にとって日本政府は「毒」にはならないでしょうが、「薬」にもなりません。
相手国政府の立場のみをおもんばかりながら、一方で最終的には「西側先進国」としての立場を優先させて欧米諸国と歩調を合わせるというどっちつかずの方針は、かねてからの日本政府の宿題だったといえます。ロヒンギャ問題と中国の行動は、期せずしてこれを提起しているといえるでしょう。
※Yahoo!ニュースからの転載
- 六辻彰二/MUTSUJI Shoji
- 国際政治学者



