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「長寿大国ニッポン」何が"めでたい"のか

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■「年金人生」の時間はほとんどない

その前段として、先に日本老年学会と日本老年医学会が「65歳以上」とされる高齢者の定義を「75歳以上」に引き上げるべきだとする提言を発表した。

要は、寝たきりでない年寄りなら、老骨に鞭打ち働いて税金を払う側になれということだ。

シルバーパスは返上せよ、医療費負担も現役世代と同じにする。その代わり75歳になったら手厚い年金で老後をゆっくり暮らしてくれというのだが、そんなことは信じないことだ。

あと10年もしないうちに100歳以上の年寄りが増えて社会保障費が膨らみ過ぎたので、年金受け取り年齢を85歳にするといってくるに決まっている。政府や役人の頭の中はその程度なのだ。

それに健康寿命は男が約70歳、女性でも約74歳だから、年金をもらっても健康で楽しい第二の人生を送れる時間はほとんど残されていない。

もっと深刻なのは「死に場所難民」になることだ。これまでは多くの人が病院で死んでいた。だが厚労省の方針で、病院のベッド数を大幅に減らしたため、在宅介護や終末期医療も自宅で行わなくてはいけなくなる。

■「100歳まで生きるためにしてはいけないこと」

そのため老老介護はもちろんのこと、孤独死も日常茶飯のことになる。これでも長生きは幸せだといえるのだろうか。老後不安大国ニッポンである。

私も古希を超え健康寿命も超えた。

この年になって一番困るのが「短気」になったことである。それも自分に腹が立つのだ。ペットボトルの栓が開けられない。背中に膏薬が貼れない。靴下がはけない。平坦な道を歩いていて転びそうになる。いちいち腹が立つ。情けない。だが、すべて自己責任である。

新聞を開けば、血糖値や血圧を下げる、年齢とともに気になる悩みをサポートする、年齢を重ねてきたあなたへと、サプリと紙オムツの広告ばかりである。しかも年寄りの弱みに付け込んでバカ高い。みんな飲んでいたらおまんまを買うカネがなくなって餓死してしまう。

週刊誌を開けば「老前破産」だ「100歳まで生きるためにしてはいけないこと」と、老人性うつ病の身を叱咤する特集ばかり。

ちなみに『週刊現代』(9/2号)の「100歳まで生きるために」を覗いてみた。年金は繰り上げ受給するな、1800万円も損をする。節税のためにタワーマンションやアパート経営をしてはいけない。こういう保険商品は買ってはいけない。親の介護は親の財布でやれ。老後の家の住み替えやリフォームは慎重になど、懇切丁寧に書いてあるのだが、下流老人である私には何も関係がないことばかりである。

■この国は「姥捨て山」政策を取り始めた

佐藤愛子の『九十歳。何がめでたい』が売れているが、書かれているのは老いの苦しみ、孤独、愚痴ばかりである。

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「ああ、長生きするということは、全く面倒くさいことだ。耳だけじゃない。目も悪い。終始、涙が滲み出て目尻目頭のジクジクが止まらない。膝からは時々力が脱けてよろめく。脳みそも減ってきた。そのうち歯も抜けるだろう。なのに私はまだ生きている。
『まったく、しつこいねェ』
思わず呟くが、これは誰にいっているのか。自分にか? 神さまにか? わからない。
ついに観念する時が来たのか。かくなる上は、さからわず怒らず嘆かず、なりゆきに任せるしかないようで。
ものいわぬ婆ァとなりて 春暮るる」

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愛子バアさん、生きているのも面倒だから死んでしまえと思うのだ。

「葬式なんかいらん。坊主もいらん。そのへんの川にでも捨ててくれ。なに、そんなことしたら、警察問題になって、捨てた娘は罰金を取られるかもしれないって? ……もう知らん! 勝手にせい!」

この国は老人福祉を切り捨て、年寄りを棄民する「姥捨て山」政策を取り始めたと思う。

若者たちも、自分が年寄りになれば、そのことに気付くはずだ。佐藤愛子ではないが、「長寿大国ニッポン。何がめでたい」である。

(ジャーナリスト 元木 昌彦 写真=時事通信フォト)

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